2000人の大会場でもあがる? プロスピーカーがスピーチで緊張しない6つの理由

プロは2000人の前で緊張するのか?

プロといえども人間。はじめは誰でも緊張する。しかし、経験を積むにしたがって、緊張をうまく処理、だんだん、緊張しても平常心でスピーチできるようになる。ではなぜ緊張しなくなるのか? 今回は、その理由を11つ詳細に解説しよう。まずは、私の尊敬するプロスピーカーの体験をご紹介し、その後緊張しなくなる理由を詳細する。

最初のセリフが出てこない!

2016年、プロのスピーカーであり、スピーチコーチ、トーストマスターズの2000年世界チャンピオンだったエド・テート氏は、ワシントンDC2000人を前にして基調講演を始めようとしていた。ところが、紹介を受けて登壇した後、最初のセリフを完全に失念してしまった。

 プロでもこんなことがあるのだ。

 それは、彼にとって、それまで経験したことがないことだった。パニックに陥った。7秒くらいの恐怖の沈黙が襲いかかった。

 こんな時の心理は誰でも一緒だ。一番恐れていたことが起きてしまったのだ。特に彼の場合はプロだけに自尊心が自身を責め立てた。

「目の前の人ばかりじゃない、オンラインでも話を聞いてくれている人が大勢いるのにもうおしまいだ! 俺は2000年の世界チャンピオンなのに、なんだこのザマは! ありえない! ああもう仕事のオファーも来ないだろう」(Toastmaster Magazine, April 2020, p23

 時間にしたら、ほんの7秒くらいなのに、そんな短い時間の中で、人っていろんなことを想うものだ。

 しかし、これではますます自身にプレッシャーをかけるだけで、なんの解決にもならない。

災い転じて福となす?!

ここでエドが取った行動は注目に値する。まず深呼吸。少し自分を取り戻せた。リラックスしてきて、口をついて言葉が出てくるように思えた。

 そして気を取り直して、自分にフォーカスし、「なぜ自分がそこにいるか」「聴衆がなぜ自分の話を聞きに来たのか」に意識を集中させた。

 さらに、暗記してきた話をそのまま話すのではなく、「今目の前にいる2000人の親友たちと会話を楽しむんだ」と自分に言い聞かせた。足を運んでくれた聴衆に思い出に残る体験を提供したいとの一念で話し続けた。

 これが功を奏した。結果はと言うと、終わった後はスタンディングオベーション。講演後、自著も多く売れ、次の仕事のオファーも来たのだった。「失敗は成功のもと」「怪我の功名」とでも言うべきか、エドのあの瞬間の想いとはまったく逆の成果となった。

 多くの聴衆は、その7秒は彼がわざとやったのだと思っていたようだ。それもそのはず、エドは機転を利かせて、「皆さんにもこんな経験ありますか」とその7秒を逆手にとって笑いを取り、聴衆との交流を保ったのだった。

なぜ緊張しないのか?6つの理由

上記のエドのエピソードからは、たくさんの学びがある。なぜ緊張しなくなるのかは、スピーチ当日におけるいろんな対処法を知っていたり、経験に裏打ちされた自信があり、さらに、スピーチ自体を楽しんでいるからだ。

  1. 深呼吸してリラックスしている
  2. リハーサルを何回もする
  3. 場数を踏み、何回も失敗を経験している
  4. 自分にフォーカスしている
  5. 聴衆のリアクションに合わせて話を進める
  6. 真っ白になった瞬間を逆手にとる方法を知っている

1、深呼吸してリラックスしている

今はスピーチを教える立場の私も、昔はスピーチが大嫌いだった。カリフォルニアの大学院に留学中、学校側から「日本について」話すように頼まれて、講堂でスピーチをした。その時、途中、頭が真っ白になって、何も言えなくなってしまった。実際にはその瞬間は1分くらいだったのだろうが、自分の中では、15分くらいに感じていた。終わった後「もう二度とするものか」とつぶやいたものだ。

 スピーチをする時、とっさに頭の中が真っ白になるのは、極度に緊張したり、焦ったりするからにすぎない。

 セリフが飛んでしまった時の一番効果的な解決法は、深呼吸だ。「そんな簡単なことで?」と疑問に思われるかもしれないが、これはかなり効果がある。上記のエドの体験でも分かるように、経験のある人なら誰でも同意することだろう。

 別に頭が真っ白になった時だけ、深呼吸するのではない。私は、始まる前には、必ず深呼吸するようにしている。そうするとリラックスできて、頭が真っ白になることはない。あの学生時代の苦い経験以来、実践している。

2、リハーサルを何回もする

エドが突差の場面で深呼吸し、自分を取り戻し、予想外の結果を生み出せたのは、十分に準備をしたからだと推察される。私自身、準備が不十分な時は納得した結果が得られない。

 特に大きな会議で話す場合は、何回も原稿を書き直し、最低でも10回はリハーサル、鏡の前で練習したり、自分の話を録音、録画したりして十二分にチェックする。心理的なことが大きく影響するので、自分が納得するまでやり切る。リハで間違えることは、本番でも間違える確率は高い。そこを重点的に練習する。

 録画は絶対した方がいい。無意識にする変なクセとは誰でもあるもの。そこを聴衆が見て笑うことがある。それを自分が敏感に察知してしまう時がる。そんな時は決まって緊張している時だ。以前、その笑いでますますアガってしまったことがあった。自分の話が馬鹿にされたような気がしたからだ。内容とは全然関係なかったのに。。。だから、録画をして、しっかり自分を直視し、そういうクセを直しておくことも大切なのだ。

 そして、スピーチ直前は「原稿は忘れてもいい。自由に話そう」と自分に話しかける。これでいつも私はリラックスできる。

 先の私の大学院時代の経験は、まさに準備不足が原因だった。あの時は、全く何も準備せず、「普段会話をするように話せばいいさ」と軽く考え、さすがに話の構成だけは考えたが、リハーサルも何もしなかった。あの頃は、リハーサルをするのは格好悪いとさえ考えていた。考えが甘かった。頭の中が真っ白になって当然だった。

3、場数を踏み、何回も失敗を経験している

緊張をうまくコントロールできるのは、場数を踏んでスピーチに慣れているからだ。だから余裕が生まれ、リラックスできる。

 でも、一度失敗すると怖いイメージがついてしまいガチ。でも、あがってしまってセリフを忘れたとしても、決して死ぬことはない。そんなに大したことではないのだ。むしろ失敗をすることで人は大きく成長できる。度胸がつく。逆にそれをネタにして記事を書いたり、人を笑わせることができる。成功談よりも失敗談の方が好意的に受け入れられるものなのだ。

 失敗した時には、「どうしたら失敗を繰り返さないか。どうやって改善できるか」を考えるようにする。それを信頼できる第三者に事前に頼んでおいて、フィードバックをもらう。自分でも気づいた点は、忘れないうちにすぐにメモしておく。もしパワポを改善すべきなら、なるべく早い段階で直しておく。そうすると安心でき、次回の成功をイメージしやすくなる。

 一度失敗したからと言って、あきらめたらもったいない。できなくてもいい。次回またトライする。あきらめずにできるまで繰り返せば、必ずできるようになる。すると自信がつく。

 その良いイメージを維持することが大切だ。人は誰でも普通に人前で話せる能力を持っているものなのだ。繰り返し繰り返し、小さな成功体験を積んで行こう。

 いろんなところで話をする機会があれば、積極的に体験してみよう。別に公的な場でなくてもいい。友達同士で話しているときも、スピーチしているようなイメージでやってみるとよい。もし、何かセミナーを受講したら、手を挙げて講師に質問してみよう。弊社のブレークスルーメソッドで教える「準備」をしっかりやれば必ず成功できる。

私の体験

私は、トーストマスターズというスピーチクラブで場数を踏んだ。もう、かれこれ10年以上だ。「即興スピーチ」コーナーや、クラブメンバーが準備したスピーチを即興で批評する「論評セッション」もあり、特にそこではかなり滅茶苦茶なスピーチをした。それでも、他のメンバーは温かい拍手をくれた。これが自信につながった。

即興、論評スピーチをするには、あらかじめ決まった構成パターンがあり、「その型に内容を埋めて話す」と良いことを教わっていた。失敗を何回も繰り返した結果、小さな成功を経験できるようになった。でも、完全にはいつもできないでいた。そして、2017年の英語スピーチコンテスト(論評)の時、「おー!今日は完璧に型にハマった!」とやっと自分でも納得できるスピーチができた。私はそれだけで満足だったが、その時、私の名前が呼ばれた。なんと、他のアメリカ人をさしおいて、一等賞に輝いたのだ。小さな成功が大きな成果を生むのだと確信した瞬間でもあった。

4、自分にフォーカスしている

スピーチをする前から、そして始まってからも、自分がすべきことに集中していれば緊張しすぎて失敗することはない。でも、特に大会場では、自分を見失いがち。例えば、その全体の雰囲気に飲まれてしまって、舞い上がってしまったり、普段自分がしないことをしてしまう。

 開演前は、自分のスピーチに集中したい人は多い。そんな人が、例えば、スピーチの前に乞われるままに参加者と一緒に写真をとったりする。そうすると、注意散漫になってしまい、自分が自分でなくなってしまう。だからいつもと違うことはしない。

 そうではなくて、自分がなぜそこで話をするのか、聴衆に対して何ができるのか、スピーチの目的を再確認し、自分は自分のやり方でいいんだ、と自分に言い聞かせ、今すべきことに集中することが重要だ。

目的を再確認

 人はなぜか、「人を幸せにしている=誰かのために役に立っている」と思うと安心できる。つまり緊張から解かれてリラックスできる。だから、スピーチの目的を明確にすること、つまり「誰のために、何のために話すのか」を思い出すことが大切だ。

 また、準備段階でも、対象になる人たちの笑顔を想像しながら原稿を書くといい。そうすれば当日も目的を思い出しやすくなる。本当にその聴衆が喜んでくれれば、「聴衆との一体感」が味わえる。

 終わった後、「ああ、今日は気持ちよく話せた」という時は必ず、聴衆の頷きだとか、笑いとか、質問とかがとてもポジティブで、建設的で、会場の人たちに支えられていた、という実感がある。支えられたという実感が安心に繋がり、リラックスできる。

 この聴く人たちとの「つながった感」があると、共感が生み出され、感動がほとばしるスピーチへと発展させることができる。だから「誰かのために、何かのために」話すのを目的とすることが大切なのだ。

 さらに、目的を確認することにより、テクニックに走ったり、自分本位の「オレオレスピーチ」にならずにも済む。相手不在の「独りよがり」スピーチでは自分が孤立してしまう。この孤立感が緊張をもたらしてしまう。

 私も本番前に緊張してきて、心臓が急にドキドキしてくるのを感じる時がある。以前なら、それだけでちょっとしたパニックになり、ますます心拍数が早まるのを感じた。しかし逆に、そのドキドキを受け止めて、

「ああ自分は緊張している」

ことを逆に全身で感じて、目的を思い出し、

「これでいい。きっとこれからいい話ができる。思いっきり聴衆を楽しませよう」

と自分に言い聞かせることにしている。

5、聴衆のリアクションに合わせて話を進める

英語(母国語じゃない言語)のスピーチだと、どうしても最初のうちは丸暗記になってしまう。日本語でさえも、丸暗記しようと頑張って練習している人を見かける。だが、それは避けた方がいい。

 なぜなら、頭の中で丸暗記の文が順序よく並んでいると、一つ間違えて脱線したら、元の線路に戻るのが難しくなる。戻るのが難しくなると焦って、パニックになるからだ。そもそも丸暗記の文章は、わざとらしく、不自然で、ぎこちなく聞こえるので、スピーチとしては面白くない。

 だから緊張しないためには、丸暗記して話すのではなく、聴衆をよく見ながらそれに合わせて話す。ちょうど一対一で普段の会話をするように。親しい友人と話をする時には、決して暗記してきたセリフを一語一語丁寧に語ったりしない。同じことを大会場でもすればよいのだ。

 そもそも丸暗記しようと思うのは、完璧に話そうとするからだ。スピーチとは水ものだ。その瞬間、自分や、会場、聴衆、何が起きるか分からない。完璧にできるわけがない。

会話を楽しむ気持ちでスピーチ

 優秀なスピーカーというのは、観衆のリアクションに合わせ、臨機応変にその場に見合う言い回しに変えたり、自分の言いたかったことを少し変えて表現したりするものだ。完璧でなくていい。もっとフレキシブルに、その瞬間に起きることを楽しむことが大切だ。

 そして、あらかじめ何が起きても慌てないように、あらゆるパターンを想定して、いろいろ準備しておくことだ。もし、脱線しても、こう修正しよう、というプランBCがあるから、ハプニングがあっても動揺しないのだ。

 私の場合、準備段階で、話したいが、今回の主旨とは微妙に違うので割愛する部分が必ずある。それを、いざという時のためにプランBとして考えておく。案の定、関連ある内容なので、聴衆からその部分の質問やリアクションが出て話が脱線する場合がある。それはそれで楽しいし、想定外ではないので、余裕で舵取りができるというものだ。

 人は誰でも、1対1なら話ができる。それが大勢の前だと緊張してしまう。だったら、緊張しないためにには、誰か親しい人と1対1で話しているかのように、大勢の前でスピーチすればよいのだ。

6、真っ白になった瞬間を逆手にとる方法を知っている

(1)冗談っぽく吐露する

一番私がよくやるのは、しばらく沈黙の後、「何を言うのか忘れてしまいました!あなたもこんな経験あります?」とか「私はどこ? あなたは誰?」などととぼけてみること。。。自分のその瞬間の気持ちを表現することで、リラックスできて、セリフを思い出すことができる。笑いもとれる可能性も大きい。エドのとった態度はこれと同じだ。

私の体験:

前述したように、スピーチの前に普段しないことをすると、セリフがスッと抜けてしまうことがある。あるパーティの時、本番前は飲酒しないようにしていた私だったが、その日は調子にのって、飲んでしまった。勢い余って、オープニングだけはよかった。

「みなさーん! 飲んでますか~?! ノッテますか~?!」

と言ったきり、私は黙ってしまった。完全に何を言うのか忘れてしまったのである。その後、10秒くらいしてから、

「あれ? 何だっけ?」

と言ったら会場は大爆笑! 笑いがおさまるまでしばらく時間がかかった。その間、私は必死になって、頭をめぐらし思い出そうとしたが、思い出せない。そこで、

「みなさん、一緒に深呼吸しませんか? 今日のパーティはすご~い盛り上がっているので、私の話を聞いていただくには、ちょっと気持ちを落ち着ける必要があるんです」

などと切り出して、自分もゆっくりと深呼吸をした。やっと興奮おさまり、スピーチの内容を思い出した。いや~、あの時はホントどうなるかと思ったが、たまたま笑いをとって難を逃れた。

よく考えると当時の私は、普段から笑いをとるよう心がけていた。つまり「本音を吐露すると笑いが取れる」ことを知っていたので、とっさにボケて、ごまかせたのだと思う。

(2)聴衆を味方にする

もし「短い時間では思い出せない」と判断したら、「これまでの内容で何かご質問などありませんか」と聴衆に聞いてみてもいいだろう。

Diane Windingland氏は、「簡単なQ&Aコーナーを設けたり、聴衆にペアを組ませて感想を述べ合わせたり、または簡単なアクティビティをしてもいい。そしてその間にメモを見て思い出せばよい」と述べている。(p25, Toastmaster Magazine, April 2020)

アクティビティというのは、軽い体操でもいいし、話の内容をより深く理解できるような、簡単に観客ができる何かを考えておこう。事前に計画しておいて、いざという時に使い、それが必要なかったとしても、時間が余った時の備えにすればよい。また、質問コーナーは、聴衆に人気があるのでプラスになるし、冒頭にそんな時間があることをほのめかしておけば、唐突な印象は避けられる。

あなたにもすぐにできる緊張しないセルフイメージの作り方

緊張しすぎてしまうのは、心理的な要因が大きい。自分はスピーチが下手だ、という低いセルフイメージを塗り替えて、成功体験を脳内にインプットし、高いセルフイメージを構築しよう。そうすれば、ほとんどの「あがり症」は克服できる。

1、自分のクセを理解し、イメージトレーニング

  • 過去のセルフイメージを払拭する。
  • 新しいセルフイメージを創造
  • 当日できること
  • 自分を観察し、自分なりの方法を見つける

一度失敗すると怖いイメージがついてしまいガチ。しかし、自分がスピーチで成功して笑っているイメージトレーニングや、「大丈夫!」と、自分に対する言い聞かせを繰り返すことによって、まずは自分のマインドを書き換えよう。

過去のセルフイメージを払拭する。

 失敗した体験や、人から言われたこと辛い言葉など、全てを紙に書き出してみよう。ここで重要なのは、その時の自分の感情に焦点を当てて書き出すことだ。緊張させるのは、あなたの感情だからだ。書き出したら、それを破り捨てる。あがり症の過去の自分とは決別するのだ。

 実は私は、スピーチで失敗すると大声で叫びたくなる。なので、そのモヤモヤを紙に書き出し、大きな灰皿の上でその紙を焼く(火事にならないようにご注意!)。そうするとなんとも言えないスッキリした気分になる。そして何かこの先とてもいいことが起こりそうな予感さえしてくる。

新しいセルフイメージを創造

 今度は、イメージトレーニングで新しい自分をつくってみよう。

 やり方は、目を閉じて、リラックスして、深呼吸。3秒吸って、6秒吐く。これを3回繰り返す。そして、あなたのなりたい自分をできるだけ詳細に頭の中で描写してみよう。

自分は2000人を前に講演している。聴衆は笑顔だ! そして私もリラックスしている。適度な緊張感はあるが、全然大したことない。なんと気持ちのいいスピーチなんだ!

 こんな感じのイメージトレーニングを寝る前や、本番前にするように習慣づけてみよう。最初は、もう大勢の人の前に立つ状況を思い浮かべるだけで緊張してしまう人もいるだろう。しかし、「緊張は悪くない。むしろして当たり前。大丈夫!」と自分に言い聞かせ、何回も怖くなくなるまでイメージトレーニングを繰り返してみよう。

 さらに、そのなりたい自分のイメージを紙に書いて常に持ち歩く。暇なときや、朝のぼーっとしている時などにそれをただ眺めるだけで良い。脳があまり活動的でない時の方がセルフイメージを書き換えやすい。このことは、神田昌典著「非常識な成功法則」(フォレスト出版)でも詳しく説明しているので、ご興味があれば参照されたい。

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当日できること

 一番緊張するのは、本番前だ。私は、特に始まる5分前は猛烈に緊張してくる。しかし、「大丈夫! 俺はできる! 俺は天才だ!」と自分に向かって心の中で叫ぶ。何度もそれで救われたものだ。

自分を観察し、自分なりの方法を見つける

 自分がどういう状況になるとリラックスできるか、自分なりの癖を理解しておくといいだろう。私の場合、事前に誰もいないステージに立って、そこが満員になっているイメージをしておく。そうすると登壇した時に、初めてのような気がしなくて、少しリラックスできるからだ。

 さらに、開演前に会場に早めに来た人たちと軽く話をするようにしている。特に、「今日は何を期待して来られたんですか」など、相手の関心事について尋ねることが多い。なぜなら、まず、聴衆と交流が少しでも生まれ、彼らに敵意がないことが分かり、安心できる。そして、場合によっては、会話の内容を話に盛り込む。そうすれば聴衆との一体感も高まり、聞き手視点で語ることもできるのだ。

2、ルーティンを作る

自分のルーティンを作ってそれに従うことで、いつもの自分を維持できて安心でき、緊張をコントロールできるようになる。ルーティンは、別に改めて作らなくても自分のしたいこと、していることをただ認識し、それを繰り返せばいい。

 元大リーガーのイチロー選手が、大観衆の中、あれだけの大記録を次々と打ち立てたのは、彼がいつも自分のルーティンに従っていたからだ。

 そのルーティンとは、試合前、いつもと同じ時間に同じ動きをする。いつも同じ時間に起きて、お昼ご飯は7年間、ゆみ子夫人が作った同じ味のカレーを食べ、同じ時間にスタジアム入り。そして、右手で顔の前にバットを立てるおなじみのポーズ。こんなルーティンをつくり、それに従うことで緊張を緩和させているのだ(NHK「プロフェッショナル・仕事の流儀」2008年」)。

 私は、これを真似して、スピーチ前には深呼吸をしたり、ラジオ体操をするようになった。体操は毎朝しているので、いつもと違った緊張気味の雰囲気を逃れて、普段の自分の生活に戻れるような気になれるからだ。

緊張するのは全然悪くない!

今まで緊張しない理由を書いてきたが、実は「緊張しない」というのはウソだ。実はプロでも、みんな緊張している。でも、「緊張するが、そんな状況でも平常心を失わないで対応できる」のだ。そのことを、「緊張しない」という表現を使って便宜上説明してきただけだ。

かのイチロー選手は、「緊張しない人は全然ダメな人」とインタビューで語っている。あのイチロー選手でさえすごく緊張する。また、野球界の名選手、かつての長嶋監督、王監督も、「むしろ緊張を楽しんでいる」旨をインタビューで答えていたのを思い出す。

だから、普通の人が緊張するのはあたりまえのこと。「誰でも緊張するんだ」と楽に構えてみたらいかがだろうか。

 初めてのことや慣れないことには、誰でも、緊張や不安を感じるのは自然なことだ。問題は、大勢の人の前に出るだけで、自動的に脳が反応してしまい、緊張して言葉が出なかったり、汗を異常にかいたりすることだ。この心理的な要素を排除するためには、今まで述べてきたように、意外と効果的で簡単な方法があった。それは、自分で自分に「大丈夫!」と言い聞かせることだ。

プロが緊張をコントロールできるのは、場数を踏み、準備を十分にし、高いセルフイメージを持つこと。さらに、深呼吸、自分のすべきことに集中し、会話を楽しむがごとく聴衆と話す、などの技術を習得しているからだ。

緊張して恥ずかしくて頭が真っ白

プロが緊張をコントロールできるのは、場数を踏み、準備を十分にし、高いセルフイメージを持つこと。さらに、深呼吸、自分のすべきことに集中し、会話を楽しむがごとく聴衆と話す、などの技術を習得しているからだ。

スピーチで緊張・汗

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