トヨタの「カイゼン」から学ぶコミュニケーション術
相手と自分の違いの分析し、文化・習慣のギャップを埋める (Analize)
トヨタがグローバル企業として強いのは、「カイゼン」に代表されるように、トヨタマインド・価値観を徹底して教えるからだ。例えば、「なぜ」を5回問いかけることによって問題の原因を探ったり、成功よりもミスや失敗を先に報告する習慣を徹底して実践させる。(佐藤智恵著「ハーバードでいちばん人気の国・日本」より)
「なぜ」を5回問いかけるメリット
この「なぜ」を5回問いかけることで得られるメリットはなんだろう。それは、コミュニケーションのギャップを徹底的に排除し、言語化されていない暗黙の了解を浮き彫りにし、お互いの意思をクリアにすることだ。誤解がないように、なぜそうなるかを細かく究明したり、話し合い、互いに心底分かるまで説明する。
これは新人研修でも行われるが、ベテランスタッフの間ではもちろん、外国人に対しても徹底的に行われることは容易に想像できる。なぜなら、外国人との間には文化・言語・習慣の違いがあり、ギャップも大きいからだ。だから、場合によっては通訳も必要になるだろう。
当たり前は当たり前じゃない
外国人とのコミュニケーションをスムースにするには、トヨタの「カイゼン」に似たプロセスが必要になる。つまり、何か誤解があったり、「ん? 本当に分かっているかな?」と感じた時に、「なぜそうなのか」を相手を責めることなく尋ねることで、徹底的に話し合い、クリアにしていくことだ。
なぜを説明できる自分になろう
それにはまず、そのなぜを「説明できる自分になる」ことが大切だ。なぜ?の部分は、普段から意識しないとなかなかその明確な答えが見つからない。当たり前すぎて疑問すら湧かないことも多いからだ。だから、疑問が湧くようにすれば良い。それには、自分を常に異文化の海に晒すことが必要だ。異文化とは何も外国の文化とは限らない。自分と違うタイプの人間でもいい。「ちょっと苦手」と感じる人とも避けないで、積極的に付き合っておくといい。そうすると疑問すら湧かなかった自分の中の「当たり前」が浮き彫りになる。浮き彫りになれば、自然と答えも見つかる。
個性を尊重
そもそも人はそれぞれ違うものだ。それが個性だ。同じ人間なので、同じような考えをすると思いがち。しかし、誤解・違和感というのは、違うから起きる。お互いの「当たり前」が違うから起きる。外国人や自分と違うタイプの人と付き合うとそれに遭遇する。その誤解や違和感を感じた時こそが、自分の疑問すら湧かなかった「当たり前」を見える化・言語化し、「なぜ」を説明できる自分になるチャンスなのだ。
常になぜか?を説明する
さらに、「日本人にとって当たり前のことは、決して外国人にとって当たり前ではないこと」を十分認識しなくてはいけない。
例えば、道具を必ず元の指定位置に戻すことは、工場で働くベテランスタッフにとっては当たり前かもしれない。しかし、新しく入ってきた人たち、特に外国人にとっては「教えてもらわないとできないこと」であり、さらに彼らは「教えてもらえること」を期待している。
相手を責めたり、見下したり、嫌味を言わない
だからこんな時、
「使ったら元に戻せよ。なんでそんな当たり前なこともわからないんだ」
と、とかく言ってしまいがち。でも、そう言ったら、グローバル社会では失格だ。
では、どう言うか。
それを理由・数値・具体例などをもって詳しく説明することだ。例えば、
「道具を必ず元の指定位置に戻してください。なぜかと言うと、それで作業効率が2倍違うんですよ」
などと解説を加えると相手は納得しやすい。さらに、指定の位置に戻さなかった場合と戻した場合の状況を具体的に書き出し、それが周りに与える影響、作業工程への影響の大きさを考えてもらい、一緒に対策を考えるとよいだろう。実は、トヨタのカイゼンとは、このような話し合いの繰り返しなのだ。
ポイントは、特に外国人に対して、相手に「あうんの呼吸」や「空気を読む」ことを決して期待しないことだ。そう予め自分の頭にインプットしておけば、「当たり前」すぎて、お互いの意思が伝わっていなかったことが浮き彫りになりやすい。最低でも、イライラしたり、辛く当たったりすることは避けられるだろう。
自分にとっての当たり前は、相手にとって当たり前ではない。もしコミュニケーションがうまくいかないなら、そこの見えないギャップを浮き彫りにして、クリアにすれば、外国人との会話も弾むだろう。
自分にとっての当たり前は、相手にとって当たり前ではない。もしコミュニケーションがうまくいかないなら、そこの見えないギャップを浮き彫りにして、クリアにすれば、外国人との会話も弾むだろう。