意外性で笑いのセンスを磨く。ユーモアのあるスピーチをつくる6つの要素と具体例

スピーチにユーモアを取り入れるには、どうすればよいか? 笑いとは、なかなか頭で考えて作れるものではない。考えれば考えるほどドツボにハマって、話が面白くなくなったというご経験はないだろうか。もしくは、自分自身の感覚が麻痺してしまって面白いと感じなくなり、笑ってもらえる自信がなくなってしまったり。だから、自分が面白いと思った場面をひたすら記録、メモするのが妥当なのだ。しかし、笑いが起きた場面をよくよく観察すると「何が面白くさせているのか」が見えてくる。

 今回は、ユーモアをつくる要素について解説し、客観的に自分のストーリーを眺める視点を学び、聞き手に笑ってもらえる確率をあげる方法をお伝えしたい。

メルビン・へリッツァーが教える6つの笑いの要素

 笑いを客観的に観察するのに、一番いいのは、笑いが起きた場面で、すぐにメモっておくこと。つまりネタ帳を作ることだ。そして、たくさんあるネタの中から、あなたのプレゼンの内容に合わせて、ピッタリなものを採用するのが正解だ。そして、それらのストーリーの面白さの共通点は何かを探ると、「笑いはなぜ起きるか」が浮き彫りになってくる。

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ネタはどこにあるかを探す

 ユーモア溢れたストーリーにはいくつかの必要要素があるものだ。オハイオ大学の教授でもあった故メルビン・へリッツァー氏の著書「Comedy Writing Secretsの中で述べられているのは次の6つだ。

1、ターゲット 

 どんな話にも、何らかの笑いの対象がある。そして、それらがちょっとコケにされたり、イジられたりしている。対象物は、人であったり、アイディア、モノだったりする。

2、隠された敵意

 その対象を、微妙に批判したり、またはあからさまに揶揄ったり、面白がったりするところからユーモアが生まれることは多い。

3、リアリズム

 人はあるある話が好きだ。身近に起きがちなことで普段おかしいな、と思っていること、よくある間違いとか、不平不満など、現実に起きる何かをもとに面白い話はつくられる。

4、誇張 

 「そんなのありえない」と思われる内容や表現が使われている。大袈裟な言葉や、大風呂敷を広げたアイディアなどが使われると、話がより面白くなる。

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メモをとって書き留める

5、感情 

 ストーリーを生き生きとした言葉を使って描くことで、聞き手が感情的になり、あたかもその場にいるような臨場感が与えられる。そのために、声の抑揚、熱く語る表情や調子、ジェスチャー、テンポなど、あらゆる技が駆使され、聴衆の興味がそそられている。

6、驚き

 笑いはいつも意外性の中にある。だから最後は、必ず、予想外の展開で終わり、新鮮な驚きを持って迎えられる。まず一方向に聞き手を誘ったと思ったら、最後に全く違う方向を示してくる。そんな大きなギャップとか、全然関係ないこと、考えにも及ばないようなことを、大真面目に言ってのけたりするところに、ユーモアある話の成功がある。また、聞き手が、「常識的に考えてきっとこう来るだろうな」と期待して待っていると、後ろ右斜め73度の方向から突然攻められる、といった感じ。それとか、梯子を上ったと思ったら、最後にスッと外される、そんな感覚が、ユーモアあふれるストーリーには、必ずと言っていいいほどある。

 イジられる対象物は、はっきりさせることが大切。そうでないと、笑いをどこに向かって飛ばしていいか分からなくなり、聞き手は消化不良を起こしてしまう。

 笑いは同時に人を傷つけることもある。それが特定の第三者だったり、聞き手の中に似たような人が想定される場合は、熟考した方がいい。それに、人をあまりバカにばかりしていると、あなたがそういう性格の人だと誤解されるかもしれない。大抵の場合、笑いの対象を自分にして、自分の失敗話などを披露することで、人は安心して笑え、あなたの好感度も上がるだろう。

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具体例

 では、具体的に、次の話の中でどのようにこれら6つの要素が使われているか一緒に考えてみよう。

 通勤電車が駅のプラットホームから滑りだそうと、ドアが閉まろうとしたその時、若い男性が勢いよく飛び乗ってきた。彼はぜいぜいと苦しそうだが、どことなく勝ち誇ったような雰囲気があり、電車が走り出すと、額から滝のように流れ出る汗をひたすら拭き取っていた。

 そんな様子を電車の中で見ていた1人の老人が見下すように言った。「今の若いモンは鍛え方が足りんなぁ。わしが若かった頃は、片手にお茶をもって1キロくらい平気で走って、745分の電車にきっかり間に合ったし、息なんかぜんぜん上がらなかったがね」

「いや、そうじゃないんですよ。」若い男性はまだ肩でぜいぜい息しながら言った。「私がこの電車に乗り遅れたのは、前の駅なんです」(!)

 この話のターゲット(①)は老人だ。よく上の世代が言う「今の若いモンは。。。」というアレだ。若者は怠け者で、やり方は甘く、やる気が感じられない、などと嘆く。そうやって若者に対する不満を語りつつ、自分の時代はよかった、などと回想にふける老人が、身の周りにもゴロゴロいるのだろう。そこにリアリズム(③)がある。

 この話の老人には「ちょっと若い奴をからかってやれ」「明らかな体力のなさをいじってやれ」というような小さな敵意(②)が伺える。逆にオチとしては、そんな老人達を見返してやりたい、揶揄したいという隠れた若者側の敵意(②)や感情(⑤)も感じられる。走り込んできた若者に対して、日常よく同じ行為をしている人は感情移入(⑤)して話を聞けるだろう。

 誇張(④)も見られる。この老人は、自分の若い頃の優秀さを少し大袈裟に言っているであろうことは容易に想像できる。

 そして、最後の意外な言葉(⑥)。「実は、この若者は一つ前の駅から延々と電車を追いかけて走ってきたのか!」という驚きの結末。これを聞いた老人の顔を想像すると、ちょっと痛快だ。

笑いでよりポイントが明確に

 なぜあなたがこのストーリーを引用したのか、それを最後の結論に結びつけることが重要だ。そうでないと単なる面白い話をしただけで終わってしまう。

 例えば、よく事情もわからないで、表面の事象だけで、人を判断したり、物事を決断することの愚かさについて述べているなら、このストーリーはピッタリだ。なので、最後のクロージングに、

「私たちが物事を上辺だけで判断し、単なる想像だけで決めつけるとき、そこには間違いが起きる危険性があります。物事は常に私たちの考えている通りに進むものではありません。実際、私も今朝、似たような体験をしました。それは。。。」

などと話を締めくくれば、いいだろう。ユーモアあるストーリーを効果的に引用することで、よりあなたの話が分かりやすくなり、ポイントが明確化され、深い印象を聞き手に与えることができるだろう。

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談笑するカップル女性
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