ChatGPTで日本語から英語へ翻訳する時の上手な使い方:プロンプトをどう入力するか?

ChatGPTなどの生成AIは、いろんな用途に使えるが、日本語のメッセージを英訳する時にも使える有用なツールである。しかし、現在(2023年12月)他の翻訳ツールよりは、かなり性能が上がってきているものの、ただ英訳したい日本語を入力しても、出てきた結果がそのまま適切に使えるかと言うと、簡単なものを除いては、まだまだ使い物にはならない。ただ、使い方によっては、より完成度を高められる。

その使い方のコツとは、指示の仕方を工夫することだ。つまり、生成AIによる英訳が、本当に実際に快適に使えるようになるためには、生成AIに対して人間がどのように上手に具体的に指示できるかにかかっている。この指示の仕方をプロンプトと言うが、今回は、ChatGPTに対して、どのように指示するのがいいのか、どのようなプロンプトを入力すればいいのかを研究したい。

ちなみに、翻訳には、英訳(日本語から英語への訳)と邦訳(英語から日本語への訳)があるが、この記事では英訳にフォーカスしている。なぜなら、英訳の方が邦訳よりもずっと難しいからだ。その詳しい背景などは、こちらの過去の記事を参照されたい。また、

さらに、Google翻訳がどの程度まで使えるのかの記事は下記に詳しい。

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プロンプトとは何か

 ChatGPT に対して、「プロンプトとは何かについて説明してください」と質問したら、下記のような答えが返ってきた。

プロンプトとは、特定のタスクや応答を促すための指示や質問のことです。コンピュータプログラム、特に人工知能(AI)や対話型システムで一般的に使用されます。プロンプトの目的は、ユーザーの要求や質問に対して特定の形式や内容で応答するために必要な情報を提供することです。

たとえば、AIに対して「東京の天気予報を教えてください」というプロンプトを入力すると、AIはその要求に基づいて天気予報の情報を検索し、応答します。また、創造的なタスク、例えば画像生成のためのプロンプトでは、望む画像の詳細な説明を含めることが求められます。

プロンプトは、その使われ方やコンテキストによって異なる形をとりますが、基本的にはユーザーの意図を正確に伝えるための手段として機能します。効果的なプロンプトは、クリアで具体的な指示を提供し、期待される結果や応答を得るのに役立ちます。

  プロンプトが変わると、生成A Iからの回答が変わるので、うまくその方向性が合えば、自分が求めるものにより近い形となって現れる。

プロンプトに工夫を加え、より具体的な指示を出す

 例えば、シンプルに

プロンプト1「次の文章を英訳してください」

とだけ、指示してさせると、確かに、グーグル翻訳よりもより質の高い英訳を得られることができる。しかし、誤訳する場合もあるし、相手に対して不適切、つまり、失礼だったり、冗長だったりする文章が上がってくる。

しかし、プロンプトを工夫することによって、少しこの誤差を縮めることができるようになる。

例えば、

プロンプト2「次の文章を英訳してください。読者は友達なので、カジュアルだけど、丁寧な感じの言い方にしてください」

などと指示してみる。

 では、実際に英訳を試みてみよう。試しに、

日本語原文メッセージ:「明日の集合は8時半です。場所は東京駅の北口です。遅れないで来てください」

というメッセージをChatGPT-4.0(有料版)に英訳させてみた。

プロンプト1(工夫なしの英訳)

 プロンプト1の英訳に対する和訳:「明日の集合時間は午前8時30分です。 場所は東京駅北口です。 遅刻しないようご注意ください。」

プロンプト2(工夫を加えた英訳)

 プロンプト2の和訳:「こんにちは! 念のため確認するね。明日は午前8時30分に集合します。場所は東京駅北口です。遅刻しないようにお願いします!」

 このように、プロンプトを変えることによって、微妙に違う英訳が出てきた。プロンプト2は、こちらの指示通り、親しみやすい表現だが、丁寧な言い方になっている。これは、文法的にも合っているし、表現も適切なので、そのまま使っても構わない。このように、特に難しくない、ごく簡単で短い文章(日常会話で使う表現)の場合は、ChatGPTの英訳でも十分に使えるので、大いに活用したいものだ。

 一方で、プロンプト1は、それだけでも十分使えるのだが、この文脈で使うには、とても硬い感じがして、親しい友人に送るにはちょっと抵抗がある。なんだか、よそよそしい感じになってしまっていて、相手との間に距離感が出てしまう。

 換言すると、短くて簡単な日本語の文章であれば、プロンプトを工夫することによって、より細かいニュアンスを表現して訳してくれる、ということでもある。では、長くて複雑な文章に応用する場合は、どうすればいいのだろうか。

結論1:日常会話で使うようなシンプルな表現の場合は、ChatGPTの英訳でも問題ない

🔸参考:ChatGPT3.5(無料版)とChatGPT4.0(有料版)の違いについても、下記の記事で解説しているので参考にして欲しい。

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英訳におけるプロンプトの工夫の仕方

 さらに、ChatGPT-4.0に、どのようにプロンプトを作れば良いか聞いてみた。

プロンプトの5つコツ:

日本語から英語への翻訳を効果的に行う際のプロンプトのコツは以下の通りです:

1. 明確な文脈の提供:翻訳する文の文脈を明確に説明してください。これにより、文が持つニュアンスや意図を正確に捉えることができます。

2. 具体的な指示:特定のスタイルやトーン(例:フォーマル、カジュアル、専門的)で翻訳を希望する場合、それを指定してください。

3. 省略や短縮形の避け方:日本語には省略されることが多い主語や、短縮形があります。これらの情報が重要であれば、それを伝えてください。

4. 特定の単語やフレーズの取り扱い:直訳しないで欲しい単語やフレーズがあれば、その指示を加えてください。

5. 対象読者:翻訳の対象となる読者(例:ビジネス関係者、子供、一般大衆)がいる場合、その情報を提供してください。

これらのコツを活用することで、より正確で意図に沿った翻訳が得られます。翻訳をお願いする際には、これらの点を考慮してプロンプトを作成してみてください。

 これだけの回答だと、具体性に欠けるので、次のようなプロンプトを入力し、さらに補足するように指示を出してみた。

プロンプト3:上記の「日本語から英語への翻訳を効果的に行う際のプロンプトのコツ」について、5つの点を挙げてくれましたが、それぞれの点について具体的なプロンプトの例を挙げて解説してください。

プロンプトの5つ具体例

ChatGPT-4.0の回答

もちろんです。それぞれのポイントについて、具体的なプロンプトの例とその解説を示します。

1. 明確な文脈の提供
– プロンプト例:「友人への感謝の手紙を英訳してください。私たちは長い間親しい友人で、彼が最近私を助けてくれたことに対して感謝を表したいです。」
– 解説:このプロンプトでは、翻訳する文書が友人への感謝の手紙であること、そしてその友人関係が長いことが説明されています。これにより、翻訳者はより適切なトーンと表現を選ぶことができます。

2. 具体的な指示
– プロンプト例:「ビジネスメールを英訳してください。フォーマルな表現を使用して、敬語で書いてください。」
– 解説:このプロンプトは、翻訳する文書がビジネスメールであり、フォーマルなスタイルと敬語を使用する必要があることを指定しています。これにより、翻訳はよりビジネス向けの適切なトーンで行われます。

3. 省略や短縮形の避け方
– プロンプト例:「この日記を英訳してください。日本語の日記には主語が省略されていることが多いので、文脈から主語を推測して補ってください。」
– 解説:日記はしばしば主語を省略するため、このプロンプトは翻訳者に文脈から主語を推測し、それを英文に加えるよう指示しています。

4. 特定の単語やフレーズの取り扱い
– プロンプト例:「この詩を英訳してください。”桜”という単語はそのまま”Sakura”として残して、直訳しないでください。」
– 解説:この例では、「桜」という単語を日本語のまま保持するように指示しています。これにより、詩のオリジナルの美しさと文化的意味が保たれます。

5. 対象読者
– プロンプト例:「この子供向けの物語を英訳してください。言葉遣いは子供が理解しやすいように簡単で親しみやすいものにしてください。」
– 解説:このプロンプトは、翻訳の対象が子供であることを明示し、そのために簡単でわかりやすい言葉を使用するよう求めています。

これらのプロンプトは、翻訳のニーズや文脈に応じて適切な情報を提供することで、より効果的な翻訳結果を得ることができます。

 ここまで見てきて分かるように、漠然としたプロンプトに対しては、漠然とした回答しか返ってこない。上記のように、具体的に指示することで、より満足度の高い回答を得ることができる。相手は機械なので、指示されないことはしてくれない。英訳も同じこと。一つひとつの条件に対して具体的に指示することで、より完成度の高い英訳を得ることができる。

 では、具体的にどの程度までできるのか、実験してみることにする。全体的な傾向としては、過去の経験がら言えることは、書き方が決まっている論文などの方が、文学作品よりも、より正確に訳すことができるようだ。

 前回、前々回のブログ(下記の関連記事を参照)で、夏目漱石の「こころ」の冒頭部分の英訳に試みた。その結果、いろんな問題点を見ることができた。今回は、比較できるように、同じ文章を使って、プロンプトに工夫を加えたら、どのような変化があるのかをみてみよう。さらに、正式な訳との比較もしてみることとする。

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英訳をプロンプトの工夫でカイゼンできるか? 漱石の「こころ」の英訳に挑戦

 では早速、ChatGPTを使って、前回の記事と同様、夏目漱石の「こころ」に出てくる別の冒頭部分の文章を英訳してみよう。なお、比較する正式な英語版としては、マクレランMcClellan版から引用させていただいた。

(原文2)学校の 授業が 始まるには まだ 大分 日数があるので 鎌倉に おっても よし、 帰っても よしと いう 境遇に いた 私は、 当分 元の 宿に 留まる 覚悟をした。 友達は 中国のある 資産家の 息子で 金に 不自由のない 男 であった けれども、 学校が学校なのと 年が年なので、 生活の 程度は 私とそう 変りもしなかった。 したがって 一人ぼっちに なった 私は 別に 恰好な 宿を 探す 面倒も もたなかったの である。

(正式な英訳2)There were many days left before the beginning of term, and I was free either to stay in Kamakura or to go home.  I decided to stay.  My friend was from a wealthy family in the Central Provinces, and had no financial worries.  But being a young student, his standard of living was much the same as my own. I was therefore not obliged, when I found myself alone, to change my lodgings. 

(前回のAI英訳2)Since there were still many days before the start of school, I found myself in a situation where staying in Kamakura or returning home were both viable options. I decided to stay at my original lodging for the time being. My friend, the son of a wealthy family from China, never had to worry about money. However, given the nature of our school and our age, our lifestyles were not much different. Therefore, being left alone, I did not bother to look for a more suitable lodging.

前回の問題点

1. 仰々しく冗長な表現

AI訳: I found myself in a situation where staying in Kamakura or returning home were both viable options(鎌倉に残るか、実家に帰るか、どちらも選択肢として考えられる状況になりました)。

正式な訳:I was free either to stay in Kamakura or to go home.  I decided to stay.(鎌倉に残るか帰るかは自由だった。残ることにした。)

AI訳は、原文に忠実に訳しすぎてしまって、英語において、もっと簡単に言えるにも関わらず、そこまでは表現しきれないでいる。

2. 誤訳

を、隣国の中国、Chinaと訳してしまったが、これは、中国地方のことなので、完全に誤訳であった。

3. 適切な言葉の選択を行い、微妙なニュアンスの表現ができない

AI訳:I did not bother to look for a more suitable lodging(より適当な宿を探す気にもならなかった)。

正式な訳:I was therefore not obliged, when I found myself alone, to change my lodgings(したがって、私が一人になったときに、下宿を変える必要(義務)はありませんでした)。

原文の日本語にある主人公の性格を反映して、適切な言葉を選択することができなかった。詳しい解説は、前の記事を参照

プロンプトを工夫してみた修正結果

以上の3点を改善すべく、プロンプトを工夫して次のように指示してみた。

プロンプト4:次の文章を以下の5点に注意して、英訳してください。

  1. 1. この文章は明治時代に書かれた文学作品(夏目漱石の「こころ」の冒頭)一部です。
  2. 2. 文体は読者に親しみやすい文章にしてください。
  3. 3. 冗長で仰々しい表現は避けてください。
  4. 4. 「中国」とは、日本の中国地方のことです。
  5. 5.  “bother”は使わずに表現してください。最後の文章には、比較級を使わないこと。

プロンプト4によって得られた結果は下記のとおり。

英訳4 ”Since there was still quite a few days before school started, I found myself in a situation where staying in Kamakura or going back home was equally feasible. Thus, I decided to remain at my original lodging for the time being. My friend, a son of a wealthy family from the Chugoku region of Japan, never lacked money. However, due to the nature of our school and our age, our living standards weren’t much different. Consequently, left on my own, I felt no particular urgency to search for a more suitable place to stay.”

 プロンプト4の中で、明治時代に書かれた文学作品であることを明記し、親しみやすい冗長な文章を避けることを指示した。しかし、仰々しく冗長な表現だった点は、英訳4では、あまり改善されなかった。

冗長な英訳4:I found myself in a situation where staying in Kamakura or going back home was equally feasible. Thus, I decided to remain at my original lodging for the time being.(鎌倉に残ることも、故郷に帰ることも、どちらも実現可能な状況に陥った。 ということで、当面は元の宿舎に残ることにした。)

正式な訳:I was free either to stay in Kamakura or to go home.  I decided to stay.(鎌倉に残るか帰るかは自由だった。((だから)残ることにした。)

 一方で、具体的に指示を出した結果、中国地方のことを誤訳しないで済んだ。

 また、具体的に「bother」という単語を避けて訳すように指示したところ、確かにbotherを使わずに訳せた。

 しかし、どうしても比較級を使った a more suitable place (より良い場所)を修正することはできなかった。

不完全な英訳4:Consequently, left on my own, I felt no particular urgency to search for a more suitable place to stay.(その結果、一人になった私は、より適切な滞在先を探す特別な緊急性を感じませんでした。)

正式な訳:I was therefore not obliged, when I found myself alone, to change my lodgings(したがって、私が一人になったときに、下宿を変える必要(義務)はありませんでした)。

 あまり満足のいく結果は得られなかったが、プロンプトを工夫することによって、最初に出てきた結果を改善することができることが確認できた。コツは、曖昧な指示ではなく、できるだけ具体的な指示の方がいい、ということだ。

プロンプトでは、具体的に指示することが改善のコツ

 短くてシンプルな日常会話のような文章を英訳するには、AI(人工知能)は、とても上手に訳すし、プロンプトを工夫することによって、細かいニュアンスを表現することができた。

 しかし、長くて複雑な文章を英訳する場合において、プロンプトの具体的な指示を考えるのは、日本語と英語が両方堪能な人のアシストなしには、相当難しい。ただ、プロの翻訳家、通訳者にとっては、その難しい部分以外は、スムーズに訳してくれるので、時間が短縮される分、効率が上がり、AI翻訳ツールは、有用な道具として使うことができる。

 冗長な文章はカイゼンされなかったが、そもそも、AIにとって「冗長な文章」というのが曖昧なのかもしれない。何が「冗長」なのかを具体的に示して、それら学習させれば、もっと上手な英訳を生み出してくれるのかもしれない。

 今回は、文学作品における英訳の実験なので、A Iにとっては、少し難易度が高かったかもしれない。しかし、プロンプトを具体的に指示し続けて、AIに学習させ続ければ(ディープラーニング)、やがて、もっと完成度の高い英訳を生み出すことができる日が来るかもしれない。

🔸ChatGPTを使ってスピーチを作ってみよう!

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🔸日本文化を英訳する時の注意についてはこちらを参照されたい

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こわれたコップ

 

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