”信元夏代のスピーチ術” 編集長、プロフェッショナルスピーカーの 信元です。
「ストーリーを入れると、聴き手の心に届きやすい」
多くのプレゼンやスピーチにおいて、今や“ストーリーテリング”は常識になりつつあります。
でも、それだけに——
「また始まった、“いい話”系のスピーチだな」
「結局、何が言いたかったの?」
と、聴き手がストーリーに“乗れない”場面が増えているのも事実です。
まず、ストーリーを語る際、明確なワンビッグメッセージ®の下、戦略的ストーリー術6つのCを使いながら、戦略的にストーリーを組み立てていくことが大切、ということは、こちらの記事でも説明しています:
スピーチ・プレゼンにストーリーが大切なことは知っていても、なぜか、「伝わらないストーリー」になってしまう。そんな経験はありませんか?今回はストーリー作りの6つの共通ミスと、それを記憶に残り、行動を促すストーリーに変えるためのヒントをお伝えします。
これを踏まえて、今日は、「伝わらないストーリー」になってしまう6つの共通ミスと、それを記憶に残り、行動を促すストーリーに変えるためのヒントをお伝えします。
この記事の内容
1. 【説明過多】ストーリーの冒頭で情報を盛り込みすぎてしまう
背景をしっかり伝えようとするあまり、説明が長すぎると、聴き手は置いてけぼりになります。
逆に少なすぎても混乱を招きますが、問題の多くは“過剰な説明”。
ありがちなのは、戦略的ストーリー術6つのCのうち、冒頭のCircumstance(状況説明)を必要以上に詳細に行ってしまい、ついつい長くなり、本題に入る前にだれてしまう、というケースです。
💡ポイント
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「自分にとって大事」なエピソードでも、「聴き手にとって必要か?」を基準に削ぎ落とす
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最小限の説明で“物語のスピード”をつくる
- CharacterがConflictに直面する前はどんな状況だったのか、「ビフォア」が端的に描写できればそれでOK!
2. 【時制のミス】過去形ばかりで語ってしまう
ストーリーを「過去形」で語ると、記憶をたどる語りになりがちで、感情が平坦になってしまいます。
🗣おすすめは現在形で話すこと。
ストーリーを語る最大の醍醐味は、聞き手に疑似体験をさせることです。そのためには現在形で「その瞬間に起きていること」として語ることで、自分自身も当時の感情に入り込みやすくなり、聴き手も「いままさに、その場にいる感覚」を味わえます。
3. 【気づきのネタバレ】感情のクライマックス前に“学び”を言ってしまう
よくあるのが、
「そのとき私は気づいたんです…」
「その瞬間、私は学びました」
という“ナレーター視点の回想”になってしまうパターン。
でも、聴き手はまだその気づきを“一緒に体験していないんです。
戦略的ストーリー術6つのCでは、何かを学ぶ、気づく、きっかけとなる出来事はCureの部分ですが、その時は、気づきや学びを言語化できるところまではまだ行っていません。Cureの結果Changeが起こり、ようやく、気づきや学びが起こります。そしてその学びをしっかり言語化として伝えるのが、最後のCarryoutにあたります。
🎭学びは“演じる”こと
解説せずに、“気づきの瞬間”をセリフや沈黙で表現し、「今まさに、その気づきが起きている」ように見せましょう。でも大切なメッセージそのものはぜひ出し惜しみしてください(笑)。
4. 【緊張感の欠如】ストーリーの“リスク”が低すぎる
ストーリーに欠かせないのは、「葛藤」や「ステークス(代償)」。つまり、戦略的ストーリー術6つのCのConflict、の部分です。
「何が失われるかもしれないのか」——その“賭けているもの”が不明確だと、聴き手の没入感が下がります。
🔍ストーリーを作る際、まずは自身に問いかけてみましょう:
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何がかかっている?
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何を失うかもしれない?
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何を得ようとしている?
この「ステークス(代償)」がはっきりすることで、物語の緊張感が生まれ、聴き手の共感が高まります。
5. 【人間味不足】“普通の人”として描けていない
人は、完璧なヒーローよりも、少し不器用な等身大の存在に共感します。
ストーリーの中に、
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不安
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失敗
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勘違い
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焦り
といった、誰もが感じたことのある感情を織り込みましょう。
👟感覚に訴える表現(例:汗がにじむ、足がすくむ)を使うと、聴き手は“自分ごと”として感じられます。
6. 【“お宝”を飛ばしてしまう】一番面白い部分をすっ飛ばしている
話し慣れているエピソードほど、「あの辺はさらっと」で済ませてしまいがち。
でも、実はそこに**“金鉱のようなディテール”**が眠っているかもしれません。
👂他人に話してみて、「それってどういうこと?」と聞かれた部分を丁寧に掘り下げてみましょう。
あなたが何気なく流していた描写が、聞き手にとっては感情が揺さぶられるパートかもしれません。
練習こそ、最強の“磨き上げ”の場
これら6つの「ストーリーテリングの落とし穴」を避ける一番の方法は、リハーサルとフィードバックです。
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現在形で語ってみる
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学びを“語らず”に表現する
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どこで聴き手が反応するか観察する
など、グループリハーサルやコーチとの練習の中で実験することで、ストーリーは“良い話”から“忘れられない体験”へと進化します。
ストーリーは“届ける技術”で生まれ変わる
伝えたい想いがあるなら、なおさら。
伝わるように伝える方法を磨くことで、その想いは届く言葉に変わります。
あなたのストーリーが、
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心を動かし、
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行動を起こさせ、
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誰かの未来を照らす——
そんなストーリーになるよう、ぜひ今回の6つのヒントを活用してみてください。