「信元夏代のスピーチ術」編集長 信元です。
「ミスコン」(英語だとページェント、と言われます)について聞いたことがある方は沢山いると思いますが、その既婚者バージョン、「ミセスコンテスト」があることをご存じでしょうか?
アメリカを中心に、複数のミセスコンテストの団体が存在しますが、日本でもどんどん成長し、注目を浴びているのが、「ミセス・インターナショナル」です。「ミセス・インターナショナル」はアメリカ・ウェストヴァージニア州に本部を置き、30年以上の歴史を持つ世界規模のコンテストブランドで、公式日本支部である「ミセス・インターナショナル日本大会」は、一般社団法人国際女性支援協会(ローズ・クルセイダーズ)が運営しています。
この「ミセス・インターナショナル日本大会」では今年から、「ミセス・インターナショナル2021 アジア・オセアニア」というカテゴリーが加わり、その初代グランプリを獲得した眞柄 真有奈(まがら まゆな)さんのスピーチのお手伝いをさせていただく機会がありました。実は、ローズ・クルセイダーズの運営代表者の方が初めてミセス・インターナショナルの日本代表として世界大会に出場した2015年にもご縁をいただいて世界大会向けスピーチの作成とコーチングを行っており、その後も何人かの方のミセスコンテスト出場向けスピーチコーチングも担当してきたので、今回、グランプリの方の世界大会向けのご縁を再度いただくことができてとても嬉しく思っています。
私は普段は経営トップの方々を中心に、グローバル企業で働く方々のスピーチのお手伝いをすることが多いのですが、ページェント出場向けのスピーチ準備は、まさに自分自身の”ワンビッグメッセージ”と”パーソナルストーリー”にかかっているので、とてもエキサイティングなプロセスです。
審査の半分も占める最重要要素、スピーキング力
ミスコン、またはページェント、と言うと、あの、水着審査があってモデルみたいな容姿の人が選ばれる…というイメージをお持ちかもしれません(私も以前はそんなイメージを持っていました;;;)。でも実は、ミセスコンテストは人生経験が豊かな女性たちを対象にしているだけあって、ちょっと違うのです。
ミセス・インターナショナルが目指すのは、年齢や立場を問わず、女性が明るく輝く社会づくり。内面からあふれ出る美しさを重要視し、グランプリに選ばれ世界大会に出場する際には更に、高い視座でのビジョンやミッション、コミュニケーション能力、ボランティアや国際問題・社会問題への精通度合いなど、人間性と広い視野が大きく問われてきます。
そのため、ミセス・インターナショナルで全体の審査の50%を占めるのは、なんとスピーチなのです。残りの50%は、イブニングガウン審査(25%)とフィットネスウェア審査(25%)です。(水着審査はありません!)
今回、「ミセス・インターナショナル2021 アジア・オセアニア」初代グランプリの眞柄 真有奈さんに、どんなスピーチコーチングをしてきたのか、その全貌をお見せしたいと思います!(本コラムはご本人のご了承を得て公開しています)
30秒でOne BIG Messageとストーリーを伝える
自分のメッセージさがしは砂金採りのよう
これまでの30年間、あるいは40年間くらいの人生を振り返り、初めて会う審査員たちに自分のことを最も良く知ってもらい、他のコンテスタント達と差別化を図るスピーチを作り上げる。しかもたった30秒で。
一朝一夜の作業では終わらないことはご想像の通りです。何を伝えればよいのか、何から準備すればいいのか、途方に暮れてしまうかもしれません。特に、ミセスインターナショナルのようなミスコンのスピーチは、自分についてアピールをしなければいけませんから、何よりも大切なのは、「内省」のプロセスです。
真有奈さんの場合、ご自身がライフコーチとして1000人以上のサポートをしてきたので、クライアントさんの内省のお手伝いだけでなく、普段から自分自身の内省をすることにも慣れていらっしゃり、初回の個人セッションの際にはすでに、Microsoft Wordにして10枚近く、約4000字にも及ぶ内容を共有してくださっていました。これをもとに、対話、質問を繰り返しながら、「これは!」と思うところを更に深く掘っていく、あるいは横に広げていく、という作業に徹底していくと、自分でも気づいていなかった気づきが起こります。
皆さんは、砂金採りをしたことがありますか?見たことはあるかもしれませんね。
砂金採りをする際、まずは「ここかも!」というところを狙い、砂ごとザクっとすくい、丁寧にふるいにかけていくと、「あ!光るものが出てきた!」となりますよね。
自分のメッセージ探しは砂金採りのようなイメージです。
自分の伝えたいたくさんの情報や、自分の人生におけるたくさんの出来事の中から、これだ!と光るものを探していくためには、まずは全て考えを洗い出し、全体像をすくい取って見るところから始めます。
これは一人ではなかなか難しいことです。コーチや誰か信頼のできる人と一緒に対話をしていくと、全体像は更に深まり、広がっていき、その分、光る砂金が見つかる確率も上がってきます。
もちろん、真有奈さんのように内省が得意な方ばかりとは限りません。私のクライアントさんの大半は、この一番最初のプロセスで苦労します。だからこそ、個人コーチングの第一回目では、クライアントさんの話に傾聴し、寄り添い、ファシリテートしながら考えを深め、広げて行くことに徹します。
メッセージを絞り込む
広く、深い全体像が浮かび上がったら、全体をふるいにかけながら「砂金」を探していきます。
ここでほとんどの方が抜け落ちがちになるなのが、「聞き手視点」です。
自分にしか伝えられないメッセージを探り当てると同時に、そこばかりにフォーカスせず、聞き手、この場合は、ミセスインターナショナルの審査員・運営者にとって、「この人を選んだらミセスインターナショナルという団体にとってベネフィットになる」と思ってもらえるかどうか、「自分視点」と「聞き手視点」との接点を見つけることが、スピーチづくり成功の鍵となります。
その接点が見つかったら、カギとなる情報を残し、他は削ぎ落とし、メッセージを言語化していきます。
そしてまずは、One BIG Messageを作り上げます。このOne BIG Messageは長すぎると覚えてもらえません。簡単・簡潔・簡明な表現で、英語なら10ワード前後、日本語なら20字以内が目安です。
真有奈さんのOne BIG Messageは、
「Follow Your Heart(3 words)」、
派生形で、
「Following your heart is the best way to find your own way (12 words)」
に集約することができました。
One BIG Messageに肉付けをし、ストーリーを構築する
今度はこのOne BIG Messageを元に、それを最も鮮明に伝えられるストーリーを探していきます。
スピーチに込める情報は、すべてこのOne BIG Messageを伝えることを目的として丁寧に選んでいきます。
ストーリー作りのときには、登場人物の様子が見え、感じ取れ、聞こえてくるように描写していきますが、詳細すぎる描写ではストーリーがダレてしまいますので、絶妙な匙加減が必要です。ここは、プロスピーカー兼スピーチコーチの技を是非頼ってください。
自分のことばに変えていく
個別セッションでは、クライアントと討議を繰り返しながら、原稿を作り上げていきます。日本語の場合でもそうですが、特に英語の場合は、私の方で原稿のほとんどを作り上げていきます。そうして出来上がった原稿は、実は最終ではありません。あくまで、「信元夏代のことば」で書かれているからです。これを、スピーチを行うご本人自身の言葉に変えていく細やかな作業が大切です。
そのためには、まず、そのままの原稿を声に出して何度か読んでいただきます。そうすると、ちょっと言いづらいな、とご自身で気づく個所、同時に、ご本人はあまり気づいていないが借りてきた言葉のように聞こえてしまっているな、とコーチとしての私が気づく個所が必ず出てきます。そういった個所を発見し、違う言い方をいくつか提案しながら何度か声に出して言っていただき、「自分のことば」を探していきます。そうすると、ご本人も、私も、「あ!これですね!」というものが見つかる瞬間があります。この作業を原稿の隅々まで丁寧に行っていきます。
このプロセスは、砂金一つ一つを取り上げて磨いていくようなイメージです。
4000字から100字へ
こうして、真有奈さんのスピーチ原稿は、初回のコーチングセッションの時の4000字から、磨き上げられた約100字にまで削ぎ落とされました。
大会では、60秒バージョンと30秒バージョンを用意しました。
60秒バージョンは、112ワード55秒、30秒バージョンは、73ワード27秒。
文字数が減っても、One BIG Messageはしっかりと伝わっています。
こうして仕上がったスピーチは…
こちらです!
そして、Mrs. International Asia Oceania2021代表に決まり、クラウニングの瞬間…!!!
世界大会に向けての面接対策
代表に選ばれたら今度は間髪入れずに世界大会に向けての準備が始まります。
世界大会では、ステージ上での予選の前に、全体の審査の50%の比重を占める、難関の面接が待っています。
面接官1人につき5分ずつx5人、しかも通訳付きなので時間は他の人より半分!
世界大会なので面接も当然すべて英語ですが、事前に何が聞かれるかは全く知らされておらず、質問されたら即座に応えなければならないので、真有奈さんは英語は出来るものの、通訳を付けたほうが確実だろう、ということで、これまでスピーチを一緒に作り上げてきた私に、是非通訳を、とご依頼があり、本業は通訳ではないので少々不安はありながらも、真有奈さんの地道な努力にもインスパイアされていた私は、ここまで来たらもう運命共同体として同行するしかない!と心に決め、お引き受けすることにしました。
この面接、ちょっとユニークな方法で行われるのです。
審査員は5名、それぞれ個別のデスクと椅子がコの字型に置かれ、それぞれ離れて座っています。
コンテスタントは5人一組となり、部屋に入室。まずは横1列に並び、最初のコンテスタントから順に、名前、エントリーナンバー、タイトル(例えば、真有奈さんならMrs. International Asia Oceania)を言います。
ファシリテーターから合図があったら、最初に面接を受けたい面接官のところに歩いていきます(ここは若干、全員分の椅子がある椅子取りゲームのような感じ…)。そして面接官に背を向けて立ち、合図を待ちます。通訳として同行した私は、真有奈さんが選んだ面接官の隣の椅子に座って待ちます。
数秒の静寂…
面接官、そしてコンテスタントの準備が整ったら、ファシリテーターが、「はじめてください」と合図します。
その瞬間にコンテスタントは振り返り、面接官に向いた椅子に座って、再度、名前とエントリーナンバー、タイトルを伝え、面接が開始します。
各面接官の持ち時間は5分間。4分目でファシリテーターが、「あと1分です」と合図をし、5分ちょうど立ったところで、「終了です」の声がかかったら、回答途中でも、「Thank you」と言って強制終了です。
そして再度立ち上がり、今度は時計回りにテーブルを一つ移動し、次の面接官に背を向けて立つ。合図とともに振り返り、面接開始。
これを5回(5人の面接官分)繰り返します。
一人の面接官につき5分、と言う時間はあっと言う間に過ぎていく。更に真有奈さんの場合、通訳入りなので、言いたいことが言えるのは他のコンテスタントの半分の時間、ということになってしまいます。
でも常に私が自分自身にも言い聞かせているのは、「ディスアドバンテージ(不利)をアドバンテージ(有利)に変えよう!」ということです。
私は日本で育った純ジャパの日本人であるにもかかわらず、アメリカで、英語で、プロフェッショナルスピーカーとして活動しています。
英語ネイティブではありません。多少のアクセントもありますし、文法も間違えます。日本語だったら即座に回答できることも、英語だと若干難しいことだってあります。
でも、だからこそ、それを自分のユニークな個性として、逆に全面に押し出してブランド化してしまうのです。その代わり、毎回、徹底的に戦略を練り、準備を重ね、臨みます。
このメンタリティーについては、こちらのコラムで書いています:
「ミセス・インターナショナル日本大会2021」で、「ミセス・ アジア・オセアニア」グランプリを獲得した方の世界大会に向けてのスピーチ、面接のコーチングをさせていただきました。どんなコーチングをしてきたのか、準備プロセスから本番までの道のりを、すべて公開します。
今回の真有奈さんについても通訳入りの短い時間を不利、と捉えるのではなく、うまく使っていけるように、戦略をしっかり練りました。
他の人の半分の時間しかない面接の戦略とは
実は他のコンテスタントでも、通訳をつけている方がいたのですが、その方は、予め通訳がコンテスタントについて徹底的に知り尽くす準備をし、面接ではコンテスタントの方はほとんど口を開くことなく通訳の方がほぼ全部直接回答する、という方法を取っていたようです。
でも私たち、チーム真有奈は違う戦略を取りました。
審査されるのは、あくまで真有奈さん。私ではありません。私は前述のように、スピーチコーチとしても、スピーチをする本人が「自分のことば」で話すことをとても大切に考えています。たとえ日本語での回答であっても、真有奈さん本人のことばを使い、表情やボディーランゲージなど、すべてのコミュニケーションツールを通して、真有奈さんにしか出せない非言語メッセージを伝え、オーラを感じてもらうこと、にフォーカスしました。
心理学者のアルバート・メラビアンは、コミュニケーションをする際、「言語メッセージ」が相手に与える影響はたった7%、「視覚メッセージ」と「聴覚メッセージ」の非言語メッセージが相手に与える影響は、合わせて93%、という研究結果を発表しています。
つまり、面接はもちろんのこと、実際にメッセージを伝える段階に来た時、「非言語メッセージ」の比重が非常に大きい、ということなのです。だからこそ、日本語は相手に伝わらなくとも、非言語から伝わるメッセージが大半であることを鑑み、チーム真有奈は、「日本語で回答」→「英語で通訳」、という形式をあえて取り入れることにしました。
この際、意識していただいたのは、次の2点です:
① PREPで回答する
PREPとは、意見を端的、かつ、具体的に述べるためのフレームワークで、次の頭文字をとったものです:
Point
Reason
Example
Point
日本語、あるいは日本人の話し方は、大事なポイントが一番最後に来る傾向が高く、最初の方で何を言わんとしているのか分からず強い印象を与えられない、という結果を招きやすいのが特徴です。
PREPを使えば、最初に明確な意見を述べ、次に、理由と具体例で意見を論理的にサポートし、最後に再度意見を述べて立ち位置を明確にする、という、体系的な話し方ができます。
短い時間で意見を伝えないといけないからこそ、真有奈さんにはPREPで話す練習をしていただきました。
② 一文一文を短く答える
皆さんも通訳が入ったインタビューのこんな場面をご覧になったことがあるかもしれません。よくあるのは、ご本人が長くしゃべり、そのあとで通訳が入る、と言うパターンです。でもこうすると、日本語が分からない相手には、日本語でしゃべっている長い間が空白・謎の時間として過ぎていくだけ、置いてきぼり、の状態になります。良くありますよね、ご本人は何か面白いことを言っているのに、聴いている人はその時は理解していないので、ぼーっと見ていて、通訳が入ってからようやく笑いが出る、という時差が発生する状況。
ミセスインターナショナルの面接はたった5分ずつ、空白の時間を作っている余裕は全くありません。そして通訳時間を考えると、他の人より半分の時間しか回答時間がない、ということを考えると、短い文でテンポよく進めないといけません。従って、真有奈さんには、回答をPREPで行うほかに、1文ずつ、短く答え、間髪入れずに通訳を入れ、真有奈さんがまた間髪入れずに続きを短文で述べ、通訳…というように、素早いテンポとリズム感で進めて行きました。
この戦略を取ったことで、通訳が入っても間延びすることもなく、また、本人⇒通訳の回転も速いため、会話が途切れることなく、リズム感すら出すことに成功しました。
何が聞かれるか分からない中での究極の直前練習とは?
そして面接当日です。前の晩に約3時間、当日も約2時間にわたり、練習を繰り返しました。
そして当日の直前にはホテルの部屋で、本番さながらに練習を繰り返しました。
その時行ったのは、次の方法です。
①体をゆるめ、表情筋を動かすウオームアップ
しっかりと通る声づくりは、身体全体からはじまります。ストレッチをしたり体を動かしたりして体全体を緩めてから、今度は顔の筋肉を頬の筋肉から顎ラインにかけて手でマッサージしながら緩めてあげます。そして、口も大きく動かしてあげます。舌も思いっきり出したり丸めたりして舌もストレッチしましょう。
私がよく行うエクササイズは以下の通りです:
1.目も口も手もぜんぶ開きまくる(手もパーにし、舌も思いっきりべーっ!と出す)
2.今度は梅干しみたいにぎゅっと小さくする(手もグーにする)
これを5~6回繰り返す。 次に、
3. 口の中に、大きなGum ball(100円玉くらいの大きさの球体のガム)を1個入れたと想像して口中転がしながら必死で噛む
4.また架空のGum ballを1個追加。。。2個追加。。。と想像しながら、噛んでいると、口の中が開いてきます。
更に時間に余裕があれば、滑舌を良くするためにこんなエクササイズもしてみてください:
②本番を想定した立ち位置で練習
面接の本番では、真有奈さんと私は向かい合わず、二人とも面接官の方を向いている状態です。ですから本番同様の立ち位置でも練習しました。
スピーチの練習をする場合でも、こっちに観客がいる、ここに演台がある、動く範囲はここからここまで、など、本番を想定してリハーサルすることをお勧めします。
③相手を想定した顔を見て話すことを想定
本番では当然、面接官の顔を見ながら話します。でも練習だと、その「顔」がありません。
プロスピーカー仲間も良くやっているのは、練習の際に、ぬいぐるみを目の前に置いたり、誰かの顔写真を置いたり、犬がいる方は犬に向かって話す練習をしたりしています。今回の場合はそのようなものはありませんでしたので、テレビのニュース番組をつけ、音声はミュートにし、テレビ画面に出てくる人の顔を見ながら話しかけるようにしゃべる、という状況を作りました。ニュース番組を選んだのは、ニュースアンカーが座ってカメラ目線で話してくれるシーンが多いので、一番「面接官と向き合っている」状況に近いシミュレーションができるからです。
④あえて気が散る要素をシミュレート
でもやはりテレビですから、シーンが切り替わったり、コマーシャルになったり、画面の中の映像がどんどん変わっていきます。ちょっと気が散ってしまいます。
だからこそテレビを活用したのです。というのは、今回の面接は上述の通り、5人のコンテスタントが5人の面接官のところで同時に同じ部屋で面接を行っていますから、周りの音や動きなどの「ノイズ」がたくさんある中で、自分の面接にフォーカスしなければいけない、という環境でした。ですから、画面が移り変わるテレビに向かいながら、あえて気が散る要素もシミュレートしたのです。
真有奈さんと私がテレビを見ながら練習している実際の様子、見てみてください:
そして面接本番…!
更にファイナリストに課せられるのは、高度な”Fishbowl questions”
面接が終了した翌日に、舞台上での予選が行われます。こちらはフィットネスウェア審査とイブニングガウン審査。その更に翌日に、決勝が開催され、決勝に進む最終16名のファイナリストが発表されます。
今回真有奈さんは決勝には進まなかったものの、見ているだけでも大きな学びを得るものでした。
それは、Fishbowl questions。
「金魚鉢」のような入れ物に質問が書かれた紙が入っており、ファイナリストはそこに手を入れて一枚紙を選びます。そしてそこに書かれている質問が読み上げられ、即座に30秒で回答をする、という、いわゆる「即席スピーチ」審査です。準備してきた30秒スピーチは練習できますが、この即席スピーチは準備ができません。いかに瞬間的に考えをまとめ、体系的に説得力を持って話せるか。ここでも、PREPが非常に役に立ちます。
そしてこのFishbowl questions、トピックがどれもとても高度なものでした。クリーンエネルギーについて、人種差別について、政治について、公務員の役割について、教育について…普段から、世界の時事問題などにも目を向けていないと答えられないものばかりでした。でもファイナリスト達はみなさん即座に意見を述べていて、回答に詰まっていた人は皆無。さすが、の一言です。
即席スピーチの準備法
このような即席スピーチにも、ある程度事前準備はできます:
①(練習相手がいる場合)その日の新聞記事からトピックを選んでもらい、そのトピックについての意見を尋ねてもらう。
(一人で練習する場合) その日の新聞記事をしっかり読むことなく5つほど切り取り、Fishbowl questionsのように箱に入れ、一枚の記事を選ぶ
②30秒の時間を計りながら即座に回答する。その際、PREPを心がける
③回答が終わったら、その記事をしっかり読み、知識を入れた状態で、再度PREPで30秒の回答をする
毎日1問ずつでも良いので、このような練習を1か月、続けていけば、1か月後には見違えるほど上達しているのが感じられるはずです。
今回のページェントで得た学び
① スピーチは積み重ねである
準備できるスピーチでも、即席スピーチでも、日々の積み重ねがモノを言います。しっかり準備していれば、自信にもつながります。たとえ通訳が入る場合でも、人任せにせず、真有奈さんのようにしっかりと準備をしておくことで、本番に自己ベストを出すことができます。
② 一人で背負い込まない
とはいえ、どんなことでもそうですが、一人で出来ることには限りがあります。プロスポーツ選手にも必ずコーチがいるように、上を目指そうとすればするほど、コーチの存在が、自分の成長と成功を左右します。本気で上達したい人たちは、自己投資もしています。コーチはその道のプロであるだけでなく、クライアントの能力を最大限引き出すことに長けています。皆さんの能力は、今持っている(と自分が思っている)もの以上のものが必ず潜んでいます。伴走してくれるコーチと共に、自分の能力を引き上げてみましょう。
③ その場を楽しむ
あとは、楽しむ、という気持ちが大切です。スピーチ・プレゼンは、「聞き手と心がつながるツール」です。面接も同様です。自分の価値観と相手の価値観の接点を見つけ、心でつながることができる、素晴らしい機会です。そんな機会が得られたことを、心から楽しんでみてください。あなたの心の扉が開いていくと同時に、相手の心の扉も、そしてその先にある、未来への扉も開いていくことでしょう。