謝罪を尊ぶ日本文化
「日本人は、なぜ『つまらないもの』と言ってお土産を渡すか?」
という以前掲載したトピックについてたくさんの反響をいただいた。ありがとうございました。
また、日本人が、なぜ、「ありがとう」よりも「すみません」と言う人が多いのかについて。例えば、バスで席を譲ってもらったおばあちゃんの心理は、
「もし、私がこのバスに乗ってこなければ、あなたは、いつまでもそこに座っていられたでしょう。私が乗ってきたばかりにあなたがお立ちになるということで、あなたにご迷惑をおかけする。これは申し訳ない」
という想いであり、だから「ありがとう」ではなく、「すみません」なのだと説明させていただいた。
このように、日本人は、一般に謝罪の言葉をのべることを大変尊ぶ文化がある。
(Japanese people generally feel that apologizing is an extremely honorable thing to do. )
壊したのか? 壊れたのか?
ある日本人が、西洋へ行って、外国人のメイドさんを雇った時の話だ。
台所でコップがこわれた。メイドさんは、日本人の奥さんにこう言った。
「コップがこわれました」“The glass broke.”
これは、その国ではごく普通の言葉かもしれないが、日本人はこのように言われるとあまりいい気持ちではない。こういう場合、日本人だとこのように言うだろう。
「コップをこわしました」“I broke the glass.”
つまり、コップが割れたのは自分の不注意のせいである。それは自分が力を加えてわざと割ったのとほぼ同じことだ。自然にそのコップが割れたのではない。そう考えて「コップをこわしました」と言うことで、謝罪の意味を表わそうとする。国語学者金田一春彦氏によれば、「これが日本人の場合、相手にとても快く響く」と言う。
そう言えば子供の頃、よく母親に、「こわれたんじゃなくて、こわしたんでしょ?!」などと叱られた思い出がある。
以前、日本語教師をしていた時、「日本語では、表面上はこの『こわす』『こわれる』というわずか2文字の違いだけだが、背景を考えて英訳すると、かなりニュアンスが変わってくる」と説明したところ、アメリカ人の学生の中には、「もう怖くて日本語が話せません」などと冗談を飛ばす者もあった。実際、これは自動詞と他動詞の違いを教える時のトピックとして、日本語教師の間では、結構ポピュラーな話題だ。
NYでも少しずつ浸透してきた日本的な考え方
アメリカに長く生活していると、「こわれた」発言をしてしまっている自分に気づく。特に、自動車事故などを起こした場合は、責任問題にかかわってくるからだ。しかし、あまりにもこういうアメリカ式の表現が広まってしまうと、窮屈な社会になってしまうのではないだろうか。
実際、アメリカ人の間でも、「アメリカ人はあまりにも ”I’m sorry” と言わなさすぎる」という反省色の強い読者からの投書が、15年ほど前にNYタイムスに載っていたのを思い出す。最近、マンハッタンを通る地下鉄内で気づいたのだが、肩がぶつかったら、”I’m sorry”と言う人が意外に増えてきているのではないか? ということ。
だからあえてアメリカでも、日本的な自分の非を認める表現を普段から使用してみても面白いのかもしれない。でも聞いているアメリカ人は不思議に思うかもしれないので、背景を説明する必要があるだろう。日本においては、外国人にそういう言葉の背景とニュアンスの違いを教えてあげることで、その外国人の印象がガラッと変わるかもしれない。ご参考までに英語での説明の仕方を添えておく。
Japanese people would imply, by saying “I broke the glass,” rather than “the glass broke,” that the breaking of the glass was the result of their own negligence. And to them it means the same things as it would if they had broken it on purpose. They would never think that the glass just broke of its own accord. Thus, what they say, “I broke this glass,” is as an expression of apology for many Japanese people. This sort of attitude is extremely effective in dealing with Japanese people.
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