「信元夏代のスピーチ術」編集長 信元です。
普段、Zoomなどを使ったオンラインプレゼンに慣れていないと、何かとやりにくい印象をお持ちかもしれません。
でも、オンラインプレゼンには、たくさんの利点もあります。
オンラインプレゼンの利点
私は普段ニューヨークに在住しており、夏は日本にいるはずでした。でもコロナで移動ができなくなってしまい、講演の機会をたくさん失ってしまう…と不安に思っていたのですが、それもコロナ初期のみのつかの間。実はオンラインによるセミナーや、研修、講演会のご依頼が以前よりも増えています。オンラインならば、時差のある遠隔地からでもつなぐことができるだけでなく、通常なら渡航費、宿泊費、会場費…諸々の費用がかかるところ、それらの費用は一切かからず低コストでイベントが開催できます。更に、研修などの場合は効果を考えて人数制限しますが、講演会の場合は人数の上限なく、500人規模のイベントなども気軽に開催できます。これが対面のライブイベントなら、500人収容できる会場を手配しなければならず、おおごとになってしまいますが、オンラインイベントならその心配もありません。
先週にはインドの団体に向けて基調講演を行いました。オンラインだからこそ実現した基調講演です。
実は、これだけではなく、オンラインプレゼンだからこそクリエイティブに演出できる技があるのです。
スライドに頼らずに印象づける小技とは…?
私がアメリカ市場向けに行っている基調講演では、異文化コミュニケーションという専門分野について話をすることが多いのですが、その際、「異文化」とは、国と国との違いだけではないのだ、という点を、基調講演の冒頭で必ず強調します。つまり、「異文化とは多層になっているもの」である、なぜなら、人それぞれ、これまで育ってきた環境や家族関係、友人関係、学校や職場など、様々な環境に影響されて、その人ならではのユニークな「文化」が出来上がるもの、だから、ひとりひとりの価値観の違いという多様性まで掘り下げていくことが大切なのだ、というメッセージです。
このメッセージを効果的に印象付けるため、これまで私はスライドを使い、たまねぎのように何層にもなった図を見せて説明をしていました。
もちろん、たまねぎの図でも十分印象に残ります。
常々ブレイクスルーメソッドを通してクライアントの皆さんにもお伝えしているのですが、プレゼンの前面に立たせるべきはスライドではなくスピーカーであり、スライドはあくまでスピーカーが語るメッセージの引き立て役に過ぎません。ですから、私が基調講演で使うスライドも、極力1枚に乗せる情報は、視覚的に印象に残りやすい図や画像、キーワードのみなどにしており、枚数も減らして、スライドを見せないで語る個所を多数作っています。
でも、パンデミックが始まり、基調講演もZoomで行うようになってから、新た強い方法を試してみました。
そしてそれはオンラインプレゼンだからこそ、ライブイベントよりも効果的に演出ができる、ということが分かりました。
ライブイベントよりも効果的に演出できる〇〇
それは、小道具遣いです。
上述の、「異文化とは多層になっているものだ」、というメッセージを、どうクリエイティブに視覚的にも伝えられるか、を考えた時、思いついたのが、メガネでした。
私たちは、多層に重なる環境から、自分自身の「常識」を作り上げていきます。でも「異文化環境」では、自分の常識は相手の非常識かもしれません。自分のあたりまえ、は、相手のあたりまえ、ではないのです。
日本語でも、「色眼鏡」などと表現することがあるように、このような、「自分のあたりまえ」は、メガネが何層にも重なってしまって出来上がってしまったもの、というイメージが私の頭の中に浮かびました。何層にも重なったメガネを他人が見たら、おかしな風貌に見えますよね?
正に伝えたいポイントに合致している「絵」だと考えました。
そこで、とあるZoomの基調講演で、4つのメガねを使って表現してみました。
「私たちの価値観、常識は、色々な環境や関係に影響されて積み重なってきたものです。例えば、家族(1層目の黒メガネ)、友達(2層目の白メガネ)、学校(3層目の赤メガネ)、職場(4層目のピンクメガネ)…そして、これ(4層重なったメガネを指して)、が、私たちの常識になっているのです。」
このような演出は、視覚的にもインパクトがあるだけではなく、ユーモアもある演出のため、笑いも起こり、強烈な印象となって聞き手の脳裏に焼き付きます。
ではなぜこれが「オンラインならでは」なのでしょうか?
ブラインドスポットを逆手にとる
もし、これがライブイベントで、舞台上で行う基調講演だったとしましょう。
4つのメガネという小道具、ひとつひとつは小さいですが、ジャケットの内ポケットに忍ばせようと思うと、かさばってしまって、いかにも何かを隠している、という風貌になってしまいます。手品師が使う、隠しポケットがついているジャケットを着る、という手もあるかもしれませんが、プロフェッショナルに見えるデザインでかつ手品に使えるジャケット…私は見たことがありません(苦笑)。また、小道具は、メッセージに合わせてテンポよく出さないといけませんから、すぐに手に届く位置に置いておく必要があります。でもそうすると、小さなデスクなどを用意しておかなければいけないわけですが、そうすると、小道具が最初から見えてしまいます。風呂敷か何かをかぶせて隠しておいたとしても、「そこに何かがある」と思うと、聞き手はそちらに気が行ってしまいます。
種明かしをしてしまった手品を見るほどつまらないものはないですよね。プレゼンでも、聞き手をエンターテイメントするために、サプライズな演出や工夫が必要です。
オンラインプレゼンでは、見えない部分、つまり、ブラインドスポットがたくさんあります。
そのブラインドスポットこそが、小道具を隠してける場所なのです。
そしてどんな大きい小道具でも、どんな沢山の小道具でも、オンラインプレゼンなら、いくらでも隠しておくことができます。
この写真のプレゼンでは、私は競技ラテンダンスの衣装も隠しておきました。
私は競技ラテンダンスの選手もやっているため、冒頭で司会者に紹介を受けた際にこの衣装を出したのですが、不意に画面にきらびやかな衣装が出てくるとはだれも想像していませんでしたから、「Wow!」の声が上がりました。
皆さんも、パワポだけではなく、オンラインプレゼンだからこそ、どんなサプライズができるか、かつ、自分らしい、ユニークな演出ができるか、是非、楽しみながら考えてみてください。