ユーモアあふれるスピーチは魅力的だ。しかし、ユーモアは使い方を間違えると、人によって、場合によってはそれに敏感に反応して、聞き手が傷ついてしまうことを忘れてはならない。「ジョークだよ!」って、最後に言えば、何を言っても許されるわけではない。すべては相手の解釈次第だ。
ここでは、スピーチにおけるよいユーモア、悪いユーモアについて深く理解し、より人の心に響き、聞き手の嗜好に合わせて適切なスピーチができるために、聴衆についての5つの視点から分析したそれぞれの対策を考えてみよう。
良い冗談と悪い冗談の違い
「冗談でも言っていいことと悪いことがあるでしょ?!」
不快で相手を傷つけてしまう、時に攻撃的な冗談。何がそうさせてしまうのか。これは、発言する人の意図にもよるが、聞く人側の感じ方の違いが原因だ。ある人が面白いと思っても、それを聞いている人はちっとも面白いと感じない。とても主観的な問題なのだ。
要するに、この問題の背景には、いじめやセクハラと共通するものがある。よく言われるように、「何が不快か」を判断するのはそれを受けた人であって、言った人ではないことだ。
道徳的な考えは、国や文化によって違う。同じ国でも地方によっても違う。個人の価値観によっても違う。誰かにとって笑えることは、他の誰かにとっては「不快」と感じることもあるのだ。
例えば、悪気があったわけではなく、ただなんとなく思いついた「面白い」ことをそのまま言ってしまっただけ、ということもある。でも相手は傷ついてしまう。そんなことが日常生活ではよくある。
しかし、スピーチとは準備してするもの。思いつきで話しているのではない。その準備されたスピーチが、誰かを不快にするものなら、それは確実にあなたの信用問題に関わってくる。
トーストマスターズ・インターナショナル創立者ラルフ・スミドレイ博士は
世の中は、魅力的で、清らかな楽しみに溢れているので、無理に泥の中で遊んで笑う必要なんてない。下品な冗談で気分を害する人はいるかもしれないが、洗練された上品、きれいなジョークで気分を害する人はいない。そのことを肝に銘じておいた方がいいだろう。”Humorously Speaking” p8. Advanced Communication Series, Toastmasters International より(筆者訳)
と述べている。
では、この下品と上品な冗談の違いとは、もし、小学生でも分かるように簡単に説明するなら、
人の心を傷つけたり嫌な気持ちにさせる冗談は言ったら悪い冗談。
人を幸せにしたり、楽しくなるような冗談は言ってもよい冗談。
だから、下ネタ、わい談、人種に関わること、宗教に関することなど、いわゆる『微妙な話題』とされるものは避けた方がいいだろう。
スピーチの面白さは、聞き手が決めることだ。だから、相手をよく知り、相手の嗜好に合わせてネタを選ぶようにしよう。さらに、嗜好は相手の年齢、職業、性別、政治的な背景、教育によって変わる。できるだけそれらを調べてからネタを選ぶことで、ユーモアが効果的に相手の心に響くようになる
あなたの聴衆は誰か?
自分がいいと思っても、相手が悪いと思ったらそこで終わり。だから、相手のことをできる範囲で、事前によく調べておくことは重要だ。
話題を選ぶときには、聞いている人が誰かをよくよく考えて、それ相応の対策を事前に練っておかなければならない。次の5つの視点から聴衆を分析しよう。
- 年齢
- 性別
- 職業
- 政治的な背景
- 教育
1、年齢
若い人に対して話すのか。それとも退職した人向けに話すのか。年齢を重ねた大人たちは、大学生とは経験が違うし、面白いと感じることも違うだろう。例えば、退職のお祝いの宴席で起きた面白い出来事を、65歳の人達に話せばウケると思う。でも、10代の若者にはチンプンカンプンかもしれない。
2、性別
あなたの聴衆は、男性が中心だろうか。女性が中心だろうか。ひょっとして、女性だけに偏っているかもしれない。その辺をよく調べてからスピーチに臨もう。例えば、男性のスポーツジムの更衣室で起きたおもしろ体験は、ジム通いしている男性には向いていると思う。しかしおそらく、キャリアを積んだ女性陣には苦々しく思われるかもしれない。
3、職業
ひょっとしたらあなたは、同じ専門職ばかりが集う特定の会合で話す機会があるかもしれない。例えば、弁護士、会計士、営業職などの特定の職種に属する人たちだ。これはある意味チャンスでもある。その人たちが普段よく使う専門用語などを調べ上げて、うまくスピーチに使えば、彼らを楽しませることができる可能性はかなり高くなる。逆に、彼らにとってよく分からない用語を使ってしまうとしらけるので、それは避けるようにしよう。
4、政治的な背景
あなたの話すストーリーが、物議を醸すような話題との深い関連はないだろうか。のっけからそんな話を持ち出してしまうと、一部の人たちを興醒めさせてしまうかもしれない。「こんなこと言って誰かを不快にさせないだろうか」という視点を常に念頭に置いてスピーチを準備しよう。そして、あなたが話そうとするトピックに対するだいたいの聴衆の考え方、思想について、あらかじめ調べておいた方がいいだろう。
5、教育
聴衆の中には、学校を中退した人もいるかもしれないし、大卒の人や博士号を持っている人もいるかもしれない。その人の受けた教育によって、話す言葉の選択や内容に違いがある。おおむね、子供でも分かるようにシンプルに話す方が一般ウケはする。しかし、博士号を持つ人たちで多くを占める聴衆に話す時は、あまりシンプルすぎると、彼らに「バカにするなよ」とムッとされてしまうこともあるだろう。そんな時は、抽象的な内容・表現も取り入れながらのおもしろ話をしてみよう。その方が好ましく聞こえる可能性は高くなる。
聴衆のタイプに合わせてネタを選ぼう
スピーチが面白いか、面白くないかは、聞き手が決めることだ。だったら、相手をよく知る必要がある。その上で話さないと面白いものも面白くなくなってしまう。上記の5つは、それぞれの組み合わせも考えられる。年齢は20代で全員営業職、とか、女性弁護士会での講演など。魅力的なスピーチをするためには、まず相手がどんな人たちかを知り、調べることから始まると思って間違いない。そして、それぞれの聴衆タイプの嗜好に合わせて、ストーリーを選ぶようにしよう。別記事でも述べたように、スピーチは準備の仕方次第で8割が決まってしまうのだ。
スピーチの面白さは、聞き手が決めることだ。だから、相手をよく知り、相手の嗜好に合わせてネタを選ぶようにしよう。さらに、嗜好は相手の年齢、職業、性別、政治的な背景、教育によって変わる。できるだけそれらを調べてからネタを選ぶことで、ユーモアが効果的に相手の心に響くようになる
スピーチの面白さは、聞き手が決めることだ。だから、相手をよく知り、相手の嗜好に合わせてネタを選ぶようにしよう。さらに、嗜好は相手の年齢、職業、性別、政治的な背景、教育によって変わる。できるだけそれらを調べてからネタを選ぶことで、ユーモアが効果的に相手の心に響くようになる