「講演家」では届かない場所へ─まだ日本に根づいていない職業、“プロフェッショナルスピーカー”という生き方とは

「信元夏代のスピーチ術」編集長 信元です。

私が世界で初めて、日本人としてCSP®(Certified Speaking Professional)に認定されてから、1年が経ちました。

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私が世界で初めて、日本人としてCSP®(Certified Speaking Professional)に認定されてから、1年が経ちました。 最近、”プロフェッショナルスピーカー”ってどういう職業ですか?と尋ねられることも多くなりました。 そもそもプロフェッショナルスピーカーとは?講演家とはどう違うの?そしてCSP®とは?分かりやすく解説します。

2025年度は新たに33名のCSPが認定されましたが、その中にやはり日本人はおらず、アジア人も、アジア人ハーフの方が1人いるのみ。

このグローバルなプロフェッショナルスピーカー業界における“アジア人比率”の低さに、私は危機感を感じています。

そもそも世界的にスピーキング業界で認知されている”プロフェッショナルスピーカー”という職業が日本では十分に認知されていないようです。

「講演家」と「プロフェッショナルスピーカー」は、何が違うのか?

日本では”講演家”といえば比較的イメージが湧きやすいですが、世界基準での“プロフェッショナルスピーカー”はそれ以上を意味します。中でもCSP®の称号を持つプロフェッショナルスピーカーは、世界に400人しかいませんから、なおさら特別な存在として認知されています。

”講演家”と“プロフェッショナルスピーカー”はどう違うのでしょうか?そして、”CSP®(Certified Speaking Professional)”とは?
下記のように私なりに定義してみました。

講演家

講演家とは、専門的な知識や経験をもとに、特定のテーマについて情報や考察を分かりやすく伝える話し手です。社会的・ビジネス的な課題に対して、自身の知見や視点を提示し、聴衆に新たな学びや発見を促すことが主な目的です。講義に近い形式での伝達が多く、論理的な説明や事例紹介を通じて、知識の共有など、「内容」を重視します。

プロフェッショナルスピーカー

プロフェッショナルスピーカーとは、専門分野における深い知見をもとに、聴衆の学びを促進し、行動や意識の変革を生み出すプロフェッショナルであると同時に、高度なプレゼンテーション技術とストーリーテリング力を駆使し、言葉だけでなく「声」「動き」「空気感」といったあらゆる要素で心を揺さぶるパフォーマーでもあります。単なる“エキスパート”にとどまらず、聴衆の未来を照らす“ビジョナリー”として、深いインパクトと持続的な変化をもたらす存在です。

私自身がプロフェッショナルスピーカーとして常に意識していることがあります。

それは、観客に、「考えさせ」「行動させ」「笑って楽しませ」「学ばせる」パフォーマーである、ということです。

私はこの4つの要素をTALLと呼んでいます。

Think(考えさせ)

Act(行動を促し)

Laugh(笑いを生み)

Learn(学びに変える)

このTALLを実現するには、単に言葉を伝えるだけでなく、“舞台芸術的なパフォーマンス&ムーブメントスキル”も不可欠です。つまり、プロフェッショナルスピーカーとは、「講演家のスキルを内包しつつ、人を魅了し動かすステージパフォーマー」でもあるのです。

いうならば、「ビジネス上の特定分野のプロ」x「聴衆を変容させる、スピーキングのプロ」x「ステージパフォーマンスのプロ」という、「3つのプロフェッショナル」を掛け合わせた3種の神器を持つ人物が、プロフェッショナルスピーカー、と言えるでしょうか。

さらに”CSP®”は、このようなプロフェッショナルスピーカーのトップ7%のエリート層の事を指します。

CSP®(Certified Speaking Professional)

”CSP®”は、プロフェッショナルスピーカーの中でも、世界的に認められた最高水準の資格を持つスピーカーに与えられる称号です。これは、単に話す力だけでなく、圧倒的なステージパフォーマンス(Stage Craft)の秀逸さに加え、ビジネスプロフェッショナルとしての倫理観、運営能力(Organizational Skill)、自己管理力(Discipline)、持続可能なビジネスモデル(Sustainable Business Model)といった高い基準を満たす者にのみ与えられます。

”CSP®”は、厳格な審査基準をクリアし、4ラウンドにわたる審査を経て合格した者だけに与えられる称号です。継続的に高品質な講演活動を提供してきた実績を持ち、クライアントからの高い評価を維持している必要があります。つまり、”CSP®”は「話す力」と「ビジネス力」の両輪を兼ね備えた、国際的に信頼される“真のプロフェッショナルスピーカー”と言える存在です。

なぜ日本では“プロスピーカー”が育ってこなかったのか?

私自身がこの道を歩んできた中で、日本にプロフェッショナルスピーカーが育たない理由には、いくつかの構造的な要因があると感じています。

  1. 職業としての認知不足

    ”プロフェッショナルスピーカー”と言っても、「それはどんな仕事?」と尋ねられるのが現状です。講演家や研修講師とは違い、「3種の神器」を持ち合わせた仕事として、明確に定義されていません。アメリカでも、講演家とプロフェッショナルスピーカーの境界線は明確ではないものの、”プロフェッショナルスピーカー”は職業として広く認知されています。

  2. 技術的な育成環境の欠如

    話し方やプレゼンの講座は多数ありますが、プロフェッショナルスピーカーを養成する学校は、日本には皆無と言えるでしょう。一方、私は、すでにプロフェッショナルスピーカーとしてある程度確立している人だけが入学できる、Heroic Public Speakingで研鑽を積み、現在でも毎週、その仲間たちとリハーサルやスピーキング・ビジネスについての対話を行っています。

  3. 文化的背景

    “自分を前に出すこと”へのためらい、“個人のメッセージを売る”ことへの抵抗感。これらは、日本の文化的背景と無関係ではないかもしれません。

 

もし、もっと日本にプロフェッショナルスピーカーが増えたら…

私は、日本に“プロフェッショナルスピーカー”がいないとは思っていません。

でも、それを「職業」として認識し、「目指そう」とする文化が、まだ根づいていないだけで、”プロフェッショナルスピーカー”はどこかに眠っていると信じています。

聴衆を動かす力を持ったスピーカーが、舞台上から世界にメッセージを発信していく。

言語や文化を超えた影響力が、スピーチという形で世界に届けられる。

それは、教育でもビジネスでも、社会変革でも、確かなエネルギーになります。

私は、自分が“最初のひとり”の”CSP®”であったことを誇りに思いながら、同時に、「次は誰かが続いてくれる」ことを、心から願っています。

そして願わくば、日本からもっと多くの”CSP®”が生まれ、世界で活躍する“プロフェッショナルスピーカー”という生き方が、もっと多くの人の選択肢になる日が来ることを願っています。

“プロフェッショナルスピーカー”に少しでも興味を持ってくださった方、あるいは、プロフェッショナルスピーカーになるべきお知り合いがいらっしゃる方、自薦他薦は問いませんので、是非信元にお声がけください!次の日本人の”CSP®”の誕生を応援します。

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