今やアメリカでプロフェッショナルスピーカーとして活動している私でも、最初から人前でスピーチするのが得意だったわけではありません。昔は人前で自己紹介するだけで緊張して脇汗をかいていました。
忘れもしない、MBAでニューヨーク大学に留学していた時のこと、みんなの前に立ち、自己紹介をする機会があったのです。
自分の順番が来るまで手汗脇汗をかいて緊張していたのですが、いざ自分の番がまわってきたとたん、いきなり考えていたこととは違うことが口から出てしまい、まずいと思った瞬間に固まってしまったのです。頭が真っ白になって、なにをいったかも覚えていません。
たかが自己紹介に頭が真っ白になってしまう自分……。と、あとで強烈な自己嫌悪に陥りました。
その後もスピーチは苦手になるばかり。チームでプレゼンがしなくてはいけない時でも、一番短い箇所を担当して、丸暗記したセリフを喋るだけで、早く終わってくれることを願っていたものでした。
それが今では、プロフェッショナルスピーカー、そして、ニューヨーク州のスピーチコンテスト決勝戦で準優勝するまでに成長しました。
英語スピーチの上達を目指す方が
最初に知っておくべきこと
それは英語力を鍛えたからではありません。私がこれまで師事してきたすべてのコーチが口を酸っぱくして強調したこと。
それは、たったひとつの大事なメッセージに絞り込むこと。
余計な言葉を徹底的に削ぎ落とすことで、いかに伝わりやすくなるか。そして具体的に表現することで、たった5分間でもいかにドラマチックに相手を動かせるか。ここで学んだことは、英語力を鍛えるのではなく、すべての「伝える」技術に不可欠な思考法を鍛えること、でした。
マッキンゼーでも鍛え上げ、戦略コンサルタントとしても日常的に使っているロジカルシンキングが、プレゼンやスピーチを作るまでの情報整理術に非常に役立つことに気づいたのです。そうして「伝えたいことを、どんな相手にも伝える」方法を、日本の方たちに向けて編み出したのが、「20字にメッセージのエッセンスを凝縮する」ブレイクスルー・メソッドです。まさに究極の削ぎ落す思考法ともいえるでしょう。
この「20字に削ぎ落とす」思考法こそが、英語であれ、日本語であれ、言語に関係なく、すべてのスピーチを上達させる秘訣なのです。
ニューヨーク大学でのMBA取得で留学中、自己紹介で頭が真っ白になっていた私が、ニューヨーク州のスピーチコンテスト決勝戦で準優勝するまでに成長したのは英語力を鍛えたからではなくマッキンゼー・経営コンサルタントで使う、思考法を鍛えることだった。