「良い質問」はどうしたらできるようになる?
「信元夏代のスピーチ術」編集長 信元です。
前回『ビジネス必須スキル!積極的傾聴(アクティブリスニング)の実施方法』で、積極的傾聴とは聴くだけではなく、良い質問を通し相手のプロセスを刺激すること、とお伝えしました。ではその良い質問とやらを実際どのようにすればいいのでしょう。
実はこれにもきちんと手法があります。
そこで今回は、積極的傾聴法の鍵、「良い質問」を戦略的に作る方法についてご案内します。
前回の記事をお読みでない方の為に、まずは前回までのおさらいです。
積極的傾聴の実施方法(前回のおさらい)
積極的傾聴では、まず最初に「Step1.聴いていることを示す」次に「Step2.理解していることを示す」最後に「Step3.良い質問を通し、相手の思考プロセスを刺激する」この順番で、相手に気づきを与え、良い答えを引き出すのが特徴です。
- STEP1:聴いていることを示す
- STEP2:理解していることを示す
- STEP3:良い質問を通し、相手の思考プロセスを刺激する
このステップの中で鍵となるのが、「ステップ3.良い質問を通し、相手の思考プロセスを刺激する」です。このステップを実施するには、良い質問とは具体的にどのような質問のことか理解していないと実施できません。そこで、良い質問を理解する為に、4つの質問の種類をそれぞれの相関図と共にご紹介しました。
前回の記事を読まれていない方の為に、こちらについても再度ご案内します。
4つの質問の種類
まず質問には、軽い質問、重い質問、悪い質問、良い質問、の4種類あることをご存知でしょうか。
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軽い質問
「軽い質問」とは、答えやすいが、気づきは得られない質問です。例えば、「最近ゴルフの調子はどうですか」、「週末はどのように過ごしましたか?」などの質問で、相手との関係づくりの初期段階など、アイスブレイクとして軽い質問を投げかけることは有効です。が、気づきや行動にまで持って行くことはできません。
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重い質問
「重い質問」は、気づきはありますが、なかなか進んで答えたいとは思えないような質問です。例えば、「なぜあなたは同じ間違いを何度もするのですか?」、「あなたの経営者としての手腕を世界のトップ経営者と比較したらどんなレベルなんでしょうね」というような質問です。
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悪い質問
「悪い質問」とは、答えたくなく、気づきもない質問です。「いつになったら結婚するの?」、「借金いくら抱えてるんですか?」など、相手との関係性を無視し、更にはどこか否定的なニュアンスのある質問です。
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良い質問
良い質問とは、「相手が自分から進んでそのことを考えて答えたくなり、かつ、答えた先に気付きや行動がある質問」。軽すぎず重すぎず、相手から良い答えを引き出せる、絶妙な質問です。自分にとっても相手にとっても実りの多い質問です。
4種類の質問の相関図
良い質問/軽い質問/悪い質問/重い質問
積極的傾聴の鍵はいかに「良い質問」ができるか
軽い質問だと相手にとって答えやすい質問でも、当たり障りのない対話で終わってしまいます。重い質問は気づきはあるが答えるには重すぎて躊躇され、やはり実りのある対話にはなりません。
良い質問ができると、自分にとっても相手にとっても実りのある対話が実現します。ですので、積極的傾聴では、良い質問が鍵になるのです。
前回の記事を読まれていない方は是非お読みください。
前回、「良い質問」についてお話しましたが、最も気づきが得られるのは、普段から考えている内在化した質問の近くにあるが、盲点のようになっていて、そのような観点からは考えたことのない、というような質問です。そのような「良い質問」を戦略的に作って行く方法についてお話します。
では、この良い質問、どうすればできるようになるのでしょうか。実はこれも手法があります。コーチングで指導する際にお伝えしている内容を特別にご紹介します。
3ステップで実施!良い質問の戦略的作成法
良い質問を戦略的に作る場合、以下3つの流れで実施していきます。このステップを実施する事で、誰でも戦略的に良い質問を作成することができる様になります。
- Step1.盲点を見つける
- Step2.「3つのV」を使って相手の話を聴く
- Step3.3つのV+5W1Hで「オープン・クエスチョン」を作る
1つ1つのステップの実施方法は以下。
Step1.盲点を見つける
普段から問いかける質問も相手の興味とかけ離れた質問も「良い質問」にならない
みなさんは普段、意識して良い質問を作ろう、と考えることはなかなかないのではないでしょうか。コーチ業をなさっていたり、ジャーナリストで取材をされたりする方ならある程度は経験があるかもしれませんが、毎日の生活の中では、知らぬ間に色々な質問を自分自身、あるいは相手に投げかけている、という状態ではないかと思います。
普段から問いかけている質問は、自分の中に内在している質問です。でも、そのような質問を繰り返しても、新たな気づきや行動にはつながりません。
では、相手の興味とかけ離れたところの質問ではどうでしょうか?そのような質問も、気づきや行動にはつながりません。自分が全く知らないことや関心のないことについては、人は考えることが出来ないからです。
盲点になっている質問をすることが鍵
最も気づきが得られるのは、普段から考えている内在化した質問の近くにあるが、盲点のようになっていて、そのような観点からは考えたことのない、というような質問です。
Step2.「3つのV」を使って相手の話を聴く
良い質問とは、答えやすく、かつ、「気付き」がある、という点が特徴でした。
良い質問とは
一言で言うならば、良い質問とは、「相手が自分から進んでそのことを考えて答えたくなり、かつ、答えた先に気付きや行動がある質問」、のことです。
「良い質問」ではない質問には、「軽い質問」、「悪い質問」、「重い質問」があります。
※前回の記事『ビジネス必須スキル!積極的傾聴(アクティブリスニング)の実施方法』より
気付きというのは、それまでに得た知識の蓄積や、考えたことの延長線上にあるものです。
ですから、良い質問を作るための効果的な方法は、本人の中で内在化している質問に近いけれど、「盲点」のように見逃しているポイントを探すこと。
ではどうすれば、そのような質問を見つけられるのでしょうか?
3つのVという切り口に沿って、相手の話を聴いていくことです。
「3つのV」
Vision/ビジョン
「Vision/ビジョン」その人が目指している状態、本当に手に入れたいもの、心からやってみたいと思っていること
Value/バリュー
その人が物事を判断するときに大切にしている価値観
Vocabulary/ボキャブラリー
その人が普段の会話や質問・回答のやり取りでよく使う言葉
慣れるまでは3つのVの記入欄をノートにあらかじめ作っておくのがおススメ
これらの3つのVについては、意識して傾聴していれば簡単に聞こえてきます。なれるまでは、相手の話を聴く前に、ノートに、「Vision」「Value」「Vocabulary」という欄をあらかじめ作っておくと良いでしょう。そして、3つのVを意識しながら話を聴き、聞こえてきた単語をその枠内に埋めながら、更に話を聴いていく、という作業をしてみてください。きっといままで気づかなかった、相手の深い部分まで見えてくることでしょう。
Step3.3つのV+5W1Hで「オープン・クエスチョン」を作る
3つのVが見えてきたら、それを、5W1H(What, Why, Where, Who, When, How)と組み合わせ、オープン・クエスチョンを作りましょう。
それぞれ、以下のような気づきや行動を促すのに有効です(ただしこれに限るものではありません)。
- WhyやHow・・・相手の思考を「深め」て気づきを与える質問
- WhatやWho・・・相手の思考を「広げ」て気づきを与える質問
- WhichやWhen・・・行動へと「進める」質問
オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョン
質問方法には、オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンの2つあるのをご存知でしょうか。
1つ目のオープンクエスチョンはイエス・ノーでは答えられない種類の質問。つまり、5W1H(What, Why, Where, Who, When, How)から始まる質問のことを指します。2つ目のクローズドクエスチョンは、イエス・ノーでこたえられる質問です。
クローズド・クエスチョンでは、相手の深い思考に切り込むことはできません。ですので、良い質問ではオープンクエスチョンを使います。
補足:クローズドクエスチョンは積極的傾聴の「理解していることを示す」段階で有効
クローズドは、積極的傾聴の2つ目のステップ、「理解していることを示す」、を実行する際に、相手の言っていることをしっかりと確認していく際に有効です。
STEP2:理解していることを示す
次に、ただ聴いているだけではなく、相手の言うことを理解していることを示します。例えば、相手が言ったことを復唱する、要約する、言い換える、などして、内容を確認していきます。相手が感情を示しているなら、その感情に寄り添ったり共感を示したりすることも、「理解していることを示す」につながります。
まとめ
- 積極的傾聴とは、積極的傾聴とは聴くだけではなく、良い質問を通し相手のプロセスを刺激すること
- 質問には「軽い質問、重い質問、悪い質問、良い質問」の4種類あり、良い質問以外をしても、積極的傾聴は実現しない
- いかに良い質問ができるか、が積極的傾聴成功の鍵
- 「積極的傾聴」は3ステップで実施
Step1.聴いていることを示す
Step2.理解していることを示す
Step3.良い質問を通し、相手の思考プロセスを刺激する。 - 「良い質問」は3ステップで戦略的に作成
Step1.盲点を見つける
Step2.「3つのV」を使って相手の話を聴く
Step3.3つのV+5W1Hで「オープン・クエスチョン」を作る。
積極的傾聴は難しい、だが鍛錬すれば実現できる
2回にわたり積極的傾聴法についてご案内しましたが、いかがでしたでしょうか。
「積極的傾聴」は、簡単なようで、実は難しいものです。
相手の話を聴きながら情報を整理し、どこの情報を更に掘ると最も気づきを与えられるのか、同時進行で脳内で分析しながら次にどんな質問をするのかを瞬時に選択していく、という力が必要です。従って、本記事でご紹介したステップを踏みながら、自分自身の中の枠を外した思考を鍛えていくことです。
具体的に学んでみたい方は、是非、信元の個人コーチングをご検討ください。