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ハーバード大生にインパクトを与えた楽天
社内公用語英語化の成功事例
2010年、楽天は社内の公用語を全て英語に統一することを宣言し、2年間の移行期間を経て、その体制を整えた。これに対して、過剰反応したり、戸惑ったりする人も多いだろう。日本人特有の異常とも言える英語苦手意識や、日本人同士で英語を話すことの違和感からそんなリアクションになってしまう。だが、楽天の事例は、そんな国民性を尻目に英語化を一気にやり遂げた珍しいケースとして、米国ハーバード大学経営大学院で教材として取り上げられている。(佐藤智恵著「ハーバードでいちばん人気の国・日本」p182より)
楽天にとっては好都合なことが多かった。英語が公用語になることで、
- コミュニケーションが円滑に進み、作業が効率化した。
- 社員が世界中のリソース(人材、資金、情報)を共有できた。
楽天という企業の業態や文化にうまく英語が溶け込んだのだと思う。ちなみに、楽天は英語化を導入して5年後、TOEICの社員平均点が526点から814点まで上昇したという(楽天公式ウエブ)。日本人は英語が苦手と言われるが、日本人でも徹底して実践すれば立派にできることを、彼らは証明してくれた。
楽天の英語化をみんな真似すべきか?
社内公用語英語化3つのデメリット
一方で、社内公用語英語化にはデメリットもある。
1.導入への大きな負担
英語化は、組織にも社員にも大きな負担がかかる。実際にうまく動き出すには時間もかかるし、相応のお金や人材を投資しなくてはならない。楽天も宣言から実際にスタートさせるまでに、2年の試行期間を費やしている。
2.変化による混乱の発生
さらに、英語化によって企業文化が変わると、混乱を生むことがしばしばあり、場合によっては辞職する社員も出るだろう。
3.問題対応への時間やコスト
異文化間での摩擦の発生はつきもの。その時に備えて、対応できるシステムや人材は常に必要だ。法的なビザの対応などもある。
楽天のように、社員全員に対して英語習得を要求するのは、日本だけではなく、英語を母国語としない国々では、かなりハードルが高いかもしれない。
管理職のみ英語化して成功したEU
実際、多言語文化を背景に持つヨーロッパでは、管理職のみ公用語を英語化して成功したという企業の例もある。楽天がうまく行ったからと言って、そのマネをすることだけがグローバル化成功への鍵とは限らない。
英語を話すことが、そのまま直接グローバル化に繋がると誤解する人が多いが、それは大きな誤解だ。英語だけ取り入れても、国際的なコミュニケーション方法を学ばなかったら意味がない。英語を通してそのコツを学ぶのが目的なのだ。英語(言語)は意思疎通のためのツールの一つにすぎない。英語が広く使用されているから、たまたま英語が便利なだけであって、状況によっては他の言語の方が優位な場合もある。しかし、英語を練習することで、なんとなく国際人になったような気になってしまう。日本人の英語コンプレックスがそうさせてしまうのか。そこが失敗の罠なのかもしれない。人、カネ、モノ、経済における国際コミュニケーションのコツは、わざわざ外国語を習うまでもなく、母国語を通してでも習得できる。その方が負担が少なくてすむだろう。
言葉自体よりも円滑なコミュニケーションがカギ
グローバル企業トヨタの公用語は日本語
確かに、英語の方が世界中のリソースにアクセスしやすいことは事実だ。しかし、例えば、日本を代表するグローバル企業であるトヨタの公用語は日本語だ。だから「カイゼン」などの日本語が国際標準として使われるようになった。トヨタのように社内に独自のノウハウがあり、それが日本の文化によって醸成されたものなら、日本語を公用語にした方がその真髄が伝わりやすく、組織体としての強みをより発揮しやすくなるだろう。
真のグローバル化に必要なこととは?
くどいようだが、グローバル化のポイントは、外国人を含む社内のコミュニケーションを円滑にすることであって、英語を話すことではない。楽天のように英語を手段として成功すればよいが、リスクも大きい。日本語でも十分同じ目的が達成されることは、トヨタが示してくれている。
とは言っても、別のノウハウが必要になる。だから、外国人とのコミュニケーションを日本語で円滑に行うためには、どうするのがベストなのか。そこに集中し、自社、そして自分自身の「カイゼン」を追求し、試行錯誤することが、真のグローバル化への早道だと思う。
外国人との円滑なコミュニケーションの具体的なノウハウについては、別の記事を参照してほしい。なお、ブレイクスルーメソッド基礎コースでも、異文化コミュニケーションのコツについてより詳しく学ぶことができる。
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