”信元夏代のスピーチ術” 編集長、プロフェッショナルスピーカーの 信元です。
1分間で人を惹きつけ、伝え、動かす。そんなスピーチができたら、あなたの影響力は何倍にもなるでしょう。
でも、短いスピーチは長いスピーチよりも、徹底した「削ぎ落とし」が必要になるので、何を削るか、何を残すか、非常に迷ってしまい、苦手意識を持つ方も多いと思います。
この記事では、私が長年、プロフェッショナルスピーカーとして日米のビジネス現場や講演、プレゼン、スピーチコンテストの現場で磨いてきたブレイクスルー・メソッドを用いて、 【1分間スピーチ】の構成・練習法・注意点を徹底解説します。
“プロならではの”1分スピーチの完成形へ、一緒にステップアップしていきましょう。
この記事の内容
1分間スピーチとは? 〜想定シーンと目的〜
1分間スピーチは、以下のような場面で活用されることが多く見られます:
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朝礼・定例ミーティングでの一言スピーチ
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自己紹介や初対面での第一印象づくり
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SNSでのショート動画やライブ配信
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コンテスト・就活・面接でのスピーチ
- ミーティングでの発言
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そして特に有名なのが「エレベーターピッチ」
目的は、情報伝達ではなく「印象づけ」と「行動喚起」。 つまり、“話した内容”よりも“どう感じてもらったか”、”いかに次につなげるか”が勝負です。
1分ですべての目的ーつまり購買にこぎつけよう、情報を全部伝えよう、などーを達成しようとしてしまうと、1分では収まらなくなり、とりとめのない内容になってしまいます。
特にビジネスにおいては、会議や営業、ネットワーキングの場など、短時間で自分やアイディアを印象付ける力が問われる場面が増えています。 1分で語ることができれば、どんな場面でも応用がきくのです。
「起承転結」は1分スピーチには向いていない!
日本人にとってなじみ深い「起承転結」ですが、1分間という短さでは、
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結論が最後まで出てこない
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転で脱線してしまう
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話が回りくどくなる といった問題が起こり、聞き手が混乱します
これでは 聞き手は待ってくれませんし、途中で離脱されるリスクもあります。
そもそも「起承転結」は、4コマ漫画や文章構成には適していますが、通常のスピーチにおいても、ブレイクスルー・メソッドでは、起承転結は不十分、9段階構造を!とお伝えしています。それについてはこちらの記事でも解説しています:
1分間で人を惹きつけ、伝え、動かす。そんなスピーチができたら、あなたの影響力は何倍にもなるでしょう。 でも苦手意識を持つ方も多いのでは。この記事では、ブレイクスルー・メソッドに基づいて、 【1分間スピーチ】の構成・練習法・注意点を徹底解説します。
英語圏でプレゼンやスピーチの基本とされているのが「PREP法」。 これは、1分スピーチにも最適な構成です。
1分スピーチに使いたい「型」、PREP法とは?
PREPとは、
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P:Point(結論・主張)
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R:Reason(理由)
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E:Example(具体例)
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P:Point(再主張)
の頭文字。
1分という制限の中で、最初に「これから何を話すか」を明示し、具体例で納得感を生み、最後に改めて同じメッセージで締めくくる。 聞き手にとって理解しやすく、記憶にも残りやすい構成です。
PREPは「端的かつ印象的に伝える」ことを目的とした構成なので、1分スピーチにはまさにうってつけです。
特に日本人のスピーチは、最後まで聞かないと結論が分からない、というケースが非常に多く見受けられます。たった1分なのだから、最後に結論が出てきてもさほど長くないからいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、1分しかないからこそ、聞いている方は、「つまりこの人は何を言いたいのか?」に集中して話を聞いています。ですから、PREPを使って、最初からメッセージをしっかり伝え、その後簡潔に論理付けをし、最後にもまたメッセージで締めることで、論理的に、体系的に、印象的に、相手に伝わるように、伝えることができるのです。
PREPを活かすブレイクスルー・メソッドの工夫
PREPの型を使いながらも、「型通り」に、”まずポイントは~その理由は~例えば例として~ですからポイントは~”のように話してしまっては面白みがありません。 そこで、ブレイクスルー・スピーキングでは以下のような工夫を加えています。
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最初のPointに「聞き手主語・聞き手視点のベネフィット」を含める
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例:「プレゼンは、最初の7秒で決まります」→「もし(あなたが)プレゼンを決めたいなら最初の7秒が勝負です」
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Exampleにストーリー性を持たせる
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「以前、私がMBAの面接を行ったとき…」など、映像が浮かぶ表現で。抽象的な説明ではなく、感情や状況が伝わる一言が大切です。
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最後のPointでは、最初の主張を繰り返す
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最初のPointと全く同じフレーズでなくともかまいませんが、メッセージがずれないよう留意しながら、強く言い切ること。話しているうちに、最初のポイントと最後のポイントが微妙にずれてしまった、というケースはあまりにもたくさん見てきました。
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より伝わる1分スピーチを作るための視点
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誰に届けたいのか?(ターゲット)
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何を感じて、どう行動してほしいのか?(ゴール)
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自分の体験・ストーリーはあるか?(パーソナル化)
この3つを意識するだけでも、あなたのスピーチは一気に“自分だけのメッセージ”になります。
1分間スピーチを成功させる練習ステップ
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PREPに沿ってざっくり書く(完璧な文章でなくてOK)
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声に出して読む(読みながら違和感を修正)
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タイムを計る(60秒以内に収まるか)
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録音・録画して客観的に見る
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誰かに聞いてもらいフィードバックを得る
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毎日のルーティンに組み込む(例:朝5分だけスピーチ練習)
NG例とよくある失敗
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「えー」「あのー」が多い → 無音の“間”に置き換える
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例が抽象的 → 数字や固有名詞を加えて具体化
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1分オーバー → 必ず練習して“削る力”を磨く
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「聞いてほしい」だけの自己満足スピーチ → 相手にとっての価値は何か?ー聞き手視点ーを考える
1分スピーチは「短い」けれど「十分に伝えられる」
多くの人は「1分なんて短すぎる」と感じますが、実際には十分にメッセージを届けられる長さです。 TED Talkのような長尺のスピーチよりも、実は1分や90秒の方が難しい。
なぜなら、 “削る”ことでしか、本質は見えてこないからです。
スピーチは、実は“長い方が簡単”。短いほど難しい。だからこそ、日々の練習が欠かせません。
プロのスピーカーでさえ、1分のスピーチを完璧に仕上げるには何度も練習します。 あなたも、“自分だけの1分スピーチ”をストックしておけば、あらゆる場面で“切り札”になります。
実際の1分スピーチ例
PREPという構成を使えば、誰でも1分で話せるようになります。 でも、それだけでは“人を動かす”ことはできません。
そこに、あなたの経験、想い、価値観を乗せてください。それこそが、Breakthrough Speakingの考える「伝える」ではなく「動かす」スピーチです。
次回は、もう少し長く、ストーリーを織り交ぜることが可能な「3分スピーチ」の極意をお届けします。ぜひ、上記の1分スピーチの動画と3分スピーチの動画を是非比べてみてください。