スピーチ・プレゼンとは何か? それって違うの? よくある誤解とは?

スピーチとプレゼンテーション、これらの言葉を耳にしたとき、あなたはどのように区別するだろうか?「スピーチは話し言葉だけで感情を伝えるもので、プレゼンはスライドや資料を使って情報を説明するもの」といった一般的なイメージだけで理解されているかもしれないが、果たして、本当に、それだけでこの二つの違いを語れるだろうか?

実際、スピーチとプレゼンには多くの共通点があり、違いを明確に定義するのは難しい。では、なぜこの二つがしばしば混同され、誤解されるのか? この記事では、スピーチとプレゼンの違いを掘り下げながら、それぞれがどのような目的や特徴を持つのかを解説する。そして、どちらも単なる情報伝達手段を超え、聞き手の心に影響を与える「コミュニケーションの本質」を内包していることを示したい。

この記事を読み進めることで、以下のポイントが明らかになるだろう:

  • スピーチとおしゃべりの違いから、スピーチの本質を浮き彫りにする。
  • スピーチとプレゼンの違いを整理し、それぞれの強みと適した場面を理解する。

この記事を読むことで、スピーチとプレゼンに対する新たな視点を手に入れ、どんな場面でも効果的にコミュニケーションを図る力が養われるだろう。さあ、一緒にその本質を見極めてみよう。

スピーチとは何か?

おしゃべりとの違い

ここで、スピーチとは何かを熟考するための土台として、普段のおしゃべりとの違いについて考えていただきたい。おしゃべりとスピーチの違いとはなんだろうか? 読者は、すでにお気づきかもしれないが、

  • おしゃべり: 取り止めもなく、自分の言いたいことを話すこと。
  • スピーチ: 何かの目的を持って、構成をつけて、論理的に話すこと。

と言えないだろうか。

つまり、必ず何かの目的があってそれを達成するために話すのがスピーチ、ということだ。では、そのスピーチの目的には、どんなものがあるだろうか。

  • 説得したい、告知したい、刺激を与えたい、行動を喚起したい、考えてもらいたい、

などではないだろうか。

スピーチとは聞き手に影響を与えるための重要なコミュニケーション手段

このように、私たちは、聞き手に何らかの影響を与えたい、そのツールとしてスピーチを用いているのだ。ちなみに、これらのスピーチの目的は、Persuade(説得する)、 Action(行動を喚起する)、Inspire(刺激・啓蒙する)、Notify(告知する)、Think(考える)の頭文字をとって、P.A.I.N.T.と呼ばれている。

スピーチとプレゼンはどこがどう違うのか?

ここで、さらにスピーチの性格をより明確にさせるために、スピーチとプレゼンとの違いを掘り下げてみよう。実は、その違いは、非常に曖昧であり、この二つの用語は、しばしば混同して使われる。

スピーチとプレゼンに対する誤解

スピーチは短く話すだけ? プレゼンは長くてスライドを使う?

いろんな人にスピーチとプレゼンの違いを聞いてみると、いろんな答えが返ってくる。ちなみにネットを検索すると、

?「プレゼンは様々な表現手法で、スピーチは話して伝えるだけのもの」

と、違いを説明している人が多いようだ。確かに、結婚式や朝礼などで行われるスピーチは、主に話し言葉に頼っている。時間も短く、3~5分程度が一般的なので、わざわざスライドなどの視覚物はあまり使うことはないのが特徴なのかもしれない。また、

 ?プレゼンテーションの場合、スライド資料を投影したり、配布資料を用意したりと様々な視聴覚手段を用いながら説明を行います。対して、スピーチは英語で「話すこと」「演説」を意味する名の通り、基本的に話す言葉のみで聴衆にメッセージを伝えます。

と補足する人たちもいる。確かに、このように説明してしまえば、話はスッキリして、わかりやすいかもしれない。しかし、私に言わせれば、これは、それぞれの一つの側面を表現しているだけであって、曖昧で、しかも狭義での定義だと思う。いわば、一般的な傾向を表した単純な定義とでも言っておこうか。実際には、程度の差はあるが、スピーチでもスライドなどを多用することもあるし、動画や資料を用意することもある。だから、このようにせまく決めつけてしまうのは、その性質を包括的に表現できていないのではないか、と感じる。

さらに、

?スピーチが「想い」を伝えるものだとすると、プレゼンは「情報」を伝える目的があります。

と唱える人もいる。これはどうだろうか? 

 スピーチでも、情報のみを伝えるだけのものもあるし、プレゼンにも、その人の想いがなかったら、冷たく機械的な話になってしまい、心が動かされることなく、つまらない話になってしまい、説得力に欠けてしまう。(ちなみに、効果的な説得方法については、別記事をご参照ください)

 では、どのように定義するのが、より現実的なのか? もっとわかりやすく理解するために、どんな場合や状況をスピーチ・プレゼンと呼ぶのか、それぞれの事例を思い浮かべてみよう。

スピーチ・プレゼンのそれぞれの定義とは

スピーチ・プレゼンが実際に行われる状況

 実際に、「スピーチ」「プレゼン」と言われて、パッと思い浮かぶ状況を列記してみよう。

  • スピーチと呼ばれる状況:  政治家の演説、卒業式のスピーチ、モチベーショナルスピーチなど。
  • プレゼンテーションと呼ばれる状況:  ビジネスプレゼンテーション、学会発表、プロジェクト報告など。

これらの事例からわかることは、

 スピーチとは、「自分の体験や体験から得た感想などをエピソードを交えて話すことで聴き手を楽しませるもの」と解釈してもよいだろう。ところが、やはり、そのようになかなか限定できるものではなく、実際には、悲しい知らせを報告することもあるし、エピソードがない、実験データだけのスピーチもあったりする。

プレゼンに不可欠なのは説得力

 一方で、プレゼンとは、上記の事例から定義を試みると、誰かに決定してもらうために情報を提供する、もしくは、判断をくだしてもらうためのもの、である状況が多いのではないかと思われる。

 プレゼンでは、具体的な情報を提供し、理解を深めることが主な目的と言えるのではないか。例えば、新製品の紹介、ビジネスプランの説明など。プレゼンは自分のアイデアや考えなどを話して、聴き手を説得する目的で行われるものだと思う。この状況で頻繁に見られる光景としては、スライドで、グラフやチャートを見せたり、写真を見せたり、動画を見せたり、さらに、実際に商品のデモをして実演をしたり、試食したり、手触りを確認したり、また、会場からアンケートを取ったりなどが想像される。

 このように、ありとあらゆる手段を講じて、相手にこちらがして欲しいことをしてもらうように誘導・説得する、例えば、買ってもらおう、採用してもらおう、高い評価を得ようとするのがプレゼンだと言えそうだ。

 では、これらを総合的にまとめると、

  • スピーチ:自分の理論・主張なり、経験なりを中心に情報の伝達を行うこと。ここでは、特定の誰かに決定・判断を促す必要はない。短い時間のものが多い。
  • プレゼン:誰かに決定・判断してもらうために、あらゆる手段を使って、具体的な情報を提供し、理解を深めること。長時間を要するものもある。

としてみたら、どうだろうか。

 こうしてみると、スピーチとプレゼンの違いは、相手の判断が求められるか、否か。さらに、その手段に程度の差が認められ、スピーチでは、バリエーションはあるものの、話し言葉が中心である傾向が見られる。一方で、プレゼンではあらゆる手段(スライド・アンケートなど)を使う傾向が強い。

 つまり、あえて言うなら、プレゼンには、相手の判断が求められるがゆえに、スピーチの目的の中の「相手を説得する」という点に力点がおかれやすい。

 だが、これらを除いては、スピーチとプレゼンには、共通点が多く、区別はとても曖昧である。本質的には、どちらも聞き手に影響を与えるための重要なコミュニケーション手段である。

プレゼンを極めるには、まずスピーチから

 以上、見てきたように、相手の判断という点を除いては、スピーチとプレゼンには共通点が多い。一般的に見ると、スピーチは限られた手段、主に話し言葉を使うことが多く、それに対しプレゼンは、もっと広く、あらゆる手段を用いる傾向があるようだ。

 プレゼンで成功するためには、相手の判断を促す必要があるために、説得力を身につけなくてはならない。説得力を増すには、スピーチができなくてはならない。スライドなどの視覚的効果も必要だが、あらゆるポイントを含む構成力や、説得力を増す事例の選択や、相手のニーズをつかむことなどのスキルを磨く必要がある。つまりは、その総合力であるスピーチができなければいけない。あえて言うならば、プレゼンはスピーチなしにはできないが、スピーチはプレゼンスキルがなくてもできるのだ。

 つまり、パブリックスピーキング(人前で話すこと)がうまくなりたいと考える時、あえて、「プレゼンかスピーチか?」という選択を迫られるとしたら(あまりその選択に大きな意味はないかもしれないが)、まず「スピーチ」を選び、その技を磨けば、基礎ができる。そして、その結果、プレゼンも要領よくこなせるようになる、ということになると思う。少なくとも私は、そうすることで少しずつ上達してきた。

 これから人前で話す技を向上させたいと思う人は、まずスピーチができるようになることが先決だ。

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