管理職の悩みをリーダーシップスキルで解決し、最高のチームを!【作り方事例あり】

管理職の一番の悩みはなんだろうか。メンバーの育成、業務改善、目標達成のためのプロジェクト推進など、多岐に渡ると思う。しかし根底にあるのは、自分と部下、部下同士、本部と現場など、それぞれの対立関係、利害関係をいかに整理し、いかに良好な人間関係を円滑に保てるかに、集約されるのではないか。なぜなら、業務改善、プロジェクト推進、と言っても、中心になるのは、その業務を支える人であり、プロジェクトメンバーたちだからだ。成果を上げていない組織をよく観察すると、そこで働く人たちが互いに陰口を言い合ったり、どんよりした空気に覆われている。一方、成功に向かって推進している組織は、各部署で働く人たちが納得し、やる気を持って、また、知恵を出し合って、協力しあって、一丸となって取り組む姿を容易に観察できる。そういうポジティブな雰囲気から生まれる力が、さらに良い方向へと組織を導いていくはずだ。そして、その力を生み出していくのがマネジメント力だと思う。

そこで今回は、管理職としての悩みを解決し、対立関係を解消し、一人ひとりが納得して働ける、アイデアが生まれやすい職場環境を作るためのマネジメントスキル向上について、具体的な方法を説明したい。特に、マネジメントスキル向上の10のステップの中から、特に重要なリーダーシップスキルを取り上げ、いかにそのスキルを磨くかについて詳しく解説したいと思う。

🔸マネジメントについてのより詳しい記事は、こちらを参照して欲しい

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リーダーシップで社内の風通しを改善:ある製造会社での事例

 これは、ある製造業の会社の新任マネージャーの談話だ。

 私が赴任した時には、部門間のコミュニケーション不足と誤解が原因で、陰口が言われるような雰囲気が広がっていました。この状況は、従業員の士気を低下させ、生産性に影響を与えていると感じました。そこで私は、まず全体会合を開催し、現状の問題を指摘し、それが全体に及ぼす影響を共有しました。そして、私はオープンで正直なコミュニケーションの重要性を強調し、陰口を言う行為が、いかにチームの一体感と生産性を損なうかを、率直に自分自身が感じたことをそのまま説明しました。

 しかし、最初は、単なる新人マネージャーのお題目と取られてしまい、上辺だけ合わせてくれているような雰囲気を感じました。そこで、私は、各部署のリーダーと個別に会い、私の本気度を伝え、協力を仰ぎました。そして一緒に、部門間の誤解と陰口を解決するための戦略を立てました。その結果、いろんな部門リーダーからの提案を受けて、定期的な部門間ミーティングの開催、共同プロジェクトの推進、そして部門間ローテーションプログラムを導入することで一致しました。お互いにお互いのことを理解し合うのが主な目的でした。

 さらに、私は従業員が互いに尊重と理解を持って接することができるために新しいポリシーを導入しました。それは、陰口を言う行為に対してそれを許さないゼロトレランスポリシー、そして従業員の率直な意見や提案を気軽に投稿できるオープンドアポリシーでした。これには、最初から協力してくれたのはごくわずかで、従業員からの大きな抵抗を感じました。しかし、以前からそれを改革したいと思っていたけどそれを言えずにいた人たちや、諦めていた人たちが少しずつ声を上げてくれるようになりました。また、定期的なチームビルディング活動(チームでないとできないような簡単なゲームなど)をするようになってからは、協力者が増えてきました。

 オープンドアポリシーについては、具体的には、従業員が匿名で意見や提案を提出できるフィードバックボックスをクラウドに設置して、彼らが自由に本音を書き込めるようにし、担当者が定期的にチェックし、私に報告が来るようにしました。

 これらの取り組みの結果、時間はかかりましたが、徐々に、従業員は互いに尊重し、協力し合う雰囲気を築き上げることができました。今では、互いに助け合い、建設的に知恵を出し合う環境が生まれています。これにより、従業員の士気と生産性が改善され、組織全体としてのパフォーマンスも大幅に向上しました。

 この事例は、マネージャーがリーダーシップを発揮し、問題を直接的に対処し、適切な戦略を立てることで、組織の文化を変え、従業員の行動を改善することが可能であることを示している。

疲弊する管理職が抱える悩みとは?

 ところで、最近、中間管理職は、働き方改革によって追い詰められているという。働き方改革は、2019年4月から施行されているが、現場の管理職は、それによって「過剰負荷」にさらされているというのだ。多くの企業で中間管理職が疲弊し、機能不全に陥り始めているらしい。

 過剰負荷を感じさせる要因として挙げられる大きなものは、先にあげた人間関係だ。例えば、上司からのプレッシャーと部下からの現場の声に板挟みになる、ということが一つある。また、多くの管理職が感じているのが、マネジメントスキル不足の問題だ。では、それを解消するために、例えば、中間管理職に対して、組織課題のすべてをマネジメント・スキルだけで改革しようと期待するのは限界があり、なぜならそれは、

サッカーの例えで言えば、それは、チームが弱いからと、キャプテンだけに「筋トレ」ばかりさせるようなものであり、それで試合に勝てるほど現在の市場は甘くない。今の管理職の窮状には、組織全体を見据えた構造的なサポートや戦略が必要だ。

東洋経済の記事は指摘している。

 管理職とは、大きく分けて、経営者と中間管理職がある。

 つまり、上の記事が指摘するように、この疲弊を解消するには、経営者側には、組織全体を見据えた構造的なサポートを中間管理職に提供するリーダーシップが求められる。例えば、経営者側が、中間管理職に対して、共に目標を決める時間やプロセス(定期面談の機会を設けるなど)を提供したり、さらにマネジメントスキルを学び、習得する機会を与えたりすれば、マネジメント上の迷いや悩みを整理する機会を得られ、一人で悩まずに済み、過剰負荷の一旦を軽減できるだろう。

 しかし、マネジメントスキルを磨くと一口にいっても、いろんなスキルがあるので、どのようなことを具体的にすればいいのだろうか。そこで、マネジメントとは何か、マネジメントスキルにはどんなものがあり、どうスキルアップさせればいいのかを次に見ていこう。

マネジメントとは?

 マネジメントとは何か。まずは、ピーター・F・ドラッカーの定義をご紹介しよう。

「マネジメントとは組織に成果を上げさせるための道具であり、機能であり、機関である」

 つまり、マネジメントとは組織の目標達成に向けて、人々やリソースを効果的に組織し、指導し、調整するプロセスを指す。しかし、多くの管理者が誤解しがちなのは、マネジメント=管理だと思っていることだ。

マネジメント=管理ではない

 管理は、より具体的なタスクに焦点を当て、日々の業務をスムーズに運営するためのプロセスであり、マネジメントの一部であるのに対し、マネジメントはより広範で戦略的な視点を持つプロセスと言えるだろう。

 では、マネジメントを成功させるための必要なスキルとは、具体的に何だろうか。それを次にご紹介しよう。

効果的なマネジメントを支える10のスキル

あなたのマネジメントを成功させるためには、以下のようなスキルが支えとなる。

  1.  コミュニケーションスキル:効果的なコミュニケーションはマネジメントの中心。これには、情報を明確に伝えることと、効果的に聞くことの両方が含まれる。
  2.  リーダーシップスキル:良いマネージャーは、チームを刺激し、指導する能力が必要で、これには強力なリーダーシップスキルが必要だ。
  3.  意思決定スキル:マネージャーはしばしば難しい決定を下さなければならないため、意思決定スキルを向上させることは有益だ。
  4.  委任スキル:改善のための一般的な領域は、効果的に委任することを学ぶこと。これには、チームに責任を信頼することが含まれる。
  5.  時間管理:マネージャーはしばしば複数のタスクと責任を同時にこなさないといけないため、時間管理は重要なスキルだ。
  6.  もめごと解決:どの職場でも対立が発生する可能性があり、マネージャーはそれを公平で生産的な方法で解決する能力が必要だ。
  7.  パフォーマンス管理:これには、明確な期待値を設定し、定期的なフィードバックを提供し、パフォーマンスレビューを処理することが含まれる。
  8.  変化対応管理:マネージャーは、小さなプロセスの変更から大規模な組織のシフトまで、チームを時々の変化を通じて、成長させ導く能力が必要だ。
  9.  戦略的思考:マネージャーは、チームと組織全体の未来の方向について戦略的に考える能力が必要だ。
  10.  共感能力:これには、自分自身の感情を理解し、管理すること、およびチームメンバーの感情に共感し、それに対応する能力が含まれる。

 これらのスキルをすべて完璧にしようと思っても、できる人など多分いないだろう。しかし、最高のリーダー、マネージャーとは、最低でも学び、成長しようと努力することを惜しまない人たちであり、実際にそういう人たちを私は知っている。マネジメントスキルとは、一生涯かけて学習するものであり、絶えず自己反省し、新しいアプローチを試し、他人からフィードバックを受け入れることにより、マネージャーは自分自身とチームの成功を最大化することができるものだと思う。

 さて、上記のマネジメントスキルについて一つ一つ詳しく解説していきたいが、今回は、冒頭から述べているように、二番目のリーダーシップスキルについて掘り下げてみたい。

🔸①のコミュニケーションについて、詳しい記事はこちらを参照して欲しい。

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リーダーシップスキルとは

良い管理職、優れたマネージャーは、チームを刺激し、指導する能力に長けている。これには適切なリーダーシップスキルが必要だ。

リーダーシップスキルとは、他人を導き、影響を与え、目標達成に向けて動機づける能力を指す。リーダーシップは、単に命令を出すことではない。強いて言えば、その人の人格から溢れ出るものであり、チームの信頼と尊敬を獲得し、他人を自身のビジョンに共感させ、共有の目標に向けて行動するように促す能力だと、私は思っている。

リーダーシップスキルを支える要素

リーダーシップスキルは、以下のような要素を含むことが多い。

1. ビジョン

リーダーは明確なビジョンを持ち、それを他人と共有する能力が必要。これにより、チームは目標に向けて一致統一した行動をとることができる。

2. 影響力

リーダーは、他人の意見や行動に影響を与える能力が必要だ。これには、説得力のあるコミュニケーション、信頼の構築(有言実行、模範となる態度)、他人の視点を理解する能力が求められる。

3. 動機づけ

リーダーは、チームメンバーが最善を尽くすように動機づける能力が必要だ。これには、ポジティブなフィードバックの提供、適切な報酬と認識、個々のニーズと目標の理解が含まれる。

🔸フィードバックの仕方についての詳しい記事はこちら

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会議で説明する経営者

4. 決断力

リーダーは、困難な決定を迅速かつ効果的に下す能力が必要。これには、リスク評価、情報分析、問題解決スキルが求められる。

5. 人間関係スキル

リーダーは、他人と効果的に意思疎通を図り、良好な人間関係を築く能力が必要だ。これには、共感、相手に対するリスペクト、アクティブリスニングなどが含まれる。

🔸人間関係スキルを磨くには、コミュニケーションスキルを磨かないといけない。それについての詳しい記事はこちら:

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なぜリーダーシップが必要なのか

では、なぜリーダーシップがマネジメントにとって必要なのか。その理由を考えてみよう。

1. ビジョンと方向性の提供

 リーダーシップは、組織全体に対する明確なビジョンと方向性を提供する。リーダーは、組織がどこに向かっているのか、何を達成しようとしているのかを明確にし、そのビジョンに向けてチームを導く。これにより、全員が同じ目標に向かって努力することが可能となる。

2. 動機づけとエンゲージメント

 リーダーシップは、チームメンバーを動機づけ、エンゲージメント(その役割に徹して深く関与する力)を高める役割を果たす。リーダーは、チームメンバーが自分たちの仕事に価値を見出し、自分たちの貢献が組織全体の成功につながると感じるようにすることで、これを達成できる。

3. 変化への対応

 組織は、社会の変化に対応して常に変わらないといけない。生産性の低い組織を観察すると時代の変化に対応できていないところが多い。新しい技術、市場の変化、それに伴う組織の成長など、これらの変化を効率的、効果的に対応するためには、時に、強力なリーダーシップが必要となる。リーダーは、変化に対応する案を示し、チームがそれに適応するのを支援し、変化が組織の目標とビジョンに合致するようにする。

4. 問題解決と意思決定

 リーダーシップは、問題解決と意思決定のプロセスにおいて中心的な役割を果たす。リーダーは、問題を特定し、可能な解決策を提案、または評価し、最善の行動方針を決定する。また、リーダーは、チームメンバーが自分たちの意思決定スキルを向上させるのを支援する。

5. チームビルディング

 リーダーシップは、チームの結束力と協力を促進する。リーダーは、チームメンバーが互いに信頼と尊敬を持つ環境を作り出し、協力して目標を達成するために働くことを促す。

これらの要素は、組織がその目標を達成し、競争力を維持し、持続可能な成長を達成するために不可欠なものだ。したがって、リーダーシップはマネジメントの重要な一部であり、効果的なマネジメントは巧みなリーダーシップスキルを必要とする。

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リーダーシップが欠けた時の問題点

リーダーシップは組織の成功にとって極めて重要な要素であり、その欠如が組織全体に悪影響を及ぼす可能性は大きい。では、リーダーシップが欠けるとどうなるのか、その時の問題をいくつか挙げてみたい。

1. 目標達成の困難

 リーダーシップが欠けていると、チームはバラバラになり、メンバーが共通の目標に向かって一致団結することが難しくなる。リーダーが明確なビジョンを示さず、そのビジョンに向けてチームを導くことができない結果、組織は目標達成が困難となり、メンバーはやる気を失い、疲弊することが多々見受けられる。

2. 低いモチベーション

 適切なリーダーシップは、チームメンバーのモチベーションを高め、彼らが最善を尽くすように持っていくことができる。しかし、リーダーシップが欠けていると、チームメンバーは自分たちの仕事に対する情熱やエネルギーを失う可能性が出てくる。

3. 高い離職率

 リーダーシップが欠けている組織では、従業員の離職率が高くなる可能性がある。従業員は、自分たちの努力が報いられず、認めてもらえていないと感じ、自分たちの成長と発展の機会が失われていると感じるかもしれない。

4. 不健全で暗い職場の雰囲気

 リーダーシップが欠けていると、組織文化や職場の雰囲気がネガティブな方向に進む可能性が大いにある。これは、不適切な行動が許容され、不満や不信感が蔓延する環境を生み出す余地が生まれてしまうからだ。

例えば。。。

 ある企業が新製品の開発プロジェクトを開始したとする。しかし、プロジェクトリーダーが明確なビジョンを持っていなかったり、チームメンバーを適切に指導できなかったりすると、プロジェクトは混乱と遅延に見舞われる可能性が出てくる。その結果、製品の品質低下、コストの増加、市場投入の遅れなどを招き、企業にとって致命的な結果をもたらすこととなるかもしれない。

 このように、リーダーシップの欠如は組織全体に深刻な影響を及ぼす可能性がある。そのため、リーダーシップスキルの向上は、組織の成功にとって重要な要素となってくる。

リーダーシップのタイプ

 リーダーシップと言うと、何か強引に物事を決めたり、強力に引っ張っていく人がイメージされがちだ。だから、「自分はそんな性格じゃないから、リーダーには向かない」と思い込んでしまっている人もあるかもしれない。しかし、人には、それぞれ違った性格があるように、その人に合ったリーダーシップの取り方というものがある。

 人は生まれながらにして、誰でもリーダーだ、というのが私の持論だ。なぜなら、どんなにリーダーシップをとりたくないと思っても取らなくてはいけない場面というものがあるからだ。例えば、親になった時などは、自然と子供に対してリーダーシップを取らなくてはいけないことが多々ある。それに何よりも、自分の人生のリーダーは自分自身なのだから、自分に対してリーダーシップを発揮しなくてはいけないと思うのだが、自分で決められない人というのが案外多いものだ。だから、特にそういう人たちに対しては、「リーダーシップが取れる資質は誰でも兼ね備えている」と言ってあげたいし、全般的にもそう思うのだ。

 誰でもリーダーシップの素質を持っているとしたら、その人の性格に合わせた、その人なりのリーダーシップのタイプが存在すると言っても不思議じゃないだろう。

 では、どんなタイプのリーダーシップが存在し、自分はどんなタイプのリーダーシップを取ればいいのか、については、ダニエル・ゴールマンの「EQリーダーシップ: 成功する人のこころの知能指数の活かし方」が参考になる。この本の中では、エモーショナル・インテリジェンス(EQ)がリーダーシップにどのように影響を与えるかについて詳しく説明されている。ゴールマンは、リーダーシップのスタイルが組織の文化を形成し、その結果として組織のパフォーマンスに影響を与えると主張している。彼は6つのリーダーシップスタイルを提唱し、それぞれが特定の状況でどのように効果を発揮するかを説明している。

EQとは

 EQは「Emotional Quotient」の略で、エモーショナル・インテリジェンス(EI)とも呼ばれる。これは、知性のみによる判断ではなく、自分自身と他人の感情を理解し、管理し、適切に利用する能力を指す。EQは、人間関係の成功、リーダーシップ、チームワーク、顧客サービス、そして全般的な人間関係において重要な役割を果たす。つまりは「思いやり」とか「愛」とか言われる部分を大切にしようという考え方だ。どちらかというと、知性のみの接し方だと「冷たい」と思われることが多いので、それに対抗して出てきた考え方だと私は思っている。

 EQは以下の5つの主要な領域から成り立つ:

  • 1. 自己認識:自分の感情を理解し、それが自分自身の行動や思考にどのように影響を与えるかを認識する能力。
  • 2. 自己管理:自分の感情を適切に制御し、ストレスを管理し、衝動的な行動を避ける能力。
  • 3. 社会的認識:他人の感情や視点を理解し、社会的なキューを読み取る能力。
  • 4. 関係管理:他人との関係を構築し、維持し、強化する能力。これには、他人の感情を考慮に入れてコミュニケーションをとる能力も含まれます。
  • 5. 自己動機:自分自身を前向きに保ち、目標に向かって努力し続ける能力。

 これらのスキルは、人間関係の成功、リーダーシップ、チームワーク、顧客サービス、そして全般的な人間関係において重要な役割を果たす。EQが高い人は、ストレスや困難な状況に対処する能力が高く、他人との関係を築くのが上手で、より幸せで満足した生活を送ることができるとされる。

ゴールマンの6つのリーダーシップスタイル:

これらのリーダーシップスタイルについては、詳しく学ぶととても興味深い。ここではごく簡単にしかご紹介できないので、ぜひ、ゴールマンの著書を読んでいただきたいと思う。

1. ビジョン型(Visionary)

 ビジョナリーリーダーは、チームや組織に明確な方向性を示す。彼らは共有ビジョンを作り出し、他の人々がそのビジョンに賛同するように励ます。例としては、Appleの創設者であるスティーブ・ジョブズが挙げらる。彼は自身のビジョンを明確に伝え、それによってAppleを世界的なブランドに育て上げた。彼のビジョンは、ユーザーフレンドリーでデザインに優れた製品を作ることで、テクノロジーを一般の人々の日常生活の一部にすることだった。

2. コーチ型(Coaching)

 コーチングリーダーは、個々の従業員の成長と開発に焦点を当てる。彼らは従業員の強みを強化し、弱点を改善するためのフィードバックと指導を提供する。例としては、元バスケットボール選手であり、現在は成功した実業家であるマジック・ジョンソンが挙げられる。彼は個々のチームメンバーの能力を最大限に引き出すことに焦点を当て、彼らが自身の可能性を最大限に発揮できるように支援した。

🔸フィードバックについての詳しい記事はこちら:

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3. 関係重視型(Affiliative)

 関係重視型リーダーは、チームの結束力とモラルを重視する。彼らはチームメンバー間の関係を強化し、ハーモニーとバランスを維持することに重点を置く。例としては、FacebookのCOOであるシェリル・サンドバーグが挙げられる。彼女はチームの結束力を重視し、オープンで協力的な環境を作り出すことで、チームメンバーが互いに信頼し、協力し合う文化を育てた。

4. 民主型(Democratic)

 民主的リーダーは、意思決定においてチームメンバーの意見やフィードバックを重視する。彼らは共有の意思決定を通じてチームのコミットメントを引き出す。例としては、Googleの創設者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが挙げられる。彼らは従業員からのフィードバックを重視し、新しいアイデアや提案を出しやすい、受け入れやすい文化を作り出した。

5. ペースセッター型(Pacesetting)

 ペースセッター型リーダーは、高いパフォーマンススタンダードを設定し、自身がそのスタンダードを達成することで他の人々へ模範を示す。しかし、このスタイルはチームメンバーが高いスキルレベルと動機を持っている場合にのみ効果的だとされている。例としては、Amazonの創設者であるジェフ・ベゾスが挙げられる。彼は高いパフォーマンススタンダードを設定し、そのスタンダードを達成することで手本を示した。

6. 強制型(Commanding)

 強制型リーダーは、明確な指示と指導を提供する。このスタイルは、緊急の問題や危機に対処するため、またはパフォーマンスが低下している従業員を改善するために使用される。例としては、元アメリカ合衆国大統領であるジョージ・W・ブッシュが挙げられる。彼は9/11のテロ攻撃後、国家の安全を確保し、国民の不安を和らげるために、明確な指示と指導を提供した。このように混乱期には特に強いリーダーシップが望まれる。

 ゴールマンは、最も効果的なリーダーはこれらのスタイルを適切に切り替える能力を持っていると述べている。確かに、そういう人もいるかもしれないが、それはあくまでも理想論であり、一人が全てのスタイルを使い分けるのは、実際には難しい。なぜなら、人には、それぞれ得意不得意があるからだ。しかし、これを自分のスタイルはどのタイプだろう、という視点で学び、「こういうスタイルだったら、自分はリーダーシップがとれそうだ」というのを見つけ、そしてそれを取り上げて、自分自身をトレーニングする、という道が効果的であり、早道はないかと思う。

 そして、そのスタイルの幅を広げて行き、ゴールマンの言うように、リーダーとして状況に応じてスタイルを適応させる能力を磨けば良いと思う。上記6つのうち、現実的で、多くの人が応用可能なのは最初の4つだ。5、6、は特殊なので、本の中でも「第5章 危険なリーダーシップ」の中に紹介されていることを一言付け加えておきたい。

管理職に求められるリーダーシップとは:具体例

 リーダーシップの中でも、具体的に考えられるのは、経営陣で言えば、組織全体を見据えた構造的なサポートを中間管理職に提供することだったり、さらに、経営者側が、中間管理職に対してマネジメントスキルを磨く機会を与えたりすることは、すでに述べた。

 中間管理職としてできることは、与えられたチームに対して、組織をまとめて、自分なりのスタイルでリードしていくこと。その中には、コミュニケーションスキルの一つとして、言うべきことを言うこと(正しくフィードバックをすること)なども含まれる。

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いろんな世代が集まるミーティング

さらに、前述の5つの点を自分自身に対してチェックすれば良い。

  • 1. ビジョンと方向性の提供
  • 2. 動機づけとエンゲージメント
  • 3. 変化への対応
  • 4. 問題解決と意思決定
  • 5. チームビルディング

これらを振り返り、メンバーに対して、正しくビジョンや方向性を示しているか、うまく変化への対応ができているか、問題解決の話し合い、それに基づくチームとしての意思決定はできているか、などをチェックしてみる。以下、いろんな聞き取り調査から調べた事例をご紹介したい。

ビジョンを明確にすることで問題を解消した事例

 あるプロジェクトマネージャーは、チームの生産性が低下し、プロジェクトの進行が遅れているという問題に直面していた。彼は、一人ひとりと休み時間などを利用して対話し、どうも原因がチームメンバーがプロジェクトの目標とビジョンをよく理解していないことであると推察。メンバーが、各作業の全体に与える影響や、なぜその作業をするのか、の意識がなく、モチベーションの低下を招いていると仮説を立てた。

 そこで、チーム全体のミーティングを開き、再度、プロジェクトの目標とビジョンを明確に説明し、それぞれのメンバーがどのように貢献できるかを具体的に示し、事あるごとにそれを繰り返し伝えた。もし、結果が出なかったら、別の仮説を立てて、対処しようとした。しかし結果は良好で、チームメンバーは自分たちの役割と目標を理解し、生産性が向上した。

変化への対応をうまく対処できた事例

 製造業の中間管理職であるあるラインマネージャーの談話:

新しい生産技術の導入により、従業員の抵抗と混乱に直面しました。私は、スタッフに新しい技術の利点と必要性を説明し、彼らが新しい技術を学ぶためのトレーニングとサポートを、シフトの合間に提供しました。また、一方的な説明は避け、彼らのフィードバックを積極的に求めました。できるだけ彼らの懸念を解消し、現実的かどうかを確認し、必要であれば、具体的なノウハウの修正や、報告ルートの改善をしました。これらの対策により、従業員は新しい技術を受け入れ、生産性が向上しました。

問題解決と意思決定を行うことで乗り越えた事例

 小売業の店舗マネージャー(店長)の談話;

私は、顧客満足度の低下と売上の減少という問題に直面していました。問題の原因を特定をするため、少し現場の作業から身を引き、客観的に観察したり、アルバイトを含む従業員からヒアリングしたり、顧客に対するアンケートを実施しました。その結果、従業員の顧客サービススキルの不足ではないか、という推測が浮き彫りになりました。そこで、全従業員を対象とした顧客サービスのトレーニングプログラムを導入することにしました。また、その終了後、プログラムで学んだことを全従業員の中で、始業前にシェアすることを実施し、お互いにできることは何か、その日の目標を具体的に一つひとつ決め、実行することを話し合いました。1日の終わりにはそれが実践できたかどうかを確認し合いました。これを繰り返した結果、半年後には、顧客満足度は向上し、売上も回復しました。

 さらに、組織をまとめるためのリーダーシップを磨くためには、例えば、どのように動機づけをするのか、どうチームビルディングをするのかは、次の章で述べるような方法で培うことができる。

リーダーシップを磨くための方法

リーダーシップスキルを向上させるための具体的な方法は以下の通り。

1. 自己認識を深める

自分自身の強みと弱みを理解し、自分のリーダーシップスタイルを認識することが重要。これには、

  1. フィードバックを求める、
  2. 自己評価ツールを使用する、
  3. コーチングやメンタリングを受ける

ことが含まれる。

2. 他人を理解する

他人の視点を理解し、共感する能力は、リーダーシップの重要な側面だ。これには、

  1. アクティブリスニング、
  2. オープンな質問の提出、
  3. 他人の感情とニーズに対する敏感さ

が含まれる。

3. リーダーシップのトレーニングを受ける

ワークショップ、セミナー、またはオンラインコースを通じて、リーダーシップの原則と技術を学ぶことができる。

4. 学んだことをすぐに実践する

リーダーシップは、実践によって最もよく学ぶことができる。また、自ら進んで、

  1. 新しいプロジェクトをリードする、
  2. メンターまたはコーチの役割を引き受ける、
  3. チームの意思決定に参加する

などの機会を積極的に探し、実践することが有効だ。

これらの方法を通じて、マネージャーは自分のリーダーシップスキルを向上させ、チームとの関係を強化し、組織の目標達成に貢献することができるだろう。

🔸リーダーシップの養成にはスピーチ向上も役にたつ。なぜか?

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リーダーシップを磨いてより強くて効率的、建設的な組織づくりを!

 マネジメントにおいて、リーダーシップは、組織の成功にとって不可欠なスキルである。リーダーシップスキルは、ビジョンの提供、影響力の行使、人々の動機づけ、決断力、そして人間関係スキルなど、他人を導き、影響を与え、目標達成に向けて動機づける能力を含む。これらのスキルは、自己認識を深める、他人を理解する、リーダーシップのトレーニングを受ける、そして実践することによって向上させることができる。

 リーダーシップの欠如は、目標達成の困難、低いモチベーション、高い離職率、そして不健全な職場文化など、組織全体に深刻な影響を及ぼす可能性がある。しかし、あなたなりの適切なリーダーシップを発揮することで、これらの問題を克服し、組織の成功を促進することが可能になる。

 したがって、マネージャーとして、リーダーシップスキルを磨くことは、より強く、効率的で、建設的な組織を作り上げるための重要なステップとなるだろう。リーダーシップを磨くことで、経営者、中間管理職はチームの関係を強化し、組織の目標達成に貢献し、さらに自分自身のキャリアを向上させることができるだろう。

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