非言語コミュニケーション:日本人の顔の表情が誤解の原因?! 文化の違い具体例

アメリカと日本で、顔の表現方法が違うことをご存知だろうか? 文化の違いからくる誤解は、国際的な立場でビジネスをしたり、友人を作ったりする上で、どうしても避けられないものだ。

 この誤解を生む要因にはいろいろあるが、表情やしぐさといった、非言語コミュニケーションを正しく理解していないために生じるところが大きい。しかし、言い換えれば、この壁を乗り越えられれば、相手と良好な関係を築くのがスムースになる。

 今回は、非言語コミュニケーションによる異文化間の誤解、特に顔の表情の日本とアメリカの違いにフォーカスし、そこから生じる誤解について、なぜ起きるのか、どう対処したらいいのかを紹介したい。以前の記事で「非言語コミュニケーションとは何か」「それを起因とする誤解」「外国人と上手にコミュニケーションをとるコツ」について解説したので、それも合わせて参照されるとより分かりやすくなると思う。

 普段の意識的、無意識的にしているちょっとしたことが誤解に繋がる可能性があるので、外国人と仕事をしたり接する機会の多い方におすすめだ。

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 日米の違いを語る際に難しいのは、アメリカという国は、実に多種多様であり、一口にアメリカ人と言ってもいろんな人がいることだ。この記事で言及するアメリカ人とは、いわゆる主流とされるワスプ(アングロサクソン系白人)の教育程度が高い人たちのことを指すことにしたい。

誤解を招く微妙で複雑な感情を表す顔のしぐさ

顔のしぐさ・表情は、スピーチ、プレゼンにおいても重要だ。あなたのメッセージを的確に、感動的に印象づけるためには、表情と言葉の内容が一致していることが必要だからだ。特に、最近ではオンライン会議などが取り入れられる機会が多いので、顔での表現は、言葉以上に説得力を持つ。

 しかし、ここでの日米での差は小さいとは言えない。日本人が当たり前だと思っていても、アメリカ人にとっては全く別の解釈をする場合があるからだ。

 まずは違いを見てみよう

顔の表情:日米での比較

アメリカ人の顔の表情

 自由に、表情豊かに、感情をはっきり顔に出す。楽しさ、嬉しさ、共感のような積極的な感情でも、悲しみなどの否定的な感情でも、同程度に感じるままを表に出す。格式張った状況の中では、礼儀として喜びを抑制するときもある。

日本人の顔の表情

 近年、急速に変化してきているが、伝統的には、幼年期から感情をはっきり顔に出すことは差し控えるように訓練される。喜怒哀楽や愛憎の表現を意識的に抑制する。

 例えば、一身上の深い悲しみについて語る時に、多少好意的な、中立的な微笑みを浮かべる。どんな激しい感情にも、この中立的な微笑みをする人は多い。特に、怒り、さげすみ、不満、嫌悪、憎悪の時は、逆に微笑む傾向がある。

 それは、感情表現の抑制、特に否定的な感情表現を抑えることが、日本人にとっては大人らしい、思慮深い教養ある行為とされているからだ。

 以上のような違いから、以下のような誤解が生まれる。

生じる誤解

アメリカ人が見る日本人の喜怒哀楽の表現

 無感覚、無感動、無表情と考える。たまに、奇妙な矛盾したものと感じる。活気に欠けた鈍感な人だと誤解する。

日本人が見たアメリカ人の喜怒哀楽の表現

 子供っぽく、単純で、育ちが悪いと誤解し、野卑にさえ見える。

 もし、アメリカ人が日本人に対してスピーチやプレゼンをする場合、日本人は、なんだか乱暴で、礼儀に欠くように見えたり、子供っぽいと感じたり、馬鹿にされていると感じたりするかもしれない。

 逆に、日本人がアメリカ人に対して、スピーチやプレゼンをする場合には、アメリカ人は、元気がない、エネルギーレベルの低い人だと誤解するだろう。単にデータを淡々と述べる場合なら、冷静沈着な人だと感じてくれるかもしれない。しかし、内容によっては、熱意が感じられない、他人事で、無責任な発言だとも受け止められかねない。

文化的・地理的背景とは

なぜ日本人は感情を抑えるのか

 抑制された、控え目で、自己主張の少ない日本人の行動(もちろん個人差はあるが、一般的に)は、

  1. 日本人が非常に感情豊かな国民である
  2. 人口過密社会が集団主義をやむなくしている
  3. 社会全体が人の和を何よりも重んじる

という社会的・文化的側面からくる当然の結果なのかもしれない。

一方で、アメリカ人は

  1. 広い土地に人口が少なく
  2. 個人主義という贅沢に恵まれた
  3. その結果、自制しなくても、必要なだけの社会的調和が自然と保てる

このような背景の違いが、顔の表現方法の違いにつながっていると思われる。

以上は、かなり大雑把な分類であることは否めないながらも、この地理的環境的条件の影響は大きいと感じている。ちなみに、私はシカゴ、カリフォルニアにも数年いた経験があるが、最近はニューヨーク近郊に住んでいる。個人的な観察としては、マンハッタンに住んでいる人たちは、日本に似た人口過密下で生活していて、その影響なのか、控えめな性格だと感じる人が、中西部と比べると多いような気がする。

パーティ・社交の場での違い

さらに、「しぐさの比較文化―ジェスチャーの日英比較」リージャー・ブロズナハン著(大修館書店)を参考に、喜びを表現する社交場に目を向けて観察してみたい。

一般的に、アメリカ人は、フォーマルだと認識されるような状況の中では、礼儀として喜びを抑制しようとする。日本人はというと、楽しさ、嬉しさ、共感のような積極的なプラスの感情になるとアメリカ人ほど抑制しないことも多い。

ブロズナハン氏によれば、「これらの感情を人前で表現することについて日本人は、良いものはいくらあってもありすぎることはない」と信じていて、少なくとも、「各式張った状況の中での喜びの表現は、明らかに英語国民の標準を上回る」と観察している。(上記著書p204)

ここに双方の誤解が生じる。

アメリカ人が見た日本人

始終、ゲラゲラ、クスクス笑っているように見える。きっとそれは苛立ちや緊張、ストレスがたまっているせいではないか、と解釈する

日本人が見たアメリカ人

自分ならもっとゲラゲラ笑ってもいいところを、そうしないので、抑制しているように見える。何か物足りなく、不満に感じているのではないかと解釈する。

これらの違いを考える時、ふと思い当たる場面がある。何かの大きな会議などが終わった後のレセプションパーティだ。日本人は陽気に騒ごうとする傾向があるが、アメリカ人は、比較的静かに談笑する傾向が見られる。これは、もちろん個人差があるが、一般的な印象としては共感する方も多いと思う。

 お互いが誤解を生まないための対策としては、アメリカ人に対しては、ただ単に「そのような席にふさわしい楽しさを盛り上げているに過ぎないこと」を日本人が説明すると良いだろう。

 また、日本人に対して、アメリカ人は、「物足りないとは思っていない。十分に楽しんでいる」ことを伝えるといいと思う。日本人が「アメリカ人は一緒にいて、楽しくないのでないか」と邪推してしまうのは、「英語国民の満足表現が、その状況下での日本の基準に達していないから」(上記著書p204)に過ぎない。

スピーチ・プレゼン対策

以上の解説は、個人差があり、ステレオタイプになりがちなので注意が必要だ。しかしながら、相手の情報があまりない場合や、初対面の場合などには、一つの見方・指標としては、参考になるだろう。

日本人がアメリカ人に対してプレゼンをする場合

  1. 文化的・地理的背景を伝え、なぜそうなのかを説明する。
  2. 喜びは喜びとして、悲しみは悲しみとして、素直に顔に出して表現する練習をする。自分ではちょっとオーバーかな、と思えるくらいがちょうどいい。

(1)は、そのような機会を意図的に作ったり、何かの折に司会者が説明したりすると良い。

(2)は、プレゼン前のリハーサルが重要である。長年積み上げてきた癖は、簡単に治るものではない。かなりの努力が必要だ。

 私自身、いわゆる「ジャパニーズスマイル」と呼ばれるものを油断すると、今でもやってしまう。悲しい時、怒っている時にも笑みを浮かべてしまう。最近はすぐに自分で気づくようになったが、まだ渡米してまもない頃は、「なんでこの人は災害の話をしているのに笑っているのだろう?」と、かなり不信感を抱かせてしまったことが多々あった。

アメリカ人が日本人に対してプレゼンをする場合

 日本人の解釈は、これも長年の積み重ねなので、頭ではわかっていても、アメリカ人のスピーチを、どうしても無礼だと感じてしまうことがある。だから、アメリカ人に対して、また同じ日本人に対しても、日米の感じ方の違いを率直に、あらかじめ伝えておくといいだろう。会議の開始前に司会者が伝えてもいいし、プレゼンの前に自分の失敗経験などを交えて、あらかじめ違いを伝えておくといいだろう。

 日本人の司会者なり、アメリカ人のスピーカー本人が紹介する時に、「子供っぽく、単純で、育ちが悪いと誤解されるかもしれませんが、本当は、私は(彼は)決してそんな人ではありません」と少し大袈裟に説明すれば、一種の場を和ませる冗談ともなるので、これは意外といいアイディアかもしれない。

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