”信元夏代のスピーチ術” 編集長、プロフェッショナルスピーカーの 信元です。
グローバル企業のリーダーと仕事をしていると、こんな悩みをよく聞きます。
- 「チームメンバーが遠慮して意見を言わない」
- 「会議で議論がかみ合わなかったり、堂々巡りになる」
- 「合意したはずなのに、後から反発が出る」
実はこれらの問題の多くは、語学力ではなく「聴く力」に原因があります。
異文化チームでは、同じ言語を話していても、同じ意味で理解しているとは限りません。
だからこそ、グローバルリーダーにはファシリテーション力、特に
「良い質問を通して相手の考えを引き出す力」
が必要になります。
今回は、異文化チームを動かすための
- ファシリテーションスキルの本質
- Good Questioning(良い質問)の技術
についてお話しします。
異文化チームで必要な「ファシリテーション力」とは
まず、ファシリテーションとは何でしょうか。
簡単に言えば、
チームの議論や意思決定の「プロセス」を設計し、成果を最大化するスキル
です。
グローバルチームにおけるファシリテーターの役割は主に次の5つです。
- 中立の立場で議論を進める
- チームのコミュニケーションプロセスを管理する
- メンバーの知恵や意見を引き出す
- 異文化の違いを橋渡しする
- チームの相乗効果を生み出す
つまり、ファシリテーターは、「会議を仕切る人」ではなく、「チームの知恵を引き出す人」なのです。
この力がないと、異文化チームではすぐに次のような問題が起こります。
- 信頼が築けない
- 意見が出ない
- 議論が空中分解する
- 誤解が生まれる
- 決定が実行されない
実際、グローバルチームの最大の課題として
- 信頼形成
- コミュニケーション障害
- ゴールにたどり着く方法の不一致
などが挙げられています。
「ファシリテーションスキル」というと、何か一つのスキルのことを表しているように思われるかもしれませんが、実は「ファシリテーションスキル」は、たくさんのソフトスキルの集合体なんです。
その中でも、最も重要なスキルが一つあります。
それが
「聴く力」
です。
なぜ異文化チームでは「聴く力」が重要なのか
異文化コミュニケーションでは、言葉の裏にある意味が大きく異なります。
例えば、日本人の上司が部下にこう言ったとします。
「それは難しいですね」
日本では、これは多くの場合
「NO」
を意味します。
しかし、ドイツ人の部下はこう解釈するかもしれません。
「挑戦的な仕事だ。頑張ろう」
このように、同じ言葉でも、その下に隠れている意味がまったく違うことが、異文化の中では多々あるのです。
その背景にあるのが、高コンテクスト文化・低コンテクスト文化の違いです。
高コンテクスト文化(日本などアジア諸国に多く見られる傾向にある)
- 文脈・空気を読む
- 全て言葉で表さない
- 曖昧な表現
低コンテクスト文化(欧米などに多く見られる傾向にある)
- 明確に言葉にする
- 論理的説明
- 直接的表現
つまり、
相手が言ったことではなく、「言っていないこと」を理解する力が重要になってきます。
言ってもいないことをどうやって理解すればいいのか?!とお思いかもしれません。
そこでカギになるのが、良い質問なのです。
では、良い質問、とはどんな質問なのでしょうか?
質問には4種類ある
質問といっても何でも良いわけではありません。
実は質問には質があります。私は基調講演や研修の中で、質問の種類をを次の4つに分類しています。
① 悪い質問(Bad Questions)
悪い質問とは、
相手を追い詰めたり、責めたり、ネガティブな意味合いが感じられる質問
です。
例えば
- 「なんでまだ結婚してないの?」
- 「銀行にいくら貯金あるの?」
このような質問は
- 相手を不快にする
- 関係を壊す
- 学びが生まれない
つまり、コミュニケーションを凍らせる質問です。このような悪い質問は、使わないようにしましょう。
② 軽い質問(Light Questions)
軽い質問とは、アイスブレイクの質問です。
例えば
- 「週末はどう過ごしましたか?」
- 「昨日のメジャーリーグのヤンキーズ戦、見ました?」
- 「最近ゴルフの調子はどうですか?」
これらは
- 会話を始める
- 関係を作る
- 相手のことを知ろうというきっかけづくり
という意味では重要ですが、本質的な情報は得られません。が、相手のことをまだよく知らないような状況での会話の最初の方に使うには効果的です。
③ 重い質問(Heavy Questions)
重い質問とは
相手を深く考えさせるが、答えにくい、進んで答えたいとは思えない質問
です。
例えば
- 「なぜあなたは同じミスを何度も何度も繰り返すのですか?」
こんな質問をされたら、痛いですよね。喜んで答えたいとは思えないでしょう。
つまり心理的抵抗があります。ところが、この質問には、深い学びの可能性も潜んでいます。
このような重い質問は、相手との信頼関係がしっかりと築かれており、かつ、なぜあなたがこんな質問をするのか、その意図が共有されているならば、効果的な場面があります。使い方と場面をうまく選べば、相手にとっての学びに繋がるでしょう。
④ 良い質問(Good Questions)
そして最後が、良い質問です。
良い質問とは、
相手が前向きに答えたくなり、かつ、相手が自ら自身の中にある答えを探り、引き出す質問
です。
例えば
- 「この状況を改善するために、来月どんな行動を取れますか?」
- 「このプロジェクトであなたの専門性をどう活かせますか?」
この質問の特徴は
- 自分で考える
- 新しい視点が生まれる
- 質の高い情報が出てくる
つまり相手の知恵を引き出すと同時に、引き出された答えは、相手にとっても、あなたにとっても有益な情報なのです。
良い質問を作る3つのポイント
では、どうすれば良い質問を作れるのでしょうか。
ポイントは3つあります。
① YES / NOで終わらない質問にする
Yes/Noで終わってしまう質問は、クローズド・クエスチョン、Yes/Noで終わらなず何か答えなければいけない質問は、オープン・クエスチョン、と言います。
クローズド・クエスチョンの例
「理解しましたか?」→「はい」または「いいえ」
これではここで終わってしまいます。
オープン・クエスチョンの例
「今言ったことをどう理解しましたか?」→「この施策は、会社全体だけでなく、我が部門の利益も向上する施策だ、という理解をしました。」
オープン質問にすると、相手の思考が動きます。
② 相手が常に考えていることの「周辺にある」ブラインドスポットに焦点を当てる
良い質問は、相手がすでに考えていることをそのまま聞いても、何の学びにもつながりません。一方で、相手が想像もできないようなことを尋ねても、答えは出ません。良い質問とは、相手がすでに考えていることの「周辺」にあり、相手が普段あまり意識していない「ブラインドスポット」にある、ちょっと違った視点に光を当てる質問です。
人は誰でも、自分の経験や立場から物事を見ています。
そのため、知らないうちに思考の枠(フレーム)の中で考えてしまいがちです。
良い質問は、その枠の外側にあるブラインドスポット(見えていない視点)に気づかせます。
例えば、
- 「今おっしゃった、この問題の要因は、そもそも何がきっかけで問題となったのでしょうか?」
- 「この状況を別の部署の視点から見ると、どう見えるでしょうか?」
- 「もしお客様の立場だったら、どう感じると思いますか?」
このような質問は、相手の思考を否定するのではなく、視野を広げたり深めたり、新しい発想を引き出すきっかけになります。
異文化チームでは特に、自分の「常識」が他の人の常識とは限りません。
だからこそ、良い質問は相手の思考を深めるだけでなく、視点を広げる、深める役割を持つのです。
③ 行動につながる質問にする
良い質問は、相手の視点を広げたり、深めたりしますが、もう1方向あります。それは、「進める」という方向です。
例えば
- 「次のステップとして何ができますか?」
- 「今日決定したアクションは、誰が担当し、いつまでにやりますか?」
この質問は議論を行動に変える力があります。
異文化チームでは「好奇心」が最強のスキル
異文化コミュニケーションで大切なのは正しさではなく、好奇心です。
異文化の中では、自分にとっての当たり前は当たり前ではありません。そして、色々な「違い」や、ぶつかり合いが発生します。
そんな時、「あの人は間違っている」、「そんなこと当たり前じゃないか」、と考える代わりに、
「ほう、この違い、面白いな。なぜこの人はそう考えるんだろう?」
と、好奇心をもって問い続けることです。
文化は国だけで決まるものではありません。
人はそれぞれ
- 育った環境
- 教育
- 職業
- 経験
などの影響を受け、一人ひとり異なる文化を持っています。
私はこれをThe Culture of One™ と呼んでいます。
つまり、異文化理解とは国を理解することは単なるきっかけに過ぎず、「人」を理解することなのです。
今日、グローバルリーダーに必要なのは聴く力です。
そしてその中心にあるのが
良い質問を設計する技術(Good Questioning Technique)
です。
質問の質が変わると
- 会議の質
- チームの信頼
- 意思決定の質
すべてが変わります。
もしあなたが、
「異文化チームをもっと機能させたい」
と思っているなら、まずは今日から良い質問を一つ増やしてみてください。
それだけで、チームの会話は驚くほど変わりますよ。