話すことで生きるって本当にできる?ある日本人女性スピーカーのリアル

”信元夏代のスピーチ術” 編集長、プロフェッショナルスピーカーの 信元です。

 

「話すことで生きるって、本当にできるの?」

これまで何度も聞かれてきた問いに、この場を借りて真正面から答えてみたいと思います。

私は今、基調講演登壇、企業向け研修、個別スピーチ指導など、いわゆる「ことばの力で生きる」仕事をしています。けれど、最初からこの道を目指していたわけではありません。むしろ、ここまでたどり着いた道のりは、まるで一本の物語のように、曲がりくねりながらも、自分にしか歩めなかった軌跡です。

「英語ができる」だけでは、伝わらない。

中学1年から大学卒業まで、毎日NHKラジオ英語講座を聴き続けた私は、自分では英語が得意だと思っていました。けれど、早稲田大学からワシントン大学に交換留学した際、その自信は打ち砕かれました。言いたいことが英語で「伝えたつもり」でも、相手の反応は鈍く、「伝わっていない」ことを痛感する日々でした。

Washington University in St.Louisに交換留学中の私

その後、伊藤忠インターナショナルでの勤務、NYUでのMBA取得、そして戦略コンサルタントとしての実務経験を通じて、私ははっきりと悟りました。

「伝える」と「伝わる」は違う。

ただ言語ができるだけでは、相手の心は動かせない。

だから私は、「伝わる力とは何か」を徹底的に探究し始めました。

ブレイクスルー・メソッド誕生

戦略コンサルタント時代、論理的に完璧な資料を作っても、クライアントの反応がいまひとつ──という場面に直面しました。

優れたコンサルタントほど、論理だけでなく、ストーリーで語っていました。しかも、自分のことばで。

そこから私は3つの要素が融合することの重要性に気づきました。

  • 徹底的な論理性

  • ストーリーテリング力

  • 異文化を越えて共感を得るプレゼンテーション力

この3軸を体系化したのが、私の独自メソッド「ブレイクスルー・メソッド」です。

「Heroic Public Speaking」で涙した日々

そして私は、アメリカで著名なスピーカー養成機関「Heroic Public Speaking(HPS)」のブートキャンプに参加することを決意しました。

HPSは、すでにプロフェッショナルスピーカーとして活動している人たちが、更に高みを目指す場所で、オーディションを受けて合格しないと入塾できない狭き門です。

私は前列左から3番目。 アジア人は私ただ一人、私以外は全員アメリカ人ですが、その中で黒人はたった二人。アメリカのプロフェッショナルスピーカー業界の縮図とも言えます…

HPSでは、4日間缶詰めになる合宿を3か月間繰り返すのですが(つまりトータル12日間です)、その中でスピーチづくりから表現方法、動き方、声の出し方、そしてリハーサルの仕方に至るまで、徹底して叩き込まれました。

ある時、私は”マスタークラス”と呼ばれるクラスに参加していました。

”マスタークラス”は、2,3名が舞台に上げられ、本番さながらに自分の基調講演の一部を披露するのですが、マスターコーチが途中止め、ディレクションを行い、それに基づいて何度でもやり直す、というものです。客席に座っているのはクラスメイト達ですが、彼らはプロフェッショナルスピーカーです。プロの前で、舞台に上がり、きめ細かくフィードバックを出される。それはそれは勇気のいるものでした。

その日のマスタークラスで、私が舞台に上げられました。3分くらいのオープニングを披露したところで、マスターコーチが言いました。

”Natsuyoのスピーチはとても整っているね。だから何かが足らない。何かがブロックしているようだね。何だろう?”

完全に見透かされた!!と思いました。

それまでの私は、”完璧”を目指すべく、整ったことばをきれいに見せるように気を使っていました。でもそこで足らなかったのは、私の奥底にある”心”でした。 ”完璧に見られたい”、そんな思いが、自分の素の心をひけらかすのをブロックしていたのです。

スピーチは「技術」だけではなく「在り方」でもあることを、身をもって体感しました。

心を剥き出しにし、自分と向き合い、自分にしか語れないメッセージを磨き上げるプロセス。

初日から毎日のように、感情があふれて涙が出ることもしょちゅうありました。卒業式ではマスターコーチに激励の言葉をかけられ、みんなの前で大泣きしたのを覚えています。

「心の底から自分のことばで語る」という行為が、どれほど難しく、それだけに強い力を持つのかを学びました。

卒業式で大泣き

本番の裏にある「準備という修行」

私のスピーチ準備は、まず“ワンビッグ・メッセージ”を明確にすることから始まります。

そこから、構成を練り、ストーリーを織り交ぜ、声に出してリハーサル。

カメラで自分を撮り、表情、声のトーン、動きまでチェックします。

そして週に一度、HPS時代の仲間たちと組んでいるアカウンタビリティ・グループでアップデートを共有し、相互フィードバックを得ています。

華やかなステージの裏には、地道な準備と仲間たちの支えがあります。

使命を見つけた日 〜乳がんとの出会い〜

実は私は2017年、乳がんと診断されました。全摘手術、再建手術、ホルモン治療——決して簡単ではない日々でした。

このとき、自分が「話す」ということに向き合っている意味を、あらためて深く考えるきっかけになりました。

そして、思ったのです。「この経験も、誰かの力になるかもしれない」と。

スピーチは、聞き手の人生を変えるだけでなく、自分自身をも癒し、支える力があることを知りました。

私のモットー

“Changing the world, one speech at a time.” 世界を変える。スピーチひとつで。

 

この想いを胸に、私は、世界で400人しかいないCSP(Certified Speaking Professional)という称号を、日本人として初めて手にしました。

CSP授賞式にて。
私は前列紫のスーツ
 

「話すことで生きる」。この仕事は、誰にでもできるわけではないかもしれませんが、誰にとっても学ぶ価値がある力だと感じています。

“話す”という行為を通して、人と人とのつながりを築き、相手を理解し、自分自身の可能性を広げていく——そんな瞬間に立ち会えることが、この仕事の醍醐味です。

これからも、プロフェッショナルスピーカーとして、そしてひとりの表現者として、「伝える」ではなく「伝わる」ことばを磨き続けていきたいと思っています。

 

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