「信元夏代のスピーチ術」編集長 信元です。
海外でも通用するパブリックスピーキング、というと、英語力を上げなければ!と考える人が多いモノです。
でも、ノンネイティブの私たちにとって、ネイティブと対等に話せる英語力を養うのは至難の業。
一方で、パブリックスピーキングは、習得しうる「スキル」です。
聞いている相手がたった一人でも、何百人の聴衆でも、彼らの心を掴み、メッセージを明確に伝え、その結果彼らが動いてくれるための秘訣は、実は言語力そのものではありません。
例えば、あなたは日本語がネイティブですが、日本語なら素晴らしいスピーチができる!と自信を持って言えるでしょうか?
そうとも限らないですよね。
グローバルに通用するパブリックスピーキングには、コツがあるのです。
「異文化圏の相手」への話し方のコツ
日本という枠を外して、世界で日本人グローバルリーダーとして活躍したい皆さんなら、異文化の人々に対して「話をする(=スピーチ)」という機会が必ずあるはず。
その相手が少数名の現地社内スタッフでも、現地大手企業の交渉相手でも、或いは不特定多数の大勢の聴衆だったとしても、異文化圏の相手の心をいかにして鷲づかみにし、スピーチの間じゅう、彼らの心を捉え続けられるかがスピーチの肝であり、醍醐味でもあります。
前回、オープニングの7秒で印象が決まるため、冒頭からインパクトを出すために様々な手法があることをお話しました。
*聴衆は、最初の7秒であなたの印象を決めて、30秒であなたの話を聞きたいかどうか判断します。
*「ブレイクスルー・スピーキングTM」で提唱している、インパクトあるオープニングには7つの手法がありますが、その一つが、実は「無言で始める」です。
今回は、異文化ビジネスの事業コンサルタントならではの視点から、スピーチ教室でも英語学校でも教えてくれない「異文化圏の相手」への話し方のコツについてお話します。
異文化の人々へのスピーチでは、メッセージの低コンテクスト化が必要
アメリカの文化人類学者、エドワード・ホールによる、「高コンテクスト」「低コンテクスト」というモデルを簡単にご紹介しましょう。
「高コンテクスト」とは、実際に言葉として表現された内容よりも、わざわざ言葉にしなくとも相手に理解される(理解したと思われる)内容のほうが豊かなコミュニケーションアプローチで、日本語はその最極端な例とされています。
非言語メッセージに頼るコミュニケーション方法を取ることから、「高コンテクスト」なコミュニケーションを取る文化は、「察しの文化」などとも表現されます。
一方で「低コンテクスト」とは、言葉に表現された内容のみが情報としての意味を持ち、言葉にしていない内容は伝わらないと考えられるコミュニケーションアプローチで、最極端な例にはドイツ語が挙げられています。
「察しの文化」に対し、こちらは「言葉の文化」と表現されます。アメリカも非常に「低コンテクスト」な文化圏である、と考えられています。
「高コンテクスト」「低コンテクスト」文化の差が起こす問題
例えば日本人なら頻繁に聞くことの多い、「それは難しいです」という表現。
日本人なら、「つまりNoということなんだな」とすぐに理解することが出来るでしょう。
しかしそれを非日本人に対して「It’s difficult」と伝えたらどうでしょう。
「低コンテクスト」な文化圏の人ならば言葉通りに受け取りますから、「Difficultということはチャレンジングなのだな。ではボトルネックを解消すれば実現可能なんだな。きっとこれが実現できたら自分の評価は上がるはず!やってみよう!」と、本来の意図とは正反対の捉え方がされるかもしれません。
前述のとおり、日本は高コンテクストの度合いが最も高い文化圏にあります。
つまり、日本人が異文化の人々に対してスピーチをする際、どの国の人であっても、コンテクストの違いが必ずや発生するために、高コンテクストなままの「日本的」メッセージでスピーチ原稿を作ってしまうと、意図が明確に伝わらないだけでなく、誤解を生んだり信頼を損ねたりすることすらある、ということなのです。
これは日本人特有の異文化コミュニケーション上の課題である、とも言えます。
ですから、日本人としては、極力低コンテクスト化したメッセージに落とし込むことを心がけることが大切です。つまり、「それは難しいです」ならば、「現時点ではリソースが不足しているため、その案を採用することは出来ません」のように、論理的に理由を述べた上で、直接的なメッセージを提示することです。
日本人相手にも応用できる異文化コミュニケーション
筆者はアメリカ在住暦20年目に突入しますが、これまで実に沢山の異文化コミュニケーション上の失敗を経験してきました。
それ故に沢山学びの機会があり、今に至るわけですが、過去の痛い失敗は実は、アメリカ人相手ではなかったのです。
日本人相手の失敗ケースの方がはるかに多発していました。
異文化コミュニケーションのコツを、あえて一言でまとめるとすると、「適応」です。
自分の普段のコミュニケーション手法を、相手によっていかにフレキシブルに適応させることができるか、ということです。
それは自身の核となるフィロソフィーや信念、意見は変えずに、伝え方を様々に変化させ、相手に最も響く伝え方へと適応させることで、相手の心は動き、説得され、共感してくれるのです。
上記で、日本は高コンテクストの度合いが最も高い文化圏であるため、異文化の人々に対しては低コンテクスト化することが大切、と述べましたが、筆者は高コンテクスト⇒低コンテクスト、という適応の仕方を頻繁にしていたために、低コンテクスト⇒高コンテクストへ戻す「適応」が、ごっそり抜け落ちてしまった時期があったのです。
「異文化」を考える際に行き着く結論
例えば、戦略コンサルタントとして日本人のクライアントにある提案をした時、低コンテクストに、つまり直接的かつ明瞭簡潔に、論理的思考で説得しようとした際、非常に高コンテクストだった日本人クライアントにとっては圧迫感を感じるコミュニケーション方法となってしまったのです。
その結果、その日本人クライアントは、「自分のこれまでの経験を尊重されてない」、「顔が潰された」、「外部からそんなことを言われる筋合いはない」、と感じてしまい、筆者はクライアントから大きな怒りを食らう結果となってしまったことがありました。
同じ日本人同士だったとしても、置かれてきた環境や価値観は大きく異なります。
つまり、「異文化」を考える際、最終的に行き着くのは、国と国の文化の違いではなく、個人と個人の文化の違い、ということなのです。
ですから、誰かと話をする(=スピーチ)ということは、必ず、自分の普段の伝え方を「適応」させる必要があるため、異文化コミュニケーションの理論を踏まえたスピーチ技術は、実は対日本人にも非常に有効な手法だといえます。
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