その場で意見を述べよ!海外、外資系で起きがちな文化の壁と3つの解決ステップ(分かりやすい具体例あり)

「なんでその時に言わないのか!」

とアメリカ人上司に怒られる日本人部下。外資系やニューヨークで働く日本人にはよくあるシーンだ。

 これは、ミーティングが終わったすぐ後、もしくは、しばらく経った後に、日本人部下がアメリカ人上司に、例えば、

「実はあの時のミーティングのことなんですが、私は別のいい方法があるのです。聞いていただけないでしょうか」

などと、持ちかけた時に起きる。

どういうことかと言うと、これは、日本人にありがちな「持ち帰り」が原因の一つだ。しかし、それだけではない。他の2つの原因も隠されているのだ。

ここでは、それらを解説し、その3ステップ対処方法を最後にご提案したい。まず異文化間の誤解にはどんな種類があり、何故それが起こるのか(原因)をよく理解することがポイントなので、最後のステップだけ読まず、1章ずつ読みすすめてほしい。

1. 会議に対する考えの違い

 アメリカ人は、ミーティングをする時

「終わった後で、もっと詳しくまとめてから意見を言おう」「真意が分かりにくいので後で確かめよう」

などということが全くない。会議中にすべてを終わらせ、決定するので持ち帰ったりしない。会議の重要度が高く、その方が効率的だと考える。だから、その場で自分の意見や疑問点をさらけ出して、意見を戦わせたり、鋭い質問を浴びせたりする。その方が誠意ある態度だと考えられているからだ。

 一方で、日本人は、根回し、稟議が普通に行われるので、会議の重要度が低く、ややもすると、会議で決めたことが後でひっくり返ったりすることもある。それに慣れている日本人は

「今意見を言わなくてもいいや」「意見を戦わせても意味がない」

「ここでツッコミを入れたら、相手の面子を潰すことにもなりかねない」

などと考え、その場での明言を避け、後で内々に処理しようとする。

. 言葉に対する依存度の違い

 隠された原因の2つの内、最初は、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションに対する依存度が、日本人とアメリカ人では大きく違うこと。

世界には2つのコミュニケーションパターンがあるのは、ご存知だろうか。

アメリカの文化人類学者のエドワード・ホールによると、

  1. 低コンテキスト
  2. 高コンテキスト

の二つがあると言う。

実は、先ほど紹介した日本人とアメリカ人のミーティングに対する考えの違いは、この低コンテキストと高コンテキスト、という2つのコミュニケーションパターンの違いが影響しているのである。

低コンテクストと高コンテキストとは

  1. 低コンテキスト:言葉の文化ー言語に依存
    該当する国:欧米諸国(スイス、ドイツ、米国、UKなど)
  2. 高コンテキスト:察しの文化ー非言語に依存
    該当する国:日本中国、メキシコ、ブラジル、ロシア

1つ目の低コンテキストとは、言語コミュニケーションに大きく依存し、言葉以外のものはあまり考慮しない「言葉の文化」のことだ。コンテキスト(文脈)への依存度が低いので「低コンテキスト」と呼ばれる。ホールの分類によれば、欧米諸国はこの低コンテキスト文化に属する(スイス、ドイツ、米国、UKなど)。

2つ目の高コンテキストとは、非言語コミュニケーションに大きく依存し、日本でお馴染みの「察しの文化」とも呼ばれるもので、「普通空気読むだろ!」みたいな発言につながるものだ。コンテキストへの依存度が高いので、「高コンテキスト」と呼ばれる。中国、メキシコ、ブラジル、ロシアの人たちは、高コンテキスト文化圏だ。日本は、この高コンテキスト文化圏に属し、一番その度合いが強い

つまり、日本人側からすると、会議中に

「私はちょっとその意見はおかしいと思います」

という心の中の疑問があったとすると、態度で示したり、顔の表情を曇らせたり、言葉の語尾を濁らせたり、いろんな非言語の技を使って相手に伝えようとする。それが分からない相手は「鈍い人」となり、逆に非難の対象になることもある。

逆に、アメリカ人の立場からすると、会議中にもし疑念があるなら、それを言葉に出して、その場で表現をするのが当たり前であり、それをしないのは不誠実と考えるのだ。

3.日本とアメリカで異なるミーティング中の「うなずき」の解釈の違い

さらに、隠された原因のもう一つは、しぐさや行為の解釈の違いで生じる意思疎通のギャップ。この事例で言うと、この日本人部下が、必ずしているであろう仕草が大きな誤解を呼ぶ。それは、ミーティング中の相槌「うなずき」だ。この相槌に対する解釈の違いが、無意識にアメリカ人上司を感情的にさせ、火に油を注いでしまう。

このミーティングの場合、周囲のアメリカ人は、この日本人部下の「うなずき」をどう解釈するのか?

  • アメリカ人上司や同僚
    トピックに対してうなずいている=賛成している。納得しているんだな。
  • 日本人部下
    まずは話を聞いて、同意や質問・意見は後でしよう!
    (うなずきながら聞くのは聞いている事の意思表示であって、賛成しているわけではない)

アメリカ人が考える「うなずく」と言う行為は、同意しているという意味に他ならない。そしてこの状況下で、アメリカ人が見る日本人の言動は、うなずき。特に反論も質問もない。だからこのアメリカ人たちは、「彼はすべて賛成した。この案件は全く問題ない」と思う。

一方で、日本人が考える「うなずく」という行為は、あなたの話を聞いている、というサインであり、同意しているわけではない。だから、「実は反対なのだが、大勢いる場では和を乱すべきではない。ここで反対意見を述べては、相手の面目を潰すかもしれない。ここは会議が終わってから個別にじっくり話をしたほうがいいだろう」と考える。

このように、同じ「うなずく」という行為だが、文化的な解釈が違うため、両者に誤解が生じてしまう。会議が終わった後で、何かを進言してきた日本人部下に対し、アメリカ人上司はとても驚く。さらに、不信感や不誠実感を抱き、原因不明の不快感さえ湧いてくる。結果、日本人部下は、評価が下がり、重要な案件を任されない

 このように、アメリカと日本では、ほとんど正反対な考え方をする。これでは、誤解が生じて当たり前だ。では、これを克服するにはどうすればいいのだろうか。

異文化間で誤解を避ける3つのステップ

異文化間で誤解を避ける3つのステップは以下。

  1. 文化の差があることを認識すること。
  2. 相手と自分がコンテキスト(文脈)に対してどのような依存度か(低コンテキストなのか、高コンテキストなのか)を分析する
  3. 相手が低コンテキストであれば、言わない非言語部分のメッセージを言語化する努力を試みる。
    相手が高コンテキストであれば、相手の表情を見ながら適切な対応をする。つまり、非言語を言語化したメッセージは用意しておき、必要であれば伝える。

この3つのステップを使って、先ほどの「日本人の持ち帰り」を検討してみよう。

「日本人持ち帰り」の対処法

  1. 認知:アメリカ人と日本人との間にはミーティングに対する考えの差がある。
  2. 分析:互いの習慣、表現方法の違いを学習・認識する。
    アメリカ人は持ち帰りはしない。低コンテキストなので、思ったことは全て言語にして伝えないと理解されない。日本人がうなずくと同意を得たと誤解を生む可能性が高い。結果、非効率的、不誠実だと誤解される。
  3. 実践:会議中にその場で遠慮せずに意見・感想を述べる。もし意見がまとまらない場合は、後でレポートを提出したいと伝える。アメリカ人に対しては簡単にうなずかない。

 「違いがある」という認識さえない人が大勢いるので、まずは、違いがあると意識するだけでも、対応が違ってくる。

 そして、上記の3つの原因を学習・認識する。さらに、アメリカ人が相手なら、黙っていることをやめ、非言語メッセージを言語化する努力をする。

 ここで大切なことがある。アメリカ人は「なぜ黙っているのか」がシンプルに分からない。ただ意見がないのだろうと思うだけだ。だから、あなたの非言語メッセージさえも伝える必要も出てくるだろう。

「本当は疑念があるのだけど、直接的な言い方をして相手を傷つけたくない。だから私は、そういう文化習慣の中で育ってきたので、今まで黙っていました」

というのがあなたの非言語メッセージだ。大事なのは「相手を傷つけたくない」という思いやりの部分。ここが隠されている。いわゆる「言わなくてもわかるでしょ?」の部分だ。これこそ言語化した方がいい。ここが言語化されないことで、多くの日本人はグローバルな舞台ですごく損をしている。

 だから、自分の感想や意見を言うだけでは、かなり不十分で、すべてを言い切ったことにはならない。

 さらに、非言語メッセージを言語化する時に注意する点がある。それは、ストレートすぎる表現をして、相手をびっくりさせないことだ。

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 一方で、アメリカ人上司・同僚にも事前にお願いしておくといいだろう。

「私は日本人で、どうしても意見を控えてしまう癖があるし、話に割り込めない時があります。それを直すように当然努力はしますが、これは文化的、言語的な原因があるので、皆さんにもご協力お願いします。会議中、時折、私を当てて発言のチャンスをください」

“I’m Japanese, and I have a habit of refraining from asserting my opinions. And, I am not good at interrupting the discussion to share my thoughts with you. This is partly because of my cultural and linguistic background. Of course, I am trying to fix it, but I need your help.  I would very much appreciate it, if you could call on me for a chance of speaking during the meetings if you see me very quiet.”

などと部署の全員に向かって、あらかじめ説明しておくのも手立ての一つだろう。

まとめ

  • アメリカ人の会議スタイルは、どんな意見でもその場で言うこと
  • 文化の違いによる(異文化間の)誤解はコミュニケーションパターンの違いにより生じる
  • 世界のコミュニケーションパターンには「低コンテクスト」と「高コンテクスト」の2つに分かれる
  • 低コンテクストとは「言葉による文化」。直接的な表現を好みスイス、ドイツ、米国、UKなど欧米諸国が該当する。
    高コンテクストとは「察しの文化」。直接的な表現より間接的な表現を好み、日本、中国、メキシコ、ブラジル、ロシアが該当する。
  • 日本人は高コンテクスト(察しの文化)、アメリカ人は低コンテクスト(言葉の文化)、これにより発言やしぐさで誤解が生じてしまう。
  • 「誤解を避ける3ステップ」を実施する事で、異文化間での誤解を避けることができる。
  • 「誤解を避ける3ステップ」
    ①自分と相手は違う事を認識
    ②相手が低コンテクストか高コンテクストか分析
    ③相手が低コンテキストであれば、言わない非言語部分のメッセージを言語化する努力を試みる。相手が高コンテキストであれば、相手の表情を見ながら適切な対応をする。

誤解は論理的に回避しよう

外国人と一緒に仕事をしたり、留学や海外赴任で生活基盤を海外に移すなど、外国人と接する機会が多くなると、かならず文化の違いによる「誤解」という問題に直面する。

ブレークスルーでは、「察する文化(低コンテキスト)」で直接的・明示的表現を特に好まない日本人である私たちが、様々な文化的背景を持つ人に対して伝えたい事が意図通りに伝わる論理的・戦略的スピーチ手法「グローバル・パブリックスピーキング®」を教えている。スピーチ手法として、異文化理解をメインとしているのは、発音や発声、表情やジェスチャーといった表面的なテクニックだけマスターしても、語学力を上げても、異文化間で生じる誤解を防ぐことができない、話しの意図や真意を相手に上手く伝えることができない、ということを講師である私たち自身がこれまで沢山経験してきたからだ。

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