スピーチ・プレゼンで失敗したことはないだろうか。私にはある。聴衆の前に出たら、頭の中は真っ白。言葉が出てこない。振り返ってみると何をしゃべったか、まるで覚えていない。「あー」とか「うー」だけしか言っていなかったのではないか、と思われるようなダメダメなスピーチだった。
どうしたら、上手くなるのだろうか。柔道や剣道、華道などでもそうだが、まず、習い事には型がある。そこをマスターしてから、自分なりのスタイルが生まれる。いわゆる守・破・離というやつだ。まずは、型を守り、それを破り、そこから離れ、その道をマスターする。つまり、これをスピーチ・プレゼンの世界に当てはめれば、まずはスピーチの良い型を何かが分かれば、それを真似してみるのが早道ではないか?
今回は、そこを探るために、そもそもスピーチとは何かから考え、またプレゼンとの違いを考え、さらに、悪いスピーチ、良いスピーチとはどんなスピーチなのか、を考え進めることにする。少しでも、あなたにとって良いスピーチの型とは何かがイメージできる手助けができれば幸いである。
スピーチ・プレゼンとは何か?
おしゃべりとの違い
ここで、スピーチとは何かを浮き彫りにするために、スピーチと普段のおしゃべりとの違いについて考えてみたい。読者は、すでにお気づきだと思うが、
- おしゃべり: 取り止めもなく、自分の言いたいことを話すこと。
- スピーチ: 何かの目的を持って、構成をつけて、論理的に話すこと。
と言えないだろうか。
では、そのスピーチの目的には、どんなものがあるだろうか。
- 説得したい、告知したい、刺激を与えたい、行動を喚起したい、考えてもらいたい、
などではないだろうか。このように、私たちは、聞き手に何らかの影響を与えたい、そのツールとしてスピーチを用いているのだ。ちなみに、これらのスピーチの目的は、Persuade(説得する)、 Action(行動を喚起する)、Inspire(刺激・啓蒙する)、Notify(告知する)、Think(考える)の頭文字をとって、P.A.I.N.T.と呼ばれている。
スピーチとプレゼンの違い
ここで、さらにスピーチの性格を浮き彫りにするために、スピーチとプレゼンの違いを掘り下げてみよう。実は、その違いは、非常に曖昧であり、この二つの用語は、しばしば混同して使われる。あえて私なりに説明するならば、スピーチはプレゼンの一部であり、それに含まれると言ってもいいと思う。
スピーチ・プレゼンに対する誤解
?「プレゼンは様々な表現手法で、スピーチは話して伝えるだけのもの」
と、違いを定義している人が、ネットを検索すると出てくる。 確かに、結婚式や朝礼などで行われるスピーチは、主に話し言葉に頼っている。時間も短く、3~5分程度が一般的なので、わざわざスライドなどの視覚物はあまり使うことはないのが特徴だ。また、
?プレゼンテーションの場合、スライド資料を投影したり、配布資料を用意したりと様々な視聴覚手段を用いながら説明を行います。対して、スピーチは英語で「話すこと」「演説」を意味する名の通り、基本的に話す言葉のみで聴衆にメッセージを伝えます。
と補足する人もいる。確かに、このように定義してしまえば、話はわかりやすいとは思う。しかし、私に言わせれば、これは、一つの側面を表現しているだけであって、狭義での定義だと思う。実際には、程度の差はあるが、スピーチでもスライドなどを多用することもあるし、動画や資料を用意することもある。だから、このようにせまく決めつけてしまうのは、その性質を包括的に表現できていないのではないか、と感じる。
さらに、
?スピーチが「想い」を伝えるものだとすると、プレゼンは「情報」を伝える目的があります。
と唱える人もいる。これはどうだろうか? スピーチでも、情報のみを伝えるだけのものもあるし、プレゼンにも、その人の想いがなかったら、冷たく機械的な話になってしまい、心が動かされることなく、つまらない話になってしまい、説得力に欠けてしまう。(ちなみに、効果的な説得方法については、別記事をご参照ください)
では、どのように定義するのが、より現実的なのか? もっとわかりやすく理解するために、どんな場合や状況をスピーチ・プレゼンと呼ぶのか、それぞれの事例を思い浮かべてみよう。
スピーチ・プレゼンの定義とは
スピーチ・プレゼンテーションが実際に行われる状況
- スピーチと呼ばれる状況: 政治家の演説、卒業式のスピーチ、モチベーショナルスピーチなど。
- プレゼンテーションと呼ばれる状況: ビジネスプレゼンテーション、学会発表、プロジェクト報告など。
これらの事例からわかることは、
スピーチとは、「自分の体験や体験から得た感想などをエピソードを交えて話すことで聴き手を楽しませるもの」と解釈してもよいだろう。ところが、やはり、そのようになかなか限定できるものではなく、実際には、悲しい知らせを報告することもあるし、エピソードがない、実験データだけのスピーチもあったりする。
一方で、プレゼンとは、上記の事例から定義を試みると、誰かに決定してもらうために情報を提供する、もしくは、判断をくだしてもらうためのもの、である状況が多いのではないかと思われる。
プレゼンでは、具体的な情報を提供し、理解を深めることが主な目的と言えるのではないか。例えば、新製品の紹介、ビジネスプランの説明など。プレゼンは自分のアイデアや考えなどを話して、聴き手を説得する目的で行われるものだと思う。この状況で頻繁に見られる光景としては、スライドで、グラフやチャートを見せたり、写真を見せたり、動画を見せたり、さらに、実際に商品のデモをして実演をしたり、試食したり、手触りを確認したり、また、会場からアンケートを取ったりなどが想像される。
このように、ありとあらゆる手段を講じて、相手にこちらがして欲しいことをしてもらうように誘導・説得する、例えば、買ってもらおう、採用してもらおう、高い評価を得ようとするのがプレゼンだと言えそうだ。
では、これらを総合的にまとめると、
- スピーチ:自分の理論・主張なり、経験なりを中心に情報の伝達を行うこと。ここでは、特定の誰かに決定・判断を促す必要はない。短い時間のものが多い。
- プレゼン:誰かに決定・判断してもらうために、あらゆる手段を使って、具体的な情報を提供し、理解を深めること。長時間を要するものもある。
としてみたら、どうだろうか。
こうしてみると、スピーチとプレゼンの違いは、相手の判断が求められるか、否か。さらに、その手段に程度の差が認められ、スピーチでは、バリエーションはあるものの、話し言葉が中心である傾向が見られる。一方で、プレゼンではあらゆる手段(スライド・アンケートなど)を使う傾向が強い。
だが、これらを除いては、スピーチとプレゼンには、共通点が多く、区別はとても曖昧である。
プレゼンを極めるには、まずスピーチから
スピーチとプレゼンには、冒頭で、スピーチはプレゼンの一部だと述べたのは、この狭義での定義(手段における程度の差)を考えたからだ。スピーチは、限られた手段、主に話し言葉を使うことが多く、それに対しプレゼンは、もっと広く、あらゆる手段を用いる傾向がある。
この点から見た時、プレゼンをするためには、スピーチができなければいけない。だから、この意味において、スピーチはプレゼンに含まれる「真部分集合」と言えるのではないか、と提案したのだ。しかも、スピーチがプレゼンの中のかなりコアな部分だと。
つまり、パブリックスピーキング(人前で話すこと)がうまくなりたいと考える時、あえて、「プレゼンかスピーチか?」という選択を迫られるとしたら、まず「スピーチ」を選び、その技を磨けば、基礎ができる。そして、その結果、プレゼンも要領よくこなせるようになる、ということになると思う。少なくとも私は、そうすることで少しずつ上達してきた。
したがって、この意味から、ここからはプレゼンというよりも、むしろ、スピーチに焦点を当てて、話を進めていくことにする。
良いスピーチの型が習得できれば上達できる
どうしたら、スピーチが上手くなるのだろうか。先にも述べたように、日本での習い事には、多くの場合「型」がある。そこをマスターすることによって、自分なりのスタイルが生まれる。まずは、型を守り、それを破り、そこから離れ、その道をマスターする。つまり、これをスピーチに当てはめるなら、まずはスピーチの良い型を何かが分かれば、それを真似して、繰り返し練習してみるのが、遠回りのように見えて、実は早道だということになる。
自分の中に、良いスピーチの型があり、それに当てはめて、まずは、良いスピーチの真似をする。学ぶとは、真似ることから始まるのだ。そして、それを繰り返して、自分なりのスタイルを作り上げていくことができる。それが、スピーチ・プレゼンで失敗ばかりを繰り返さないコツなのだ。
では、まず、良いスピーチとは何かを考えてみよう。
プレゼンが上手くなりたかったら、まずスピーチをマスターすべきだ。では、そもそもスピーチとは? プレゼンとは何なのだろうか? この記事では、まずはその理解からスタートし、良いスピーチと呼ばれるものの共通点を探る。そして、その良い型をマスターすることで、自分なりのスタイルを創り出していく基礎を作ることに繋げていきたい。
印象に残る優れたスピーチの特徴とは
日本の学校教育では、今まで、スピーチやプレゼンなどはほとんど教えられてこなかった。だから、日本人は、スピーチが苦手、とよく言われるし、そう自認している人も多いと思う。
一方で、海外では、特に私が住むアメリカでは、学校で、プレゼンなどが日常的に授業で取り扱われ、ビジネスの必須スキルとして習得できる環境にある。そのため、スピーチの名手と呼ばれる人たちは、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズやオバマ大統領など、アメリカなどのスピーチ教育が確立された場所で青年時代を過ごしてきた人たちに多い。
これらの上手なスピーカーによるスピーチをインプットして、簡単にイメージできるようにすることが重要だ。まずは、スピーチの良い型を体で覚えるのが第一歩。では、その良いスピーチの型を学ぶために、彼らのスピーチを観察してみよう。幸い、最近では、YouTubeなどでも簡単に見つけることができようになった。ご自分で、研究されるのが一番だが、その手助けとなるために、以下に共通点をあげてみた。
デリバリー面(その場での表現力)
- – 声の抑揚が豊かで、話し方に温かみがあり、自信が感じられる。
- – 重要な言葉を繰り返し、効果的なジェスチャーを使うことで、活気が感じられる。
🔸デリバリーでは、非言語(言葉以外)の手法を使って伝えることも重要なので、それに対する理解は必須だ。
プレゼンが上手くなりたかったら、まずスピーチをマスターすべきだ。では、そもそもスピーチとは? プレゼンとは何なのだろうか? この記事では、まずはその理解からスタートし、良いスピーチと呼ばれるものの共通点を探る。そして、その良い型をマスターすることで、自分なりのスタイルを創り出していく基礎を作ることに繋げていきたい。
内容・構成面
- 聞いていて、描写がより鮮明で、よりイメージが浮かびやすく、より印象に残る
- 実例が多く含まれており、独創性に富んでいる。
- 聞き手の感情に訴えかけてくる一方で、論理的でわかりやすい。
悪いスピーチとは?
結婚式などで、聞いていて面白くないと思うのは、自分の貢献ばかりを話して、肝心の新郎新婦の情報が全くなかったりするパターン。要するに、聴衆が聞きたいと思う情報が入っていない(相手のニーズを無視している)。
以上、ざっと思いつくままに書いてみたが、以下に、もっと総合的にまとめたものを、デリバリー面以外の側面で、まとめてみよう。
(まとめ)良いスピーチの特徴:内容・構成面
- 明確な目的
- – スピーチの目的が明確で、聴衆に何を伝えたいのか、メインメッセージが何かがはっきりしている。
- – P.A.I.N.T.と呼ばれる、Persuade(説得する)、 Action(行動を喚起する)、Inspire(刺激・啓蒙する)、Notify(告知する)、Think(考える)中の、いずれかの具体的なスピーチの目的が設定されている。
- 構成の良さ
- – スピーチは、多くの場合、序論(オープニング)、本論、結論(クロージング)の三部構成で整理されている。
- – 各部分が論理的に繋がり、スムーズに進行する。
- 魅力的なオープニング
- – 聴衆の関心を引くために、興味深いエピソードや質問、引用を使った魅力的な導入部がある。
- – 聴衆のウォンツ(欲望や期待)を刺激するエピソードを使っている。
- 説得力のある内容
- – データや具体例、統計などを用いて、スピーチの主張を裏付けている。
- – 相手の感情を揺さぶったり、倫理観に訴えたり、理路整然とした内容を備えている。
- 相手のニーズ・ウォンツの理解と反映
- 聴衆の興味や必要としている情報を事前にリサーチし、そのニーズに応じた内容を提供する。
- 例えば、ガーデニングに興味がある聴衆に対して、最新の有機農業の技術やトレンドを紹介する。
プレゼンが上手くなりたかったら、まずスピーチをマスターすべきだ。では、そもそもスピーチとは? プレゼンとは何なのだろうか? この記事では、まずはその理解からスタートし、良いスピーチと呼ばれるものの共通点を探る。そして、その良い型をマスターすることで、自分なりのスタイルを創り出していく基礎を作ることに繋げていきたい。
プレゼンが上手くなりたかったら、まずスピーチをマスターすべきだ。では、そもそもスピーチとは? プレゼンとは何なのだろうか? この記事では、まずはその理解からスタートし、良いスピーチと呼ばれるものの共通点を探る。そして、その良い型をマスターすることで、自分なりのスタイルを創り出していく基礎を作ることに繋げていきたい。
悪いスピーチの特徴:内容・構成面
- 目的が不明確:
- – スピーチの目的が曖昧で、聴衆に何を伝えたいのかが不明確。
- – メッセージが多岐に渡ってしまい、伝わりにくく、聴衆が混乱してしまう。
- 構成の不備
- – スピーチの構成が散漫で、論理的な流れがない。
- – 話があちこちに飛び、聴衆がついていけない。
- 退屈・不適切なオープニング
- – 聴衆の関心を引くことなく、単調な導入部。
- – 場を和ませようとトピックとは関係ない冗談を一発かました結果、スベッてしまい、逆に白けてしまった。
- 根拠のなく一貫性のない主張
- – データや具体例が主旨と関連性がなかったり、内容がダブっていたり、証拠が不足しており、説得力に欠ける。
- – 主観的な意見だけで話を進めるため、聴衆が信頼しにくい。
- 相手のニーズ・ウォンツを無視
- 聴衆の興味やニーズを無視し、自分本位の内容を話す。
- 例えば、全く関心のないトピックや、関心が薄いテーマに時間を割く。
🔸相手のニーズ・ウォンツの中には、文化的な背景もある。
プレゼンが上手くなりたかったら、まずスピーチをマスターすべきだ。では、そもそもスピーチとは? プレゼンとは何なのだろうか? この記事では、まずはその理解からスタートし、良いスピーチと呼ばれるものの共通点を探る。そして、その良い型をマスターすることで、自分なりのスタイルを創り出していく基礎を作ることに繋げていきたい。
スピーチは準備に時間をかけ、コツコツと練習をするのが一番の上達の早道
良いスピーチを作るためには、特に強調したいのは、聴衆のニーズやウォンツをしっかりと理解し、それに応じた情報を提供することを忘れがちだ。聞き手中心の態度を崩さないようにしたいものだ。逆に、悪いスピーチは聴衆のニーズを無視し、自分本位の内容を話すことで、聴衆の関心を引けず、メッセージが伝わらない。他にも、上記に挙げた要素を押さえることで、効果的なスピーチが実現できるだろう。
もちろん、一朝一夕でマスターできるほど簡単ではない。スピーチはコミュニケーションスキルの一環であり、継続的な訓練を積むことで着実に向上する。世界の名スピーカーから技術を学び、日々のプレゼンテーションに応用すれば、商談や交渉がスムーズに進むようになり、ビジネスの成果にも結びつくだろう。
🔸スピーチ教室の選び方
プレゼンが上手くなりたかったら、まずスピーチをマスターすべきだ。では、そもそもスピーチとは? プレゼンとは何なのだろうか? この記事では、まずはその理解からスタートし、良いスピーチと呼ばれるものの共通点を探る。そして、その良い型をマスターすることで、自分なりのスタイルを創り出していく基礎を作ることに繋げていきたい。