意思決定力を高める6つの方法

ロシアが戦争を起こしたり、コロナが蔓延したりと、最近は「先行きが不透明で将来の予測が困難な状態」であり、VUCA時代とも呼ばれる。そんな時代の中にあって、ビジネスシーンにおいて、高いマネジメント能力は、ますますスキルアップを求められている。中でも意思決定スキルは、こんな先の読めない時代には重要になってくる。

そこで、今回は、意思決定力とは何か、それを高めるにはどうすれば良いかについて解説したい。

マネジメントに必要なスキル

そもそも、マネジメントに必要なスキルとは何だろうか。

  1.  コミュニケーションスキル、
  2.  リーダーシップスキル、
  3.  意思決定スキル、
  4.  委任スキル、
  5.  時間管理、
  6.  もめごと解決、
  7.  パフォーマンス管理、
  8.  変化対応管理、
  9.  戦略的思考、
  10.  共感能力

がある。

 中でも、意思決定スキルは、マネージャーにとって非常に重要なスキルの一つ。組織内で様々な局面で難しい決定をする必要があり、その結果がチームや組織の成果に影響を及ぼすことが多いためだ。意思決定スキルを向上させることは、効果的なリーダーシップと成功するマネジメントに欠かせない要素となる。(マネジメント全体についてはこちらの記事を参照されたい)

意思決定力とは?

 意思決定力とは、特定の状況や問題に対して、責任を持って選択肢を検討し、最適な選択を行う能力のことを指す。これは個人や組織が日常的に直面するさまざまな決定に関わる重要なスキルだ。意思決定力を持つ人は、情報を収集し分析し、その情報をもとに未来の結果を予測して、最良の選択をすることができる。決断する際の根拠には、客観的データに加えて、本人の経験や直感といった主観的な要素まで含まれる。そのため、選択肢が多かったり、大きなリスクを伴うほど、迷いが生じやすくなる。だから、決断には、覚悟と勇気、責任が求められる。

判断力との違い

判断力

 判断力は、与えられた情報や状況を評価し、それに基づいて選択肢のメリットやデメリットを理解する能力のこと。判断力は客観的データや論理を用いるが、したがって、判断力による結論は誰もが同じになるという再現性がある。

 判断力のある人は、情報を客観的に分析し、選択肢の長期的な結果や影響を予測する能力がある。判断力はより深い分析や長期的な視点が求められる状況で重要であり、情報の評価や選択肢の影響を理解する点が特徴だ。

意思決定力

 一方で、意思決定力は、複数の選択肢の中から1つを選び、実際の行動に移す能力を指す。意思決定力のある人は、選択肢を検討し、その中から最適なものを選んで迅速かつ自信を持って行動する。意思決定力には主観的な要素も根拠とする点が異なる。その人にしか出せない結論でもあり、決断する人によっては結果が異なる場合も多い。

 簡潔に言えば、意思決定力は行動への移行力を指し、判断力は情報の評価や選択肢の分析力を指す。両者は意思決定プロセスの異なる段階で発揮されるスキルであり、バランスを取りながら使うことで、より効果的な意思決定が可能となる。

意思決定力が求められる背景とは

1 先の読めない時代の羅針盤

 現代は、今までの価値観では判断できない時代と呼ばれ、常に新しく生まれ変わっている変遷の時代だ。こんな情勢の中でビジネスを発展させていくためには、将来の方向性やビジョンを明確にし、組織全体に浸透させ、全員で実行させていく必要がある。 この際に指針となるのは、リーダーによる意思決定力だ。 チームがリーダーの決断を尊重し、信頼するためには、遅れたりためらったりすることなく、迅速で適切な決定が求められる。

2 変化・競争が激しい場面での拠り所

   ビジネスや日常生活において、急な状況変化や緊急事態が発生することがある。また、 競争の激しいビジネス環境では、選択肢を早く評価し、競合他社よりも先に新しい戦略やアイデアを実行することが成功の鍵となる。このような場面では迅速な意思決定が求められ、適切なアクションを選択し実行する能力が必要であり、市場での優位性を確保できる可能性が高まる。

3 チャンスの喪失を防ぐため

   有望な機会やアイデアが現れた際に、迅速に行動しなければ逃してしまうことがある。適切な決断を下し、早期に行動することで、成功へのチャンスを最大限に活かすことができる。

4 効率的な問題解決

   問題解決においても、適切な決断は重要。問題が放置されると、それが他の分野に波及して、返って問題が複雑化してしまうことがある。早期に適切な対応を取ることで、問題を効率的に解決できる。

これらの背景・理由から、意思決定力が求められている。迅速で適切な意思決定を下すことは、個人や組織の成功において重要な要素になる。

意思決定能力が備わっている人の特徴

あなたには意思決定力がある方だとお思いか? それともない方だとお思いだろうか? ない方だと思っている方でも落胆する必要はない。それは訓練で養うことができる。それを解説する前に、意思決定力がある人は、どんな具体的な資質が必要かをまず見てみよう。

1. 自身の判断基準を持っている

   意思決定力のある人々は、自身の判断基準やビジョンを持っていることが特徴だ。情報が完璧に揃わない場面でも、現状の情報を元に独自の基準で決断し、その結果に責任を持つことができる。

2. 明確なビジョン・目標を持ち、優先順位を決められる

   目標や優先順位が明確な人ほど、決断力を発揮しやすい。曖昧な目標では正しい意思決定は難しいだろう。さらに、目標や戦略に基づいて、重要な課題と細かな詳細を区別・整理することができ、選択肢の優先順位を明確に設定できる。その結果、確かな判断を下すことができるのだ。

3. 正確で即時かつじっくりと決断できる

   意思決定力が高い人は、状況に応じて即座に判断することも、じっくり検討してから決断することもできる。また、周囲の状況を把握しつつ的確に行動できる。頭の回転が早い人とも言える。

 適切なタイミングで決断を下すために、情報の収集と分析に過度に時間をかけず、タイムリーな行動を取れる。また、複雑な情報や状況を分析し、本質的なポイントを見極められ、重要な情報を素早く見抜くことができる。また、データや情報を客観的に評価し、深い理解を持って意思決定に反映することができる。ちなみに、頭の回転は訓練すればいくらでも早くなれる。

4. 柔軟な適応ができる

   迅速な決断を下す一方で、状況が刻々と変わる際にも柔軟に対応できる。過去の決断に固執せず、新たな情報を組み入れながら、変化に臨機応変に対応し、適切な修正を行うことができる。さらに、外部環境や内部状況に対する感受性が高く、それに基づいて意思決定を行うことができる。一つの考え方に囚われてしまう人、頑固な人はこういう対応が難しい。

5. 勇気と自信がある

   勇気と自信が最初からある人など誰もいない。勇気と自信があるように見える人は、多くの失敗を経験した人たちだ。それ故、失敗は一時的な通過点であり、そこから学ぶことを知っている。だから、失敗を必要以上に恐れることがない。ワクワクしながら、挑戦的な態度で行動することができる。成功と失敗のリスクを受け入れ、自信と勇気をを持って進むことができる。

  •  過去の成功や失敗から得た教訓を活かし、次の意思決定に反映させられる。
  •  自分の意思決定に対して責任を持ち、その結果を受け入れる用意がある。
  •  ポジティブな結果だけでなく、失敗にも立ち向かい、学びと成長に繋げられる。

これらの特徴が組み合わさることで、意思決定力のある人は複雑な状況でも自信を持って適切な判断を下し、結果を導くことができるのだと思う。

意思決定スキルを向上させる6つの方法

意思決定スキルには、以下の側面を含んでいる。それぞれについて、どうしたらその力を強化できるか、一つひとつ見ていこう。

1 情報収集と分析力

 事実に基づいて、意思決定をする時に、その事実をどう解釈するのかは決断に大きく影響する。事実は、視点を変えると全く違った景色が見えてくる。リーダー・マネージャーは、適切な情報を収集し、それを分析することで、正確な判断を下す基盤を築く必要がある。情報収集のプロセスは、選択肢を理解し、それらの影響やリスクを評価するのに役立つ。

そのための方法:

  •    信頼性のある情報源を確保し、主観的な情報と客観的な情報をバランスよく収集することを心がける。
  •    分析ツールやデータベースを活用して、情報を体系的に整理し、傾向やパターンを把握する練習を普段から心がける

分析力を鍛えるには?

 シミュレーションやロールプレイ: 様々なシミュレーションやロールプレイを通じて、リアルな意思決定の状況を体験し、どのような選択が最適であるかを考えることができる。これにより、リスクを取ることなく経験を積める。

2 選択肢の評価 

 現状を分析し、上がってきた選択肢が本当にそれで良いのか評価する必要がある。リーダー・マネージャーは、利用可能な選択肢を検討し、それぞれの選択肢の長所と短所を評価する能力が求められる。それによって、最適な選択肢を選ぶ際の根拠を明確にすることができる。

そのための方法

  •    意思決定ツリーSWOT分析Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threats)を使用して、各選択肢の利点と欠点を洗い出す。
  •    複数の視点や専門知識を組み合わせて、総合的な視野で選択肢を評価する。
  •    複雑な問題に対しては、ブレインストーミングやディベートなどの方法を活用して、多角的な意見を収集する。

3. リスク評価

 意思決定には、リスクがつきものだ。リーダー・マネージャーは、各選択肢のリスクを評価し、可能なリスクを最小限に抑える方法を考える必要がある。リスク評価に基づいて、どの選択肢が最も確実であるかを判断することが求められる。

そのための方法

  •  リスクの発生確率と影響度を評価し、リスクマトリックスを使用して優先順位をつける。
  •   シナリオ分析を行い、異なる状況下でのリスクとリターンを検討する。
  •   リスクヘッジング戦略やバックアッププランを用意して、最悪の場合に備える。

4. 優先順位の設定

 複数の選択肢がある場合、リーダー・マネージャーはそれらを優先順位に従って整理する必要がある。どの選択肢が最も重要で、組織やチームの目標に最も合致するかを判断、決定する。

そのための方法:

  •    目標と戦略に基づいて、選択肢の優先順位を設定。
  •    アイスバーグ原則を意識し、表面的な問題だけでなく、根本的な課題に目を向ける。
  •    短期的な利益だけでなく、中長期的なビジョンや戦略に合致する選択肢を選ぶ。

5. 迅速な判断

 時には迅速な判断が必要な場面もある。リーダー・マネージャーは、情報収集と分析を適切に行いながらも、状況に応じてスピーディな決断を下す能力を持つ必要がある。

そのための方法:

  •    タイムリーな意思決定を下すために、情報収集と分析のスピードを向上させる。
  •    類似の過去の状況に基づいて、迅速な判断を下すための指針やガイドラインを作成しておく。
  •    判断を先送りにしないよう、重要な情報と適切な判断基準を考え、それらを優先的に取り組む。

迅速な判断を鍛えるには?

 ケーススタディの分析: 実際のビジネスケースを分析し、過去の意思決定事例から学ぶ。他の組織や個人がどのように意思決定を行い、その結果がどのように影響したかを理解しておくといざと言うと時に役立つ。

6. コミュニケーション

 意思決定の過程と結果を関係者に適切に伝えることも重要だ。チームや関係者が決定の理由や根拠を理解し、共感できるようにすることで、組織が決定を受け入れやすいように配慮することもリーダー・マネージャーの役割だ。

そのための方法

  •    意思決定のプロセスや結果を関係者に分かりやすく説明し、共感を得るためのコミュニケーションスキルを向上させる。
  •    意思決定に関するフィードバックを受け入れ、チームや関係者との対話を通じて異なる視点を尊重する。
  •    意思決定に関する情報を、場合によってはクラウドの掲示板などに掲載するなど、適切な形式で共有し、関係者の理解を深める。
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いろんな世代が集まるミーティング

迷うこと

迷わない人など誰もいない。人はみんな迷っている

 っている時は、まだ時期尚早なのだ、と解釈する説があり、私はそれに賛成だ。決断とは自然に決まるものであり、「もうそれしかない」という時が必ず来るので、それまで待つのが上策だと、今までの人生経験から思う。このやり方だと、ある時は、次々と決断を下したかと思うと、ある時は、全く動かない時もある、という風に人の目には映る。

 しかし、それで他の人が全て納得するかは別問題だ。時には優柔不断だと非難されるかもしれない。だから、根拠などを周りの人に分かりやすく説明するためにも、そして自分自身が納得したり、決断の時を気持ちよく迎えるためにも、情報の分析や選択肢の評価が必要になるし、リスク評価も必要になるし、優先順位の決定が必要になる。

そして、コミュニケーションはとても重要だ。リーダーの決断に対して、多くの賛同が得られなければ、組織は分裂してしまう。

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意思決定力・コミュニケーション力を鍛えるには?

1 専門的なトレーニングやセミナー:

   “意思決定力を高めるセミナー戦略的意思決定のためのワークショップなど、意思決定スキルを強化するための専門的なセミナーやトレーニングが存在する。CourseraUdemyなどのオンラインプラットフォームや、各種スピーチ教室でもコミュニケーション力をアップさせることができる。

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2 メンターやコーチのアドバイス:

 実践的な指導を受けるには、経験豊富なメンターやコーチにアドバイスを求めることが一番だと思う。彼らからのフィードバックやアドバイスは、意思決定スキルの向上に大きな助けとなるだろう。

 意思決定スキルを向上させるためには、経験を積むことや過去の意思決定の振り返りを行うことが役立つ。また、他の経験豊富な同僚やアドバイザーからのフィードバックを受けることも重要だ。意思決定は常に完璧ではないかもしれないが、適切な情報と分析、そして前向きな姿勢を持つことで、成功に近づけることができるだろう。

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