部下の指導で大切なAIDAの活用 説得力を持ってチームをやる気にさせるリーダーのスピーチ 

「何が人を動かすのか?」という問いは、さまざまな回答が存在する。しかし、それを理解することはリーダーであるあなたにとって、必要不可欠なスキルである。部下が何に心を動かされるのか理解し、それに対応してリーダーが行動を起こすことで、チーム全体のパフォーマンスを高め、組織の目的を達成することが可能となる。

 そこで、今回は、そもそもやる気、動機づけとは何かを考察し、どのようなスピーチをしたら、説得力を増し、チームのモチベーションを高め、やる気を喚起できるのかを解説したい。そのためのツールとして、AIDAモデルを活用し、具体的な事例なども紹介する。

何が人を動かすのか

「人を動かす原動力は何か?」という問いは複雑で、答えは人それぞれ異なるものだ。人が心を開き、受け入れやすくなるには、どうすればよいのか? 動機付けになるものは何かについては、その時の気分にも左右されるし、日によって、また、場面によっても変化する。

 メンバーのモチベーションを最大限に引き上げるためには、個々の理想、感情、思想、ニーズといった動機をリーダーが認識し、それらが組織やグループの目的と照らし合わせた時に、いかに一致しているかにかかっている。

 そのためには、リーダーが常にアンテナを立てて、チームメンバーが普段何を考えているのか、何に興味があるのか、などのニーズをあらかじめ把握しておく必要がある。その情報と自分が伝えたいメッセージ、組織の目的を加味し、重なる部分を大きくしていけばよい。

 このことに関しての具体的ノウハウは、こちらの記事を参考にして欲しい。

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「何が人を動かすのか?」を理解し、調査することは、リーダーにとって必要不可欠なスキルだ。説得力を増し、チームのモチベーションを高め、やる気を喚起できるスピーチをするために、AIDA(注意、興味、決断、行動)モデルを活用するのは部下を指導するのに有効な手段だ。

先生は一生懸命でも生徒はうわのそら

モチベーションを上げる2つの要素

モチベーションの持続性を保つには、モチベーションを高める刺激が継続していることが重要である。その刺激には、外から来る力(外発的)と内部から湧き上がる力(内発的)がある。

外発的刺激と内発的刺激

外発的動機づけの要因は、例えば、報奨、金銭的利益、罰などの物理的なものや行動だ。内発的なものとしては、各個人が持つ、うちに秘められた精神的、心理的なものであり、固有の感受性や、人生における固有の目的意識などだ。

外発的な動機付けは頻繁に用いられるが、報酬や罰がなくなると消えてしまうので持続性があるとは言えない。一方、内発的な動機付けは持続的で、個々の中にすでに存在している。それは新たに作り出されるものではなく、ましてや強制されるようなものではなく、ただ奨励されるだけでよい。

しかし、他者に自身の内発的な動機を押し付けることはできない。では、どうやって他者を動機付けるのだろうか? それを次に説明したい。

AIDAモデルを活用

具体的にどうやってやる気を喚起し、モチベーションを高めるのか。それを理解するために、AIDA」モデルという、元々マーケティング分野で用いられている理論を応用することが有効だ。

AIDAのそれぞれの頭文字は

  • Attention(注意)、
  • Interest(興味)、
  • Decision /Desire(決断/欲求)、
  • Action(行動)

を示しており、これらをスピーチに適用することで、説得力を高めることが可能である。

注意(Attention):

まず最初に、人を動かす前に、その人の注意を引く必要がある。そのためには、彼らが何に動かされるのかを理解することが重要である。

 ここで、先ほどの聴衆の動機付け要因に関する知識が役に立つ。もし、何が彼らを動機付けるのか、またその理由が分からなければ、その動機をサポートしたり、部下を方向付けたりすることはできない。チームメンバーが何によってやる気になるのか、なぜそうなのかを理解することで、あなたはリーダーとして彼らをサポートでき、導くことができる。何が個人を動機づけているのかを調べれば、あなたの話を聞く人たちは、インスピレーションを感じ、話に耳を傾け、同意する傾向が強まるように持っていくことができる。

 だから、スピーチの初めに、

  • 相手の心を引きつける強烈な事実や、
  • 驚きのエピソードを共有したり、
  • 印象に残る言葉や統計

などを挙げることが有効である。

 例えば、

「今日から我々のプロジェクトがスタートする。成功すれば、これは我々のキャリアに大きな影響を与える。しかし、失敗すれば、その責任は全て我々にある。我々はどう行動すべきか」

といった、強烈なメッセージ。

 他にも、たとえば、環境問題についてのスピーチであれば、「地球上で最後の白熊が絶滅する日が近い」というような衝撃的な事実を冒頭に述べることで、リスナーの注意を引くことができるだろう。

 しかし、上記の例は、全体に話す時で、緊張感を高めたい時には有効だが、これがもし、個人面談であったり、疲労感が全体的に広がっている場合は、話は当然変わってくる。相手の身近で興味のあること、家族の話や、ペットの話などで雰囲気を和ませ、相手の関心を惹きつけ、ラポールを築き、心を開いてもらうことが大切になる。

ここでのポイントは、相手が何によって動かされているかによって、話の内容が変わるということだ。

興味(Interest):

ストーリー

 注意を引いた次には、その興味を維持し続けることが重要である。ここでは、具体的なストーリーを伝えることが有効である。ストーリーは、人々がより深くメッセージを理解するのを助け、覚えているのを助ける。

例えば、

「このプロジェクトは、以前我々が取り組んだプロジェクトとは全く違う。我々が以前取り組んだプロジェクトで学んだこと全てが、このプロジェクトの成功に繋がる。我々が以前どのように困難を乗り越え、成功を収めたかを思い出してみよう。私の場合。。。」

といった具体的な話をすることで、メンバーの興味を引き続けることが可能である。

具体的な例え、図解やグラフ、画像も有効

 また、イメージが湧きやすいように、具体的な例を引き、それらを活発な描写や比喩で説明したり、統計データを図解したり、グラフにすることもいいだろう。視覚化は注意を引きつける効果的な方法であり、モチベーションを高める強力なツールでもある。たとえば、スピーチの中で比喩、例え話、インスピレーションを与える画像を使用して概念を説明し、聴衆が簡単にイメージできるようにする。

他にも、世界で消費される石油の量について話す場合、

サッカー場のサイズとその幅に等しい深さのスイミングプールをイメージしてもらい、その量を関連付けてみる。「このようなプールには 70 万バレルの石油が保管され、これは米国にとって 1 時間強の供給量に相当する」

などと例えてみる。

エネルギッシュなジェスチャー

 聴衆の注意を引くもう 1 つの効果的な方法は、エネルギーに満ちたジェスチャー(デリバリー)でスピーチを飾ることだ。 あなたの考えやイメージを、内に秘められた想いを、全身を使って伝えてみよう。

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心のデリバリーは宅配とは違います

決断・欲求(Decision・Desire):

興味を引くことができたら、興味からより強い欲求へと促し、さらに決断を促すステップである。これは、チームメンバーに何か具体的な行動を起こすように働きかけるステップである。この時、具体的な行動指示とそれが何故重要なのかを伝えることが重要である。

例えば、

「今から我々は、このプロジェクトの初めの一歩として、各自の役割と責任を明確にする。我々が成功するためには、一人一人が自分の役割を全うすることが不可欠である。今から各自が取り組むことを一つ決めてください」

というように、具体的な行動を指示する。

感情に訴える

また、熱意をジェスチャーだけに限定せず、声のトーン、話し方も活用し、理性のみではなく、感情にも訴えるようにして、聞き手の意思決定に影響を与える。

例えば、自身の経験や学んだ教訓を共有し、その時の苦労を話し(ストーリー)、それが相手の人生や仕事にどのように適用できるかを示すことは有効だ。

自らの決断を促す

他にも、問題の解決策をいくつか提案し、それぞれの利点と欠点を述べた後で、

「あなたならどれを選びますか?」

と問いかけることで、リスナーに自分で考えるきっかけを提供することができる。

行動(Action):

最後に、実際の行動に移る。ここでは、チームメンバーが具体的な行動を起こすことを助けるために、具体的な支援やリソースを提供することが重要である。

  •  目標達成のための具体的なステップとそれぞれの期限を示す
  •  それぞれのチームメンバーに具体的な役割と責任を割り当てる
  •  それがどのように自分たちや組織の目標につながるかを明確にする
  •  行動に移った結果を定期的に評価し、フィードバックを行う

これらのことが重要である。

 たとえば、

「今日中にセクションごとに考えをまとめ、明日午前9時までに具体的な取り組みをまとめて提出してください。たとえ小さな行動、例えば、ゴミを分別する、などでもいいでしょう。過去の事例はクラウドのタスクフォルダーに入っています」

とか、「今日から自転車に乗って通勤してみましょう」など、具体的な行動・期限などを示すことで、リスナーが具体的に何をすべきかを分かりやすくなるように導こう。

リーダーのメンバーに対する心情や動機の理解が大切

以上のように、AIDAモデルを通じて、チームリーダーとしての説得力と鼓舞力を高めることができる。このモデルを用いることで、各チームメンバーが自身の役割と責任を理解し、自己の動機づけを高めることが可能である。そして、これによりチーム全体のパフォーマンス向上と目標達成に寄与する。マーケティング用語であったAIDAだが、これをスピーチに応用することは極めて面白い経験となり、その効果は大きい。

 これらをうまく組み合わせたスピーチは人々の心を動かし、彼らが自分自身の内発的な動機に気づくきっかけを提供することができる。ただし、それが成功するか否かは、スピーカーがリスナーの心情や動機を理解し、それに応じたメッセージを提供できるかどうかにかかっている。

🔸スピーチがいかにマネジメントに役立つかについてはこちらの記事を参照されたい

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ブレイクスルー(BT)メソッドでリーダーとしてのスピーチを学ぶ

 ブレイクスルーメソッドとは、米国プロスピーカーとして活躍する当メディア編集長で、ブレークスルースピーキング代表の信元が、長年の知識と経験を元に日本人向けに開発したスピーチ学習オンライン型双方講座。内容は、スピーチ・プレゼンスキル向上のために開発された数あるメソッドの中からエッセンスを抽出したものを、しかも日本人がグローバルな場面で活躍できる場面を想定して作られている。

 さらに、基礎コースを終えた人には、実践コースも用意されている。定期的な間隔をおいて受講することで、学習者の進度状況を見ながら、その人に合ったコーチングが受けられ、部下の指導に適切なスピーチをしたい人にはこちらがおすすめだ。また、段階的にステップアップできるように違うテーマでも受けられる。かなり少人数なので、個人レッスンとほぼ変わらないクオリティだ。上級者には、個人コーチングも用意されている。

 ブレークスルーウェビナー基礎コースを受けることで、世界基準のビジネス特化型のスピーチ・プレゼン術を最短効果的に習得できる。私が本講座の講師となったストーリー『私がブレイクスルーメソッドの伝道師になった理由とは』でもお話ししているように、スピーチに必要な知識と技術が集約されており、これからスピーチ・プレゼンを本気で学びたいと思う方に、おすすめの講座といえる。オンラインで1か月、スピーチ・プレゼンのブレークスルーを体験してみてはいかがだろうか。

 

 

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