チームが変わる!ワクワクするフィードバック7つのコツ アメリカの実践例あり

フィードバックは、チームメンバーのやる気・主体性を促し、社内でのコミュニケーションを円滑にし、会社・事業全体への売り上げアップにもつながる重要なスキルだ。そしてフィードバックを繰り返し行うことで、スピーチ力が向上するのだが、それはそのままリーダーシップの発揮につながっていく。

 しかし、このフィードバックの適切なやり方を知らない人が案外多い。効果的なフィードバックは学習できるし、その方法は体験事例を通して学べる大事なポイントなのだが、その適切な方法や効果について、あまり理解されていないのは悲しい現実だ。

 フィードバックとは何か、その正しい意味や、なぜ必要かについては以前にも述べたが、本項では、それらに加えて、具体的なノウハウ、効果的な方法、問題点とその対策などについてさらに詳しく解説するとともに、具体的な事例もご紹介していく。

 働き方改革にもつながり、人間関係の向上、経営陣、管理職の資質向上にも関連してくる内容なので、参考にしていただければありがたい。

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フィードバックとは

フィードバック(Feedback)とは、相手の業務・作品に対する姿勢や行動に対する自分の率直なコメントを、口頭、または文章で指摘してあげること。そのコメントは、軌道修正や動機づけ、教育的な内容、仕事に対する評価や、今後の改善点の指摘などを含む。相手にとって有益な情報を送ることにより、その人のパフォーマンスを上げることがゴールだ。

 上司・部下、スタッフ間でのコミュニケーションはもちろん、顧客とのコミュニケーションにも活用できる大事なスキルであり、ビジネスのあらゆるシーンに応用できるものだ。フィードバックは、自分にも相手にも組織にもメリットがあり、お互いの今後の方向性を決め、現在の言動・状況を改善することに非常に役に立つ。

フィードバックと反省の違い

 フィードバックは、もともと英語なので、アメリカから輸入された考え方だと思う。私はアメリカに住んで20年以上経つので、フィードバックすることが習慣化している。

 日本では、フィードバックの代わりに「反省会」を伝統的にやってきたと思う。フィードバックも反省も、常に自分の行動を振り返って、言動を正し、向上していこうという姿勢は同じだと思う。だったら、あえて「フィードバック」などというカタカナを使わなくてもいいのではないかと思うこともある。

「反省」のダークサイド

 しかし、あえて違いを言うならば、「反省」という言葉は、何か失敗をした時に使われることが多く、親が子供を叱るときに「反省しなさい!」などと使う。一方で、「フィードバック」はどんな状況でも使われ、悪いニュアンスはなく中立だ。なぜなら、フィードバックは、いいこと悪いことをセットで言うのが、いわばシステムになっている(後述)からだ。

 日本の「反省」は、伝統的には「行動の責任は自分にあり、自分で自分を律する」との考えのもとに行われてきたと思う。自分を律するには人の意見も必要なので、自ら願い出て、率直な意見を聞いた。だから周りは、願い出られるまでは特に言わなくてもよかった。「本人が希望しないなら言わないでおこう」というのが通常だった。もし何か進言したければ「余計なお世話かもしれないが」と一言断った。

 良い点については、もうすでに皆が承知していることなので、暗黙知、謙虚さを尊ぶ日本人は「あえて言わない」というのが日本の伝統だったと思う。だから特に古い世代の人たちに、人を褒めるのが上手くない人を見かける。この伝統的なやり方が正しく実践されることにより「反省」の目的は達成され、反省した人のパフォーマンスは向上した。

フィードバックは人の気分をよくさせる

 フィードバックを日常的に経験して思うのは、アメリカ人は、人を褒めるのがとてもうまいということ。率直なフィードバックを受けるととても良い気分になる。

 それは、良い点も悪い点も含まれているのだが、良い点を強調して褒めることが一つの礼儀となっていて、人を嫌な気分にしない方法を皆が心得ているからだ。だから、改善点を言われても全く気にすることなく、素直に「よし改善しよう」という気になってくる。ここが、アメリカの「フィードバック」と日本の「反省」の大きく違う点だと思う。

 日本でも最近フィードバックという言葉がビジネスシーンで使われ始めたのは喜ばしい限りだと感じている。日本では、良い点を褒めたり、しかもそれを感情を込めて表現する習慣があまりない。だが、これからのグローバル化した国際社会では、そういった努力も求められる。そういう意味でも、フィードバックを習慣化することは有益だと思われる。

フィードバックの目的・メリット

 フィードバックの目的は、現在の状況をあるがままに真摯に見つめ、改善点に向き合い、アクションを起こし、個人・組織の資質・成績・パフォーマンスを向上させることだ。

 きちんとしたメソッドに則ってフィードバックを行うことで、フィードバックの受け手は、指摘された点を考慮し、修正し、改善されたパフォーマンスを次の機会にすることができる。これを定期的に行い、習慣化することで、チームメンバーは、自然と、自分自身の改善点を求めるようになる。

フィードバックする人のメリット

 フィードバックは、それを受ける人にとって有益であるだけでなく、する側にも大きなメリットがある。それは、

  • 自らの聞く力を伸ばし、
  • 分析力を持って素早く考察し、
  • 的確に短い時間で要点をまとめ、
  • それを適切な言葉で伝えられるようになること。

 ちなみに、これらのスキルは即興スピーチをするときに役に立つ。十分な準備ができずに、その場で急に意見を求められた時は、大抵うまく言えないものだが、普段からフィードバックをしていると自然とそれができるようになる。

フィードバックを受ける人(チーム)のメリット

さらに、フィードバックの結果、

  1. スタッフ個人の資質向上
  2. チームの一体感・コミュニケーション向上
  3. 目標達成、プロジェクトの成功

が見込めるようになる。

 フィードバックが適切に繰り返し行われると、新たな視点・気づきが得られるので、チームメンバー個人のやる気が出て、仕事のパフォーマンスが向上する。さらに、思い込み・思い違いなどが解消され、曖昧さがなくなり、目標などすべてがクリアになるので、メンバー間のコミュニケーションが円滑になる。そうなると、グループ全体のモチベーションアップ、グループとしてのパフォーマンス向上につながり、一体感が生まれ、スタッフ間の深い信頼関係が構築される。そうすれば、組織全体のレベルをベストな状態に保つことができ、目標達成がしやすくなることは間違いない。

 また、フィードバックのスキルは顧客対応にも応用できる。顧客からの声が上手に反映されれば、商品・サービスの資質が上がり、プロジェクトを成功に導くことができる。

 フィードバックは、複数の客観的に見た「自分」についての意見をもらうことになるので、主観的な「とらわれ」から解放されて、客観的に自分(組織)のあり方を見つめ直有効な手段だ。

なぜフィードバックが必要なのか

 フィードバックがこれからの社会においてより求められるようになるのは、次の3つの社会変化が背景にある。

  1. ビジネス環境の多様化・国際化
  2. 人材育成ができない
  3. 価値観の変化

 以上のような社会変化の中で、特に重要なのは、ビジネス環境の多様化・グローバル化だ。このような環境では、文化(特定の価値観)の壁を乗り越えたコミュニケーションが求められる。異文化間でのコミュニケーションでは、慣習的・文化的な背景の共通点が少ないので、うまく意思疎通ができなかったり、誤解が生じたりする。

 その共通点を少しでも増やすためには、フィードバックが有効な一つの手段だ。これを定期的に使うことによって、常に現状を確認をする習慣ができ、互いの共通した背景を供に作り上げることになるので、背景の違う人たちともお互い良いコミュニケーションがとれるようになる。

 さらに、人材育成に関しても、フィードバックスキルを習得すれば、すでに説明したように、チーム全体のモチベーションが上がり、自主的に改善を求める雰囲気ができるので、効率性があがり、何事も短い時間で集中してできるようになり、人材が自然と育っていくという好循環を産むことができる。

 それから、価値観の違う人たちと共存するためには、フィードバックを活用することにより、個性が尊重されるので、チーム内のコミュニケーションも円滑になり、自由な組織風土をつくることにつながる。その結果、それぞれが働きやすい環境が醸成されることになるはずだ。

 非言語コミュニケーションについてはこちらの記事を参照。

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フィードバックの具体的方法

適切なフィードバックが行われることのメリット、なぜ活用されるべきかについて述べてきたが、あなたのプロジェクトを成功に導く、具体的なその方法について解説しよう。

「改善点を指摘」をするのがフィードバックの目的の一つなのだが、それを誤解し、やたら欠点ばかりを挙げてしまうのは困りものだ。そうなると、受け手に自信をなくさせ、やる気を損わせてしまうことになる。中には「指摘してくれと言うから言っただけだ」と開き直る人もいるかもしれないし、指摘した本人には悪気はないかもしれない。

 しかし、それは本来のフィードバックではない。フィードバックには一定のやり方がある。前述のように、フィードバックを受けると「気分がよくなる」ようでなくてはならない。

 では、フィードバックは具体的にどのように行なえばよいのか、フィードバックの方法についてご紹介しよう。

フィードバックのフォーミュラ

  • ステップ1:良いところを指摘して褒める
  • ステップ2:今後の改善点を指摘する
  • ステップ3:自分の学びを伝える

ステップ1:まずは、良いところを指摘し、褒める

 受け手の行動や言動に対して、自分がいいと感じたところ、好きな点、感心した点、効果的だと思われる手法など、本人がすでに持っているポジティブな側面を指摘し、引き出すことによって、受け手の自己肯定感・意欲・自発性を高めて、すみやかな成長を促すことが狙い。

 スキルとしては、日本人は、褒めるのが苦手な人が多く、また褒められた経験が少ない人も意外といるので、少し大袈裟くらいに表現するくらいが丁度いい。グループでフィードバックを行う場合は、全員で盛大な「ホンキ」の拍手を送るなどの演出も必要だろう。これは経験してみると分かるが、半分「お世辞だろう」とわかっていても嬉しいものだ。

 指摘する点も、具体的であればあるほど相手に自信を与えることができる。それには相手の言葉をよく聞き、行動をよく観察していないといけない。ありきたりな褒め言葉は相手に猜疑心を植え付けるだけだ。(傾聴については後述)

ステップ2:次に、今後、より成長するために改善点を浮き彫りにし、次のアクションを考える

 将来への改善点として、あえて問題点を指摘し、あくまでも前向きな表現を使ってフィードバックを返す。何が問題なのかを、できるだけ具体的に指摘することが大切。それに対する具体的対処法も提示してあげたい。そうすることで、改善点はあくまでも一部であり、全人格を否定している訳ではないことを受け手に理解してもらう。

 また、改善点はあくまでも一つの意見にすぎず、その提案を採用するかしないかは本人に委ねることも伝える。受けたアドバイスに盲目的に従うのではなく、受け手自身が自発的に、自分で考えて、状況を打破できるようになることが望ましいからだ。だから、フィードバックを行う者としては、たとえ上司であっても、あくまでも客観的に見た一意見であることを明確にした方いい。それが個性の尊重であり、相手の自主性を伸ばすことにつながる。

ステップ3:最後に、自分の学びを伝える。

 最後に、相手のパフォーマンスを観察することによって自分がどんな学びがあったか、自分にとってどんな意義があったか、相手から影響を受けたことがあったかを説明する。

 例えば、

「私も新人の頃、同じようなことをしていたのを思い出した。『初心を忘れない』という意味で私にとって今回はいい教訓にもなった。ありがとう」

などと、締めくくれば良い。

 ここでは、内容的には、最初に指摘したポジティブなものの繰り返しになるかもしれない。だが、同じ内容でも表現を変えたり、そこはあえて「大事な点だから」と強調したりすれば良い。まだ慣れない内は、最初に言うべきだったポイントを最後にとっておいて、全体的な感想として最後に指摘する感じでも良い。

 ここでのポイントは、相手が改善点を指摘された後に否定的な印象でその場を去らないように、最後にまた褒めることで、相手に前向きになってもらうことが目的だ。

 加えて、「すべて目の前に起きる事象は、『学べ』との自分に対する天からのメッセージだ」とする考え方もあり、もし、それに従うとすれば、相手の良い点・改善点から自分が学ぶべきことは大いにあるはずだ。「人の振り見て我が振り直せ」との諺もある。それを素直にシェアすれば良い。こうすることによって、押し付けがましくなく、さらに「上から目線」でもなく「同じ目線」に立ってフィードバックができ、円滑なコミュニケーションが生まれ、良好な人間関係が構築される。

 こうすることによって、「常に学び、向上する」する姿勢を示すことができ、謙虚さが醸し出され、チーム全体が目標に向かってコツコツ努力する雰囲気が醸成される。実は、ステップ2の改善点の提示よりも、むしろこちらのステップ3の方が大切なのだ。なぜなら、基本的に人を変えることはできないが、自分を変えることは自分ができるからだ。自分が変われば、周りも影響されつられて変わっていくものだ。

ポジティブとネガティブの共存

 人にはそれぞれ長所・短所があるように、パフォーマンスにもいい点・改善点がある。それがあるがままの姿だ。だから、適切なフィードバックでは、その両方、ポジティブな面とネガティブな面を指摘する必要がある。なぜなら、どちらか片方だけを指摘するのは、真の現状を見ていないことになるからだ。

 つまり、どんなに素晴らしいパフォーマンスでも、必ず改善点はあるし、一見ひどくダメなパフォーマンスでも必ずいい所があるはずだ。そのあるがままを相手に返すことがフィードバックの基本だ。

 だから、いい面と改善点の両方を観察できる視点と表現力が必要になる。これを考えることでスピーチ力も向上する。

 フィードバックに慣れないうちは、改善点ばかりを指摘しまって、受け手を傷つけてしまいがち。逆に、いいところばかりを誉めてしまい、受け手の成長が止まってしまう場合もある。 多くの場合、この改善点を指摘することが、最も伝えたいことになるのだが、改善点の指摘は、否定的なニュアンスで捉えられがち。なので、最初に誉めてから、改善点を指摘することに意味がある。最初から否定しまうとモチベーションが下がることがあるので注意が必要だ。そして、最後はまた褒めること(ステップ3)で締め括る。 

フィードバックの導入プロセス

トレーニングの必要性

 大抵はフォーミュラに沿って行えば、すぐに実践できることだが、人によっては訓練が必要かもしれない。改善点を指摘するときは、率直にその点を言うのだが、同時に、相手を尊重した表現を使い、見下した態度で行わないことが条件になる。そういうマナーを守れない人は、必ずきちんと学習して欲しい。

 逆に、誉め方が分からない人も必ず一定数いるが、これは慣れれば誰でもできるようになるので、フィードバックを続ける努力が肝要だ。

 フィードバックする時、押し付けがましくなく、傾聴し、相手の長所を「引き出す能力」を習得するには、ある程度トレーニングと経験を重ねる必要がある。もし、組織のシステムとして取り入れる場合は、定期的に研修会を開くなど、この点を深く考慮した方がいい。

個別にやるか全体か

フィードバックを1対1で行う場合は、フィードバックを与える側がある程度スキルを習得していることが前提になる。また受ける側にもフィードバックとは何かをある程度理解してもらってから始めないと動揺させてしまう。繰り返しになるが、フィードバックを受けたら、受け手の気分が上がるような状態を目指さないといけない。

 そういう意味では、よく分かった人が、全体の場でフィードバックはどんなものかを示してから、個人的な場で使用するとスムースに事が進むと思われる。

 全体の場で導入する場合は、フィードバックのフォーミュラを十分説明し、最初はうまくできなくてもいいとの前提で、書面と口頭の両方で始めると良いだろう。繰り返し行い、フィードバックを習慣化する事が重要になる。

フィードバックのタイミング

 「鉄は熱いうちに打て」との諺にあるように、フィードバックは時間が経ってからでは意味がなくなる。良い点・改善点を具体的に指摘するためには、記憶が新鮮なうちにしないと忘れてしまう。本人も無意識に行っていることもある。時間が経つと話を作られたと誤解を受けてしまうかもしれない。

 だから、フィードバックがその日のうちに済むように、最初から予定に組み込んでおくと良い。フィードバック担当者もあらかじめ決めておいて、他の人は、それに付け加える形で進言できるようなシステムにするといいだろう。

適切にフィードバックを行う7つのポイント

ここまでで、具体的なフィードバックの方法について解説してきたが、この方法を適切に採用し、実行する際の注意点についてご紹介しよう。

  1. 受け手の感情を無視していないか
  2. 信頼関係が構築できているか
  3. 適切な表現をしているか
  4. 内容は適切か
  5. 同じ目線に立って発言しているか
  6. 性急な成果を期待していないか
  7. 相手の話をよく聞いているか

1)受け手の感情を無視していないか

問題点

 フィードバックの受け手には感情があり、それぞれ性格も異なることを忘れている。相手の立場や、考え方、好みを考慮せずに、ただ改善点のみを指摘してしまい、チーム内の雰囲気が悪くなった。

対策

 最初から、積極的に改善点の指摘をしても効果があるかもしれないのは、例えば、主体性や創造力があるリーダー・幹部候補や、その分野での経験豊富な人材に対してだ。

 しかし、人材はそれだけではない。他にもさまざまな人がいる。繊細な人は、人の気持ちに寄り添える能力を持っている。それは、顧客心理を読み解く才能があるということでもある。そういう多様性を活かしてこそチームの強みが発揮される。

 相手の立場に立って、性格や趣味の違いなども考慮し、自分が提案する内容をきちんと吟味し、それぞれの相手に合った形でフィードバックを実施することが必要になる。特に、未経験者・新人、もしくは、敏感な人、繊細な神経の持ち主などに対しては、最初の導入時には、違ったアプローチが必要だろう。

 例えば、ステップ2の改善点の指摘を省略して、褒めることだけに専念するといいかもしれない。

 受け手の立場に立って考えてみて欲しい。褒められるだけであれば、安心してフィードバックを受けたいと思うし、次のフィードバックが楽しみにさえなる。やがて自信もつくだろうことは容易に想像できる。

 また、フィードバックをする側にとっても、最初慣れないうちは、何をどう言っていいいのか分からない人が一定数いるものだ。どのように褒めるのか、褒め方を学習し、良い点を見つける力を養成するためにも、最初は、ステップ1、3だけにして、慣れてからステップ2を導入するといいだろう。

2)信頼関係が構築できているか

問題点

職場の雰囲気が悪い。何かというと口論が起き、対立しやすい。陰口が横行している。お互い改善点などを交換し合っても、嫌みな内容になるだろうことは容易に想像がつく。いつも否定的なことしか言わない人を誰が信用するだろうか。

対策

 フィードバックを実行する場合、まずは、信頼関係を構築することが重要だ。信頼関係がなければ、受け手は聞く耳を持たない。聞く耳がない人に対して、いくら改善点を指摘しても無駄な努力であり、人間関係は悪化し、お互いのやる気をなくすだけだ。最初から否定的なことを言われると分かっていたら、フィードバックを受けたいとは思わない。

 もし、職場の人間関係で、すでに信用が薄れているなら、思い切って改善点の指摘は禁止。褒めるだけのポジティブフィードバックのみの実践を推奨したい。慣れるまでは、前述のように、改善点はあえて伏せておいて、良い点だけを褒め合うことをすればいい。ポジティブフィードバックによって薄れた信頼関係は修復されるだろう。

 なぜなら、大抵の場合、長所は短所をカバーするものだからだ。長所が伸びることで自信がつく。自信のなかった人が自信を持てるようになると、必ずその人のパフォーマンスは上がる。まずはフィードバックを受けることに慣れさせ、自信をつけさせてから、段階的に本格的なフィードバックを実行した方がスムースな展開が望めるだろう。

 ただ、ここでは、ステップ3が重要になる。自分が相手から学んだこと、自分にとってその人の良さが意義深いものであることを説明するためには、表面上のおベッカではダメだからだ。お互いにお互いのありのままの姿、努力している姿から学び合うところに、そして、この点を真剣に考えてシェアするところに、本当の強い信頼関係が生まれるものだ。

3)相手に敬意を払い適切な表現をしているか

問題点

 フィードバック時に、偉そうで高圧的な態度をとってしまう。

 改善点を指摘する時に、不適切な表現を使ったり、一方的なコメントを返してしまう。全くデリカシーに欠けた表現をしておきながら、「あれは改善して欲しくて、率直に事実をストレートに表現した結果だ。私に悪意はないし、それを素直に受け止められない相手の問題。だから私は謝らない」などと言い張る。

 結果として、受け手やチーム全体に不快感を与えてしまう。受け手のモチベーションが下がり、パフォーマンスは悪化してしまう。感情的になってフィードバックを受け入れられなくなる。

対策

 正直に、率直に物事を述べることと、失礼な言い方をすることを混同している人をたまに見かけるが、この二つは全く違う行為だ。率直に意見は述べるのだが、それは丁寧で、相手を尊重した表現、愛情が感じられる態度で伝えられるべきであって、相手を威嚇・侮辱するような態度(感情的な声のトーン)や人格を否定するような表現は絶対に避けるべきだ。

 しかし、かと言って、逆に人を傷つけたくない、誤解されたくないからとフィードバックを怖がって避けてしまうのもどうかと思う。発言者の根底に愛があれば、それはきっと伝わるだろう。たとえ、不適切な表現を使ったとしても、自分の間違いを認め、素直に謝ればいい。

 むしろ、怖がらずに積極的にフィードバックを行い、コミュニケーションの量を増やす方が将来的にチームの成長が見込める。それでお互いの理解を深めることができれば、誤解や、感情的な問題、他のいろんな致命的な問題は避けられるだろう。フィードバックをシステムとして取り入れて、常時行われている環境を作り、信頼関係を深める努力が大切だと思う。

4)目的に則した評価をしているか

問題点

受け手の状況や能力、理解度などを加味せずにフィードバックを行うと、キャパオーバーになって、達成が難しくなり、逆にやる気を失わせる結果となってしまう。

対策

 ステップ1で、良い点を3つ挙げたら、ステップ2の改善点でも3つ述べ、それ以上は指摘しない。バランスが大切。改善点が良い点を上回らないようにする。その場で気づいたことを全部指摘しなくても良い(改善点の指摘に優先順位をつけるー後述)。人の成長には時間がかかるもの。一つずつステップアップして、改善していくように心がける。基本的に、自分を変えることはできるが、人は変えられない。

 また、ここで一番大切なのは、各プロジェクト・仕事項目に目的を持たせ、その目的にあった改善点を与えること。それから外れた点には触れない。

 例えば、もし、誰かが新しいプロジェクトを立ち上げるプレゼンをするとしたら、そのプレゼンの目的を明確にさせる。目的は、社内のコンセンサスをとる、という事だとしよう。そうしたら、その目的が叶ったかどうか、その目的を達成するにはどうすれば良いかに集中して改善点を考える。例えば他にも、スライドの準備が甘かったという反省点も出てくるかもしれないが、そこは直接目的とは関係ないし、本人も十分分かっていると思われるので、あえて指摘しないでおく。

 つまり、たくさんある改善点には、プライオリティをつけて、目的と照らし合わせて、関連性の低いものは別の機会に指摘するようにする。受け手の意識が変われば、指摘しなくても自然と改善される場合もある。

5)同じ目線に立って才能を引き出しているか

問題点

 受け手が「アドバイスを受けているのは自分が劣っているからだ」と誤解してしまう。

 チームメンバーにあるさまざまな潜在的な良いアイディアを引き出しきれずに埋もれさせてしまう。

 リーダーや周りのスタッフに依存して、自分の頭で考えて行動できない。自立が促せない。

対策

 何かを教えるという、いわゆる「上から目線」よりも、「同じ目線」に立ってフィードバックすることが大切だ。それは、たとえあなたの方が明らかに立場が上であっても当てはまる。

 実際に、どんな相手でも、その人の良い点・改善点から自分が学ぶべきことは必ずある。「人の振り見て我が振り直せ」との諺もある。こういう相手から学ばせてもらうという姿勢でフィードバックを行うことで、押し付けがましくなく、「同じ目線」に立って評価ができ、円滑なコミュニケーション、良好な人間関係が生まれ、強いチームが生まれる。

基本的な考え方

「同じ目線」に立つためには、まずフィードバックを与える側が、「個々がそれぞれユニークな存在である」との前提に立って、相手の個性を尊重していないといけない。「相手から自分が学ぶものは何か」「相手のために自分は何ができるのか」をベースに考え、自分の持つ情報をシェアし、一緒に伴走して支える、というイメージを持ってフィードバックを実践することだ。いわゆるコーチ的な役割だ。

 自分の心の中に多少でも、相手を見下したり、例えば「こんなことも分からないのか」という責める気持ちがあると、それが自然と表情や態度に現れてしまう。だから、特に、改善点を指摘する時には、顔の表情とか声のトーンに気をつけよう。

具体的なアクション

 傾聴し質問する:

 フィードバックを行う前に、傾聴し、多くの質問をし、事実確認をする。その上で、特にステップ1では、相手に既にある良いものを認め、そこに光をあてるように心がけることだ。

 本人が決定

 改善点は、あくまでも提案に過ぎない。それを採用するかしないかの決断は、本人に委ねられる。また、何かの決定をする時は、相手の主体性を尊重するために、あくまでも本人が行うようにする。

 確かに、状況によっては、一方的に教えざるをえない時もあるだろう。それは、

  • 何かの作業手順や、
  • PCスキル、
  • 業界の常識などをシェアしたり、

などの、シンプルな技術情報や、相手に情報がほとんどない場合がそうだ。

 しかし、そういう場合でも、必ず知識があるかどうか確認してから行うと良いし、もし確認ができなかい状況にある時は、

「すでにご存知かもしれませんが」「釈迦に説法かもしれませんが」

などと断ってからフィードバックを行うといいだろう。

 言い残しがないようにするために、さらに「いつでも何でも言える」という自由な雰囲気を醸成するため、その結果、相手の潜在的な優れたアイディアを引き出すために、

「他には何かありませんか?」

と常に聞くのも効果的だ。

6)性急な成果を期待していないか

問題点

 フィードバック自体は、ただ単に感想を伝えるだけの行為だが、これをビジネス環境改善のためのシステムとして導入すると、成果が見えるまでは、一定時間を要する。

対策

フィードバックを導入してから期待している成果が現れるまでは、忍耐が必要だ。スタッフの成長を期待しているなら、長いスパンで見守る必要がある。そもそも人材育成とは時間のかかるものだ。あらかじめそこをわきまえて取り組んだ方がいい。

7)相手の話をよく聞いているか

問題点

 改善点の内容が的を得ていない。

 提案をする時に、どうしても上から押し付けるような態度になってしまい、そこから抜けきれない。

対策

 フィードバックは、どのように発言するかに囚われてしまいがちだが、実は、いかに相手の話をよく聞くか、様子を観察するかにかかっている。具体的改善を見出すためには、よく相手の状況を把握し、客観的、公平な視点で分析しなくてはならない。

 そのためには、フィードバックをする前に、必ず傾聴することが必要になる。ところが、人は意外と相手の話を聞いていないことが多い。自分の思い込みが邪魔して、ある部分だけ耳に入ってこなかったり、聞いている間、考え事をしていたりするものだ。聞くことは、話すこと以上に重要。傾聴なしに効果的なフィードバックはできない。多くの場合、人々は解決策を探しているのではなく、単に誰かに自分の状況を認めてもらいたいのだ。

 話が聞けていないと、具体的に、的確に問題点を指摘し、具体的な改善点を示すことができない。受け手も自分の話がきちんと聞いてもらえて受け止められた、と感じなければ、そのアドバイスを受けようとは思わない。

相手の話をよく聞くポイント

  • プロジェクトの目的は達成されたか
  • どの部分が足りなかったのか、あるいは十分だったのか
  • それをサポートする具体的事象はあるか
  • 何が事実で、何が意見なのか
  • 今、どんな気持ちで話しているのか

 もしわからなければ、質問してはっきりさせないといけない。自分の勝手な推測や、思い込み、曖昧な事実関係の把握をもとにしたフィードバックでは、相手の信用を勝ち取れない。本当に役立つフィードバックを提供するには、すべての詳細を吸収しながら、注意深く耳を傾ける必要がある。

 また、途中で遮ったり、自分の意見を述べたり、話を否定したりしていないか、も常にチェックしよう。

 さらに、相手の気持ちにも耳を傾けよう。人は感情の塊。心のドアを閉ざされてしまったら、どんなにいいアドバイスでも聞いてもらえない。逆に、心のドアがオープンであれば、どんなに拙い言葉でもきっと伝わる。

 上から押し付けてしまうのは、相手の気持ちを考慮していない証拠。相手の気持ちを推し量ることはとても大切なフィードバックのプロセスだ。言葉だけではなく、表情や声のトーンもよく観察しよう。

アメリカの事例

生活のあらゆる場面でフィードバックするアメリカ

 アメリカでは、Feedbackは日常的に行われていて、例えば、私がカリフォルニア州立大学で教えていた頃は、一学期終了時に、生徒が教師に対して評価を書いて提出することが普通に行われていた。評価結果の詳細は、学部を通して最終的には本人にも知らされる。あまり評判が悪いと、採用枠外となる。

 このシステムに最初はびっくりしたが、慣れると、これは教師にとってはありがたいことだった。なぜなら、主観的でなく客観的な評価がもらえ、次の授業の改善に役に立ったし、実際に生徒が感じていて直接私に言えないことを把握することができたからだ。

 他にも、ビジネスミーティングが終わる度に、必ずフィードバックシート(日本でのアンケート調査に似たようなもの)が配られ、その日の発表者や主催者、行事の内容について簡単な評価をすることが当たり前に行われる。

 発表者は、最初からそれを前提に取り組むので、常に「誰かに見られている」という意識が働き、下手なことはできなくなり、自然と「常に改善しよう」と努力するようになる。

 書面だけではなく、口頭でフィードバックも頻繁に行われる。それは1対1の個人的に行われる場合もあるし、全体のミーティングで行われる場合もある。

 トーストマスターズというアメリカでは名の知れたスピーチクラブでは、準備されたスピーチのそれぞれに対して、必ず仲間の中から論評者が出てフィードバックを行う。また、書面で参加者全員がそのスピーチに対してフィードバックする。スピーチに対するフィードバックだけではなく、司会者、その論評者など全ての参加者のパフォーマンスに対してフィードバックが行われる。

リーダーには欠かせないスキル:フィードバック

リーダーシップを取るためには、スピーチ力は欠かせない。そのスピーチ力を養うためには、フィードバックをマスターすることが必須だ。フィードバックを実践することで、スタッフのモチベーションが上がり、組織のコミュニケーションが活性化され、人材育成にもつながることを解説してきた。またフィードバック実施時の問題点と対策についても詳説させていただいた。

フィードバックをスキルとして習得することは、組織活性化、人材育成、リーダーシップの発揮、スピーチ力の向上へとつながる上で非常に有効な手段である。大いに習慣化していただきたいと願う。

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