コロナ渦で問われ始めた「企業のパーパス」。社内外に伝える効果的な方法とは?

「信元夏代のスピーチ術」編集長 信元です。
私は大手企業向けに企業研修や、経営層、マネジメント層への個人コーチングなどを多く行っていますが、コロナ渦の中で急激にニーズが増えてきたトピックがあります。

それは、「企業のパーパス(Purpose)」。
企業の存在意義や、志、と訳されることが多い「パーパス」。人を動かすためには、企業が提供する商品やサービスの機能的価値ではなく、ブランド、そしてその企業の在り方に対する「共感」が必要。だからこそ企業は、自分たちが社会にどういう価値を提供するのか、存在意義から考え直す必要がある、という考え方です。
先日、年間の純利益が初めて1兆円を超えたソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長は、就任して3年での成果である、と強調したのは、業績ではなく「ソニーのパーパスを定着させたこと」と言っています。

日本経済新聞

年間の純利益が初めて1兆円を超えたソニーグループ。吉田憲一郎会長兼社長が就任して3年での成果と強調したのは、業績ではなく…

SDGsが世界的な潮流になり、ESG経営の重要性が加速する中、企業がどう社会に貢献していくのか、が改めて問われていることも背景にあるかもしれません。

参考:ESG経営とは?

株式会社リンクアンドモチベーション

「ESG」というワードはご存知でしょうか。見慣れない方もいるかもしれませんが、現在世界中で「ESG」が重要視されています…

もはやブランド戦略の一環ともいえる「パーパス」は、ともすると抽象的、哲学的にもなり得てしまうため、定義すること、更には明確に伝えていくことが非常に難しいトピックです。

ではどのようなプロセスを経れば、真の共感を得られる「パーパス」を伝えていくことができるのでしょうか。

 

パーパス、ミッション、バリュー、ビジョン、〇〇Way…どう違う?

多くの企業には、ミッションステートメントや、ビジョンステートメントがあります。バリューや、〇〇Way(トヨタ・ウェイ、花王ウェイ、など)と呼ばれるものを明記している企業もあります。

パーパス、ミッション、バリュー、ビジョン、〇〇Way…それぞれ複雑に絡み合っていて、ともすると、体裁はいいがよりどりみどり取り揃えて、表面的に言葉で作っただけ、となってしまう危険性もあります。

そこでまず、それぞれ、どのような役割を果たすものなのか、解説しましょう。

 

 

ミッションとは

ミッションには、「目的、使命、役割」などの意味があり、企業として自分たちは社会でどんな存在であれ、誰に価値を提供し、何をしていくのか、を明確にするものです。

企業活動の中の、WHOとWHAT、ともいえるでしょう。例えば、「世の中にないものを常に生み出す」、などがミッションとして掲げられるでしょう。

企業理念を掲げる際、通常、ミッションからスタートし、ビジョン、バリュー、この3つが基本の構成要素となります。

バリューとは

バリューとは、企業組織として共通して持つ価値観のことです。私は、WHAT we adhere to、と表現しています。
企業に属するメンバーが、ミッションを共有し、ビジョンに向かっていくためには、「自社の価値基準」が明確であることが求められます。企業として顧客に与える価値、サービスとは何なのかを考え、行動の基準とする考え方です。

例えば、「多様性を生かして創造力を最大化する」などがバリューとして掲げられるかもしれません。

個々人の価値観と企業の価値観の方向性に、共通項を見出していくことが重要です。

ビジョンとは

ビジョンは、実現したい理想の姿です。企業活動を通して、将来どこに向かっていきたいのか、WHEREの部分です。

経営目標や事業目標とも言われることがあり、時間軸を入れて策定し、時代に合わせて変化していくものです。

例えば、「10年以内に〇〇業界世界最大規模のベンダーになる」などです。

〇〇Wayとは

最も有名なのは、「トヨタ・ウェイ」、ではないでしょうか。

「○○流」、「○○方式」、「○○イズム」とも表現されることがあり、トヨタもまさに、「トヨタイズム」という言葉を使っています。

WAYは、その企業の生い立ちや創業理念、過去の成功体験&失敗体験等がベースとなって形成されることが多く、一言でいうならば、「企業らしさ」のことです。

WAYは明文化されていないケースも多いですが、行動規範として明文化されている場合、その企業で働くメンバーたちの間で意識的に共有され、自発的に行動を起こす、あるいは判断を行なう際の基準(規範)となります。そのためWAYは、人・モノ・カネ・情報に続く第5の経営資源と呼ばれることもあります。

パーパスとは

一方、パーパスとは、この組織は何のために存在しているか、という問いに答えるもので、存在意義や社会的意義も含まれているものです。これはミッション、バリュー、ビジョン、すべての根底にあるもので、いわば、北極星のように、すべての行動の指針となるものです。

ミッションとも非常に近い印象を受けるかもしれません。

パーパスとミッションの大きな違いは、パーパスは「社会的な」存在意義、つまり、社会に対してどう貢献しているのか、という視点が加わった、ミッションよりひとつ高い視座に立っている、と言う点です。

企業によっては、パーパスとミッションを同義語として扱っているところもあるかもしれませんが、厳密には、パーパスの方が視座が高い「存在意義」と言えるでしょう。

 

先述のソニーの例で言うならば、Sony’s Purpose & Valuesに集約し、次のように定義しています:

Purpose存在意義

クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。

Values価値観

夢と好奇心~夢と好奇心から、未来を拓く。

多様性~多様な人、異なる視点がより良いものをつくる。

高潔さと誠実さ~倫理的で責任ある行動により、ソニーブランドへの信頼に応える。

持続可能性~規律ある事業活動で、ステークホルダーへの責任を果たす。

 

パーパスを構築する3つのステップ

Step 1: Identify ~発見する~

パーパスは、「何のために自社が存在しているのか」という存在意義を見出すものですので、根源に立ち帰る作業が最初に必要になります。

これまでも、ミッションやビジョン、バリュー、というような形で、企業の価値観を言語化してきていることと思います。パーパスを構築するためにはまず、これらの言語化してきた企業の価値観を、すべて洗い出してみましょう。このプロセスは、One BIG Messageを引き上げていくプロセスと、実は同じです。

その際、ポストイットを使いながら、1枚につき1アイデアを記載し、壁に張りだしていくと、後で整理をしやすくなります。

アイデアが出つくされた、と言う段階になったら、今度はポストイットを見ながらチームで討議し、似たようなアイデアをカテゴリーごとにグルーピングしていきましょう。各グループにはタイトルをつけていきます。そして各タイトルを照らし合わせながら、最も大切な、根源を表現できるコンセプトはどう言語化できるのか、更に討議し、One BIG Messageとして引き上げていきます。

Step 2: Internalize ~自分事にする~

One BIG Messageとしてパーパスを言語化できたら、今度は自社内はもちろんのこと、社外のステークホルダーたちも含め、一人一人が「自分事」として捉えることが出来るよう、パーパスの世界観を体験できる機会を作ることです。

そのためには、まず、ステークホルダーたちが、自分自身の「個人のパーパス」を考える機会が必要です。

その上で、各々の「個人のパーパス」と、「企業のパーパス」の共通項を探していくのです。そうすることで、個人のパーパスと企業のパーパスが共鳴しあいます。

特に、リモートワークや働き方の多様性が広がっている今日においては、ステイクホルダー一人一人が孤立してしまうリスクも高まっています。だからこそ、個人のパーパスと企業のパーパスをすり合わせ、同じ方向を向いて業務に取り組んでいけるよう、「パーパス」を共通基盤として設置することが大切なのです。

Step 3: Externalize~伝え、外面化する~

自分事化がある程度進んだ段階で、更にこのパーパスが事業活動のあらゆる側面で変革とイノベーションを起こすよう、パーパスと事業領域を照らし合わせながら、事業活動に落とし込んでいきます。例えば、自社がもつ各事業領域、商品・サービス領域などはもちろんのこと、人事採用・育成、組織づくりや経営リーダーシップ、システム構築、業務プロセス、などにおいてです。企業のすべての活動は、パーパスを基点として行われるよう、設計していくことで、マインドセットに変化が訪れ、イノベーションが生まれていきます。

もちろん、マインド変革を起こすということは、一朝一夜ではできませんし、綿密な戦略プランの設計が必要になります。その中で、最もマインド変革の近道にあるのは、「ストーリー」なのです。

パーパスを効果的に社内外に伝えていくには?

パーパスこそストーリーが効果的

パーパスが文字として示されているだけでは、組織変革やイノベーションにはつながっていきません。

経営層やチームリーダーなどのミドル層自らが、それぞれの立場に置き換えて、「自分のことばで」パーパスをストーリーとして語っていくことが必要なのです。

アリババ創始者のジャック・マーがビジネスを成長させたのも、ほかならぬストーリー能力でした。

ソフトバンクの孫正義氏が、中国のビジネスプレゼンのミーティングに来ていた時のことです。

ジャック・マー以外のすべての人たちは、しっかりしたビジネスプランや戦略を発表した中で、彼だけがそのような戦略はなく、どんな未来を作りたいのか、アリババはどんな会社になってどう世界に貢献するのか、なぜこの世界にアリババが必要なのか、どんな存在であるのか、これからのビジョン、そして、パーパスをストーリーとして語りました。

それに孫正義氏は感銘を受け、20億円をアリババに投資した、と言います。

世界のエリートは「自分のことば」で人を動かす

ジャック・マーが語って見せたのは、ビジネスプランや戦略ではなく、「未来予想図」(ビジョン)であり、「世界における存在意義」(パーパス)です。なぜ存在するのか、どんな未来を作り、どう世界に貢献したいのか。

それをストーリーとして語れっところに、ジャック・マーの力がありました。

だからこそ、このリーダーを信じたい、投資したい、この会社とビジネスを共にしたい、と思わせる力があるのです。

パーパスを具現化して見せる、最大の近道が、ストーリーなのです。

ビジネス戦略としてのストーリーは、やみくもに語るのでは効果がありません。

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