リーダーの技量が問われる危機対応スピーチ その⑤ボリス・ジョンソン首相(イギリス)

「信元夏代のスピーチ術」編集長 信元です。

現在、かつてないパンデミックが世界中を脅かし、各国、各都市、各業界でのリーダーたちは、刻一刻と状況が変化する中、大胆かつ的確な判断を下す必要がある厳しい局面に立たされています。前回から、そんなリーダーたちが行った、お手本となる危機対応スピーチを取り上げ、解説しています。

ご紹介する5つのスピーチのうち、今回は最終回の5つ目です。

低コンテクストで端的に伝える、イギリスのボリス・ジョンソン首相

4月9日現在、イギリスのボリス・ジョンソン首相は、コロナ感染のため未だ集中治療室にいる状態です。

このコラムが掲載される頃には回復していることを祈っています。

ジョンソン首相は3月23日夜、英国民に向けた緊急スピーチを行い、イギリス全土における外出禁止を指示しました。

たった6分強のスピーチですが、危機管理スピーチのお手本と言えるほど、秀逸な危機管理スピーチでした。

まずこのスピーチでは、きっと小学生が聞いてもしっかり理解できるでろあろう、簡単・簡潔・簡明な言葉を使いながら、非常に低コンテクストな表現をしているのが特徴です。

「コロナウイルスは、この国が過去数十年で直面してきた中で、最大の脅威です。」

冒頭からこう切り出し、聞き手の危機感レベルを高め、統一するのは、ブレイクスルーメソッドでもお伝えしている、「驚きの事実」を用いて緊張感を高め注目を一気に引く、効果的なオープニング手法です。

次に、明確なロードマップがあります。

「今日お話しすることは2つ。最新状況の報告、そして、皆さんがどうやって協力できるか、です。」

オープニングのなかでロードマップを明確に出すことで、聞き手の頭と心の整理を促す効果があります。

危機対応時に最優先したいのが、事実を、意見や感情などの事実以外としっかり切り分けて、「現時点でのそのままの事実」という形で、明確かつ論理的に伝えること、さらに、それを、解釈の余地を与えない簡単・簡明・簡潔な言葉で伝えること、です。

つまり、「低コンテクスト」な表現を選ぶことが、危機対応時スピーチにおいて功を奏します。

この点において、ジョンソン首相のスピーチは非常に秀逸です。

たとえば、オープニングに近い早い段階で語っている次の下りです:

「あまりに大勢の人が一度に重症になれば、国民保健サービス(NHS)は対応しきれません。

そうしたらコロナウイルスだけではなくほかの病気でも亡くなる人たちが増えてきます。

なので、何としても、病気の拡散を遅らせなくてはなりません。

だから、家にとどまってほしいのです。」

(仮定的状況下での)原因→(想定される)結果→(とるべき)行動→要請

このようなシンプルな論理構造になっていて、更に、言葉選びも、余計な含みももたない、難しい用語も一切排除された、シンプルな伝え方になっているのがお分かりかと思います。

そして再度、

「単純な指示を出します。家にとどまってください。」

と分かりやすく行動喚起をしたうえで、更に、取って良い行動例、取ってはいけない行動例を具体的に挙げながら、誰にでもわかるように説明しています。

最後には国民の気持ちにも寄り添い、喚起することも忘れません。

「私たちはコロナウイルスに勝ちます。一緒に勝ちます。

国家的危機の今この時、

家にいてください、

みんなのNHSを守り、

命を救ってください。

ありがとうございます。」

そしてこの6分強のスピーチの間中、一つ一つの言葉にはしっかりと重みがあり、聞き取りやすいスピードと間も使い、さらに、座っていながらも、強調すべきところでは机の上で組んだ手を自然に動かしながら、効果的にメッセージを強調しています。

危機対応スピーチのお手本を一つだけ選ぶなら、私は迷わず、このジョンソン首相のスピーチを選びます。

 

 

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