駐在員の悩み:孤独を解消 アメリカ立食パーティでネットワークを広げる英会話のコツ

駐在員が現地に赴いて、困ること。いろいろあるとは思うが、その中で、結構多い悩みは人間関係。いきなり誰も知り合いのいない所に赴くので、知り合いが少なくて、孤独になりがちなこと。英語が苦手な人は特にそうだ。その解決策として一つ考えられるのは、誘われるがままに、いろんなパーティに出かけることだ。自分で主催して部下や同僚、その友人たちを気軽に招いてもいいだろう。

 パーティに一度出ると、いろんな人に出会ったり、誘われたりするので、それをきっかけに友達の輪が広がるだろう。様々な場に、積極的に参加してみて、気に入ったところがあれば、定期的に参加して、そこのレギュラーメンバーになれば信頼され、ネットワークもさらに広がるというもの。

 アメリカでは、パーティというと、立食パーティが主流だ。日本では、立ったまま飲食するのは、お行儀が悪いとされているせいか、立食パーティでの振る舞い方が分からず戸惑う日本人が多いようだ。駐在中には、私も、ホームパーティーをはじめ、大きな展示会や各種カンファレンス・コンベンションや、会社での簡単な講演会の後に食事会が催される場合が多く、それらに参加したが、いずれも立食パーティ形式だった。

 そこで今回は、アメリカでの立食パーティでの振る舞い方や簡単な英語表現についてご紹介したい。

パーティの目的は知らない人との交流

 私が駐在として赴任したての頃は、学んだ英語のボキャブラリーが偏っていて、広くいろんな人と交流するのが難しいと感じていた。業務上のことなら、なんとなく共通基盤の上にいるので、最終的に理解はし合えた。

 しかし、パーティなどの人間関係を広げたり、親睦を深める場面で、会話をどう発展させればいいのか戸惑って、かなりの工夫が必要だった。信頼関係を深めるには、それなりの表現や言い回し、振る舞いも必要だが、そういうことが分かるようになったのはかなり後になってからのことだ。

初めてのパーティでは知らないことだらけ

私も立食パーティというのが、最初はよく分からなかった。まず、不思議に思ったのは、せっかく会話が始まったと思ったら、大抵の人は、

“I’m going to go get something to drink.”

(何か飲み物を取ってくるね)

と言って、戻ってくるのかと思ったら、その場を去ってしまい、二度と戻ってこないことだった。私としては、勇気を出して、せっかく話かけて会話を楽しんでいたのに、逃げられた? 嫌われたのか? などと勘ぐってしまった。

しかし、それはすぐに「さよなら」の代わり、その場を去る口実なんだな、と分かった。だが、最初はとても変な感じがした。というのは、そもそも立食パーティーとは「人との交流」がメインだということを、私は知らなかったからだ。いろいろな人と少しずつ会話を楽しむ場であり、同じ人とばかり隅に固まって話しているのはマナー違反だ、とは、後で知ることとなった。

 だから、飲み物を理由にその場を去り、次の人を見つけ、会話を楽しむ、というのは、自然な流れであり、決して嫌われているわけではないのだ。

 また、マナーとして避けた方がいいことは、壁際に一人でポツンといること(Wall-flower: 壁の花、会話をしないで立っている人を指す)や、知っている人同士だけで最初から最後まで盛り上がるようなことだ。できるだけ、多くの人と会話し、積極的に知らない人と話をする場がパーティだと認識しよう。

話しかけるきっかけの工夫

誰とでも話せるようになる声のかけ方

 私の場合は、「知らない人たちと話すのがパーティの目的」だと知ることで、逆に安心した。最初は、他の人はみんな知り合い同士かと誤解して、自分だけ日本人であることが多かったし、疎外感を感じて、気後れし、引っ込み思案になっていた。しかし、それは他の人も当てはまることで、どんどん気にしないで話しかければよかったのだ。

 例えば、こんな風に話しかけられたこともある。

I don’t know anybody here, so I’m just randomly introducing myself to people.

(誰も知っている人がいないので、手当たり次第自己紹介しています)

と笑顔で話しかけられた。自分も同じような状況だったので、すごく話が弾んだ覚えがある。ちなみに、この表現は自分の状況にまさにピッタリだったので、そのままそっくりパクらせてもらった。これは、最初に人に声をかけるいいキッカケになった。これを使いまくり、誰とでも話せるようになった。

 日本では、このように突然知らない人に話しかけると、強引な印象を与えてしまうかもしれないが、アメリカでは、社交スキルを持っている人としてポジティブに受け入れられる。

どっかで見たことがあるが話したことがない場合

あの人見たことあるけど、誰だっけ? とか、ずっとあの人と話してみたかった、というような場合、なんと言って話しかければいいか、表現が意外と難しかったので、ご紹介したい。要は、自分の状況をそのまま言えばよいのだが。。。

HI, we might have met each other here before but I don’t think we’ve spoken. I’m Terry.

(以前お会いしたかもしれませんが、お話しできませんでしたね。私はテリーです)

褒めてきっかけを作る

自分が褒められることが嫌いな人はいないはず。目についたものを褒めて、きっかけを作ることもできる。そこから発展する話もあるだろう。

That’s a nice scarf.  Can I ask where you got it?  ….  Hi, I’m Terry, by the way.

(とても素敵なスカーフですね。どちらで買ったのですか? ところで私はテリーです。)

目の前の料理とアイコンタクトの合わせ技

もし、ホームパーティであれば、目の前の料理を一口食べた時にホストの料理の腕を褒めると、その後会話が弾む場合がよくある。

The food is delicious. Did you make it?

(この食事おいしいですね。あなたが作ったのですか)

大きな会場のパーティでは、ケイタリングサービスの料理が振る舞われることがよくある。そんな時は、「おいしいね!」と言いながら、同じものを食べている人と目を合わせたりすると、向こうからもアイコンタクトをとってくれることがあるので、

Did you like it, too?

(あなたもお好きですか。)

と話しかければ、そこから会話が始まることもよくあることだ。

話を深める効果的な話題と英語表現

 最初のきっかけさえつかめれば、後は、自己紹介をすればいい。でも、その後、どう会話を展開すればいいのだろうか。

 立食パーティーでは、初めて会う人がが多いので、いきなりプライベートな質問をしたり、重たい社会問題(宗教・政治)などを話題にするのはやめておこう。駐在で滞在していると仕事のことを聞かれがちだが、込み入った交渉事や営業の話は避けて、前述のように料理についてとか、その日の天気や、最近のニュース、パーティーの感想などの一般的なテーマがおすすめ。初めてだと、緊張してしまうかもしれないが、そんな時は、一度深呼吸してから、自分をリラックスさせて、自由な気持ちで楽しむのがいいと思う。

ホストについて尋ねる

 主催者・ホストとの関係性を聞くのも一般的で、初対面の人と仲良くなれてといいと思う。

How do you know Scott, (or the host)?

(スコットさん<主催者の方>とはどのようなお知り合いですか)

ここから、ホストについて質問してもいいし、その関係性から相手が何をやっている人かが見えてくる。そこから出てくる情報は貴重なものが多い。たとえお互い知っている人同士でも、意外な面を知ることだってある。

展示会などの大勢が集まるイベントでのパーティでは、

What is your connection with the sponsoring organization?

(開催組織とは、どんなご関係があるのですか)

と聞くこともできる。そこから大きな組織とのコネが生まれる可能性だってあるかもしれない。

セミナーの感想

すでにお互い同じ会場に居合わせているので、自分達がさっきまで受けていたセミナーの内容などについての話題は話しやすいだろう。

What is your interest in today’s topic?

(今日のトピックについては、どんな興味をお持ちですか)

名刺について

名刺を渡すタイミングは、場合にもよるが、日本でやるように最初に渡すよりも、連絡先を交換したい場合、別れ際などに渡すのがスマートだと思う。(後述の「場を去る時の表現」参照)

会話が途切れて話題を変えたい時は

とりあえず、差し障りのない質問をしてみよう。相手がどんなことに興味を持っているか分からなくても、映画の話題なら、大抵誰でも話にのってきそうだ。また、全く映画に興味のない人でも、違う好きなことに話題を振ってくれる時もある。

Have you seen any good movies lately?

(最近何かいい映画を見ましたか)

No, not really.  But I love to watch baseball on TV.  (いや、特に。でも野球をテレビで見るのが大好きですよ)などの返答があるかもしれないが、それはそれで、野球の話をすれば盛り上がるだろう。

場を去る時の表現

 冒頭でも紹介したように、パーティは次々に人から人へと渡り歩くのが原則。でも、その時意外に困るのが、どう会話を切り上げるか、ということ。

 参考になるのは、最初に私が体験したように、飲み物や食べ物を口実にその場を切り上げることだ。それを最後に言って、その場を去るのは常套手段だ。しかし、いきなり言うのは唐突すぎる。ロッシェル・カップ氏は、著書「英語の品格」の中で、

  1.  感謝を述べてから、
  2.  切り上げる口実を言って、
  3.  後日会って今後も関係を続けたい旨を表現する

この3ステップを薦めている。それが、洗練された人の態度というものだろう。

具体的に見てみよう。以下は、飲み物以外の口実を使った例文だ。

切り上げ方1

I’ve really enjoyed our conversation.  There are some other people here I’d like to catch up with also.  Here’s my card.  Let’s keep in touch.  

(とても楽しい会話でした。他にも会話を交わしたい人がここにはいますので。。。これは私の名刺です。連絡を取り合いましょう)

catch up は「久しぶりに会う人と近況を話す」こと

切り上げ方2

I learned a lot from talking with you.  I’m going to mingle a little bit more.  But let me know if you ever need any information about…

(あなたと話せてとても勉強になりました。他の人ともお話をしたいと思います。もし、<自分の得意分野>について何か知りたかったらぜひご連絡ください)

具体的にアポを取りたい時

もし、単なる挨拶だけではなく、具体的にアポを取りたい場合は、別れ際にこんな感じで話すといいだろう。

I’m interested in hearing more about what you do.  Shall we get together for lunch or coffee sometime to talk about it more?  What about the next week?

(あなたがされていることについてもっとお話を伺いたいのですが、今度、ランチかコーヒーでもご一緒しませんか。来週とかいかがでしょうか。)

同僚を誘ってまた会いたい、というのも面白いかもしれない。

I would like to bring my colleague by to introduce to you next time we meet.  Would you have some time next week? 

(私の同僚も次回お会いする時にご紹介したいと思いますが。来週お時間ありますか。)

気をつけた方がいい表現

日本では、多くの人が名刺交換する時に、相手の名前を聞いて、どちらの出身か、などと聞くのは、とても一般的だが、アメリカでは、あまり聞かない方がいいと思う。また、珍しい名前だと、どちらの地方ですか、とか、ドイツ系の名前ですか、とか聞きたくなるかもしれないが、これもあまり聞かない方がいいだろう。

なぜなら、そういうことを聞くと「ドイツの名前かどうかは仕事に全然関係がないはずなのに、なぜそんなことを知りたいのか」と、アメリカ人ならきっと思うからだ。

アメリカ人は差別にとても敏感で、名前から国籍、人種民族などを推測されると、とても不快に感じてしまうことがあります。(ロッシェル・カップ著「英語の品格」p 173より)

初対面では、人種差別につながる恐れがあるので、向こうから聞いてこない場合は、話題にしない方がいいので、打ち解けるまでこの話題はとっておこう。

Where are you from?

(どちらから来ましたか? ーまたは、どちらのご出身ですか?)

この表現を私は最初の頃はよく使っていた。しかし、怪訝な顔をされることが多かった。もし、ヨーロッパを旅行中で、電車の中で隣り合わせになった人と話すなら、適切かもしれない。なぜなら、その置かれている状況が、この質問をするのに適しているからだ。

しかしながら、アメリカのパーティでこの質問をすると、状況にそぐわない。上記と同じ理由で、移民の多いアメリカでは、生まれや出身地で差別しているのではないか、と、こちらの意図に反して誤解される場合があるからだ。特に最近ニューヨーク近郊では、メキシコからの移民が多く、それを気にしている人もたまに見かける。こちらが日本人だとわかると、同じ外国人ということで、親近感を持つ人もいる。いずれにせよ、初対面では、その人がどんな考え方を持っているかは、よく分からないので、こういう言い方はなるべく避けた方が無難だろう。だから、代わりに、

Do you speak any languages other than English?

(英語以外に、他の言葉を話しますか)

と聞けば問題ない。もし、相手が答えたくない場合は、Yes, Noだけで返事ができる。もし、その後、会話が続かないようなら、話題を切り替えれば良いだけだ。

あらかじめ自己紹介、自分の仕事について表現を考えておく

私の場合、パーティに出かける前に自己紹介の仕方を工夫したり、仕事についての説明をあらかじめ考えておいた。辞書を引いて必須の単語は覚えておく。

これは弊社のブレイクスルー基礎コースでも教えていることだが、例えば、

「ロックなオーガニックコンサルタントのおぎのです」

というように、ちょっと「え?」と思わせるフレーズを考えた。

自分の仕事でやっていることが醸し出すイメージと少し反対の何か(自分の趣味とかボランティア活動とかー私の場合はロックバンドだった)を持ってきて組み合わせることによって、ユニークな自己紹介ができるようになる。こうすることによって、相手にいつまでも覚えていてもらえることになるだろう。

相手の話を熱心に聞くと喜ばれる

会話とは、キャッチボールだ。お互い投げ合って、落とさないように、落とさないようにと気をつけ、工夫する。最初は、自分からオープンにいろいろ自分のことを披露する。

 しかし、自分のことばかり語っていてはよくないし、そもそも英語力が違うので、それは難しい。相手はアメリカ人でネイティブスピーカなのだから、相手に話しをさせるようにすれば、もっと会話の幅が広がる(ニューヨークは人種のるつぼなので、アメリカ人でない場合も多かったが、たいていは自分よりも英語が流暢だった)。だから、自分がやれることと言えば、きっかけを作り、話しかけて少し話したら、後は、相手の良き聞き役に徹することだった。こうすることで会話はとても盛り上がった。

というのは、人は、みんな自分のことを喋りたいものだからだ。特にアメリカは自己主張が強い国なので、質問をして、熱心に聞いてあげると非常に相手は喜ぶことが多かった。それで相手は自分のことをよくわかってくれる奴だと思い込み、とても仲良くしてくれる場合が多々あった。

その時注意して欲しいのは、日本でやるように、あまり多く相槌をうったり、頷かないこと。相手の目をじっと見て黙って聞くのが、文化的にアメリカのマナーだし、その方が実際、より好感度が高い。日本のように頻繁に相槌を打つと、話を遮っているような印象を与えて誤解される場合もある。また、あまり多くうなずくと100%相手の意見に同意していると思われる。

100%同意していると思わせて困るのは、次の機会で仲良くなり、自分の反対意見を強く披露した時に、「この人は私の意見にとても従順な人だと思っていたら違うのか。なんだか期待を裏切られた」と相手をガッカリさせてしまうことがたまにあるからだ。だから、あまりうなずかない方が、相手に変な期待をさせないためにも有効だ。

でも、相手の話をよく聞いてあげることで、具体的にアポを取りたいときは、その可能性はぐっと上がると思うし、そこから親睦が深まり、さらなる新しいビジネスに発展する可能性だってある。良きリスナーになる事は、私生活においても、ビジネスにおいてもとても大切なことである。

■なぜ相槌が誤解の対象になるか? はこちら:

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駐在員は孤独が悩みの一つ。その解決策の一つはパーティに出ることだが、アメリカでは、パーティは立食が主流で、日本人は慣れない人も多い。この記事で挙げるマナーを学び、英語表現をうまく使えば、できるだけ多くの人と、次々と話をし、相手に印象付けることができるだろう。

■アメリカ人部下と円滑にコミュニケーションをとる秘訣はこちら:

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