「信元夏代のスピーチ術」編集長 信元です。
「全3回シリーズ:スピーチ、プレゼンはマーケティング戦略と同じプロセス」、では、スピーチ原稿やプレゼン資料を作成する前に、①聞き手を分析、②自分を分析、③共通の基盤を見つける、という3つのステップの調査分析を行うことが大切だ、というお話をしました。
共通の基盤が見つかったら、それをどうやって端的に言葉で表現するのか?
と考えるのが、次のステップです。
より相手に「響く」精度の高いメッセージを探すためには、ロジカルシンキング手法を使っていきます。
たった一つのメッセージに絞り込む
スピーカーとして、伝えたいことは山ほどあることでしょう。
しかし人間は、複数のことを言われると、かえって混乱し、すべてを忘れてしまいがちです。
全部忘れられてしまう10つのポイントを伝えるのと、確実に聞き手の印象に残る1つのポイントに絞り込むのと、どちらが良いでしょう?
もちろん後者ですね。
ですから、自分がスピーチを通して最も伝えたいことはなんなのか、たったひとつの大きなメッセージに絞り込むことで、スピーチは格段にクリヤーになります。
これをブレイクスルー・スピーキング™では、One BIG Message(ワンビッグメッセージ)、と呼んでいます。
しかしそのワンビッグメッセージを伝えるには、なぜそれが聞き手にとっても最も大切なことなのか、根拠をいくつか挙げて説明する必要があります。
それらの根拠をブレイクスルー・スピーキング™では、Main Point(s)(メインポイント)と呼んでいます。
聞き手によって異なる、「響く」ポイント
ワンビッグメッセージの根拠となるメインポイントを探し出していくのは、簡単なようでそうではありません。
それは、伝えるメッセージが同じだとしても、聞き手が違えば、彼らに響く根拠、というのは異なってくるからです。
例えば、ワンビッグメッセージが、「我が社にとって、A社の買収は、中長期目標達成に必要不可欠である」、だったとしましょう。
聞き手を説得するために、どんな根拠を挙げればよいでしょうか?
もし聞き手が、経営層や役員理事であれば、A社がいかに我が社の戦略的方向性にプラスになるか、というポイントが、響く根拠かもしれません。
しかし聞き手が生産関連部門の人々であったとしたらどうでしょう。
自社に欠けているA社の生産技術やノウハウ、規模の経済による生産コストの大幅削減などのポイントが、響く根拠かもしれません。
あるいは、聞き手がマーケティング関連部門の人々であれば、彼らに響く根拠は、A社の商品ポートフォリオが、いかに我が社の商品ポートフォリオを補完・強化するものであるか、というポイントかもしれません。
ですから、聞き手はどういう興味や価値観を持つ人たちなのか、何を求めているのか、しっかりと調査分析した上で、彼らにもっとも響く根拠は何か?を洗い出していかなければ、相手に響くスピーチには仕上がらないのです。
このシリーズ(全5回)では、「ワンビッグメッセージ」を異なる聞き手に届けるプレゼン/スピーチのために、どのような手法を用いるべきなのかについてお話します。