終身雇用とは、とうの昔の話になってしまった。今は、転職が当たり前。某大手会社の人事課の友人に聞いても、転職はもはやネガティブな要因ではないと言う。むしろ、それをポジティブにとらえ、前向きに人生を生きている姿に、逆に好印象を持つことも多いらしい。
そこで、積極的に転職を考えてキャリアアップしたい方々に成功していただくために、面接本番、特に自己P Rで一番気をつけたいこと、そしてそれを実現させるために今からすぐできることを、ここではお伝えしたい。きっと面接官に「デキるな」と思ってもらえるに違いない。
悪い例の典型
面接での応答でも、正式なスピーチでも、聞いていて苦々しく思うのは、何を言いたいのかがさっぱり分からない話だ。言いたいことがいくつも含まれていて、長々と述べているけど、結局何を言いたいのかが分からないスピーチ。よいスピーチとは、言いたいことが一つにまとまっていて聞きやすいものだ。
私は、長年通訳・翻訳に携わってきたが、経験上、日本語で話の上手い人は、大抵英語でも話が上手いと言える。たとえその英語が中学生程度のボキャブラリーに限られていたとしてもだ。その理由はこの「言いたいポイント」がはっきりしているからだ。
ちなみに、逆に英語が流暢に話せるからと言って、スピーチが上手いとは限らない。私は以前、英語のネイティブスピーカーは、全員、自分よりもスピーチが上手くて当然だと思い込んでいた。しかし、そうではなかった。英語が第二外国語の人が英語のスピーチコンテストで勝ち抜く姿を何度も目撃したし、まさか自分が優勝するとは思ってもいなかった。
つまり、言いたいポイントを言えない人がいかに多いか、ということだ。英語のネイティブスピーカーだったら、英語は流暢に話せる。日本人であれば、日本語は大抵の人は話せる。しかし、それを説得力を持って、しっかりと相手に自分の言いたいことを伝えられる人は少ない。
だからこれができるようになれば、その他大勢から抜き出られる、ということだ。
面接は短い即興スピーチと同じ
面接でも同じこと。面接でのトークは、短い時間の即興スピーチと同じ。言いたいポイントをはっきりさせ、上手く順序立てて話すことが大切。そうすることで、説得力も生まれ、相手を感動させる話ができるのだ。つまり、話し手の要点がクリアでないと、「この人採用しても仕事ができないかも」と面接官に思われても仕方がない。
大切なのは、ポイントは一つに絞ること
しっかりと相手に自分の言いたいことをクリアに伝えるには、言いたいことを、常に一つに絞ることが重要だ。どんなに長いスピーチでも、言いたいことは一つに絞れ、と弊社のブレイクスルースピーキング基礎コースでは指導している。
例えば、「自己PRをしてください」と言われて、あれもこれもと語り出すと、すごく嘘くさく聞こえてしまうし、結局あなたがどんな人か分からなくなってしまう。あなたは初対面の人をどれだけ覚えているだろうか。その人が何か一つ特徴があれば覚えるのは容易だろう。しかし、あれこれ捲し立てられると、「ただのおしゃべり」という印象が残るだけだ。
面接も同じこと。面接官とは実際初対面の場合が多い。何か一つの特徴、例えば「XXと言えばあなた」というようなことを強調しておけば、覚えてもらいやすいだろう。
だからここは思い切って、言いたいことを一つにまとめてみよう(これをブレイクスルーメソッドでは、ワンビッグメッセージと呼ぶ)。そして、その一つのことにまつわるエピソード、なぜそう言えるのか、などを後からサポートさせるのだ。
例えば、自分で書いた職務経歴書には、過去にあなたが達成した業績がたくさん書かれてあるかもしれない。でも、ここは、どれか一つを選ぶ。どれを選ぶかは、面接する会社に状況に応じて、先方の業務や、会社の成長に役に立ちそうな内容のものをピックアップすれば良い。他にも関連事項がいろいろあるかもしれない。でもそれらは、一つの一番言いたい内容「ワンビッグメッセージ」のサポート役に回せば良いのだ。
結論から話す癖をつけよう!
しっかりと相手に自分の言いたいことをクリアに伝えるには、普段から、結論から話すくせをつけておくと良い。そうすることで、話の要点がはっきりして、あなたの話がより分かりやすくなる。特に時間が短い面接時間ではなおさらだ。面接官の頭の中には、ひょっとして次の人のことや、後の予定のことがあったりするから、時間を節約できたような ”お得感” を与えることができて、好感度アップだ。
多くの人の場合、この言いたいことを一番最後に言う。特に日本語は、文法上動詞が後に来るので、そうなりがちだし、多くの学校で習う文章は、言いたいことが最後に書かれている。それが結論と呼ばれるものだ。
しかし、ここはあえて言いたいことをはっきりさせるために、結論から先に言うようにするといい訓練になる。普段の会話で、結論を後に回すと、自分でも何を言いたいのか分からなくなる時がある。だから、結論を先に言うことで自分の頭の中の整理にもなる。先に結論を言うと、それに縛られる格好になって、他に話にそれることがなくなる。そして、これを習慣化できれば、英語が上達しやすくなる、というおまけも付いてくる(これについては下記の関連記事を参照されたい)。
面接で勝つために、今日からできること、それは、毎日の会話で「結論から先に言うくせ」をつけることだ。こうすることで、あなたの面接時のワンビッグメッセージはよりクリアになるだろう。