まったく違う意味を表すwill と would
would の読み方を間違えるとやばいことになりかねない?!
重要な交渉場面で先方が言ってきた、次の2つの文が全然違うニュアンスを示していることがお分かりだろうか?
1. You have asked about the possibility of revising the price list we currently use. I believe that will be a very tough thing to do. (現在の値段表を修正なさりたいとのご要望ですが、非常に難しいことだと思います)
2. You have asked about the possibility of revising the price list we currently use. I believe that would be a very tough thing to do.
1は、will be なので、これから現に修正という可能性があるだろう、ということを前提として、「やってみてもいいが、難しいぞ」とポジティブに言っている。
2は、would beを使っているので、「修正」は仮定とされていて、とりあえずありえないだろう、という前提から、「やるのは難しいからこんな話なかったことにしよう」と言っている。暗に断っている、やる気のない表現だ。
よく日本人が、Noと直接言う代わりに「難しいですね」と言うのと同じだ。アメリカ人に日本語を教えている時に、
「日本人から『難しい』と言われたらそれは『NO』という意味だ」
と教えていたことがあった。英語話者の間では、そういう遠回しな言い方はないと思い込んでいたが、実は、英語でも同じような遠回しの言い方があったのだ。
ありえないことを前提にするWould
2は、仮定法(現在の事実に反する仮定)のwouldである。つまり、ありえないことを前提として語っているので、あくまでも仮定、想像上での話をしていることになる。
If you ate it, I would eat it. (あなたはそんなまずいものは絶対食べないだろうから、もしあなたが食べるなら、私も食べてもいいー「やれるもんならやってみろ」的な。。。)
これをwill に直すと、ニュアンスが全然変わる。
If you eat it, I will eat it. (そのケーキ美味しそうだけけど、どうしようか迷っちゃう。もしあなたが食べるなら、私も食べてみようかな)
「日本人が誤解する英語」の著者マーク・ピーターセン氏によれば、こういう使い方は日常生活でもよく使われるようだ。
例えば、
「ねえねえ、実は私、妊娠しちゃったのよ」と相談を持ちかけられた時、
「私だったら産むわ」
と言う場合、英語では
“I’d have it.” (I would have it.)
と言っただけで十分な表現になる。フルセンテンスで、
If I were you, I would have it.
とまで言う必要はない。
なぜなら、この I’d は、I would であり、仮定法と自ずから分かり、省略されている条件節が、If I were you, だとすぐに想像できるからだ。
ここで代わりに間違えて、例えば、
“I’ll have it.”
と will で言ってしまうと、「自分が代わって産んであげるわ」というありえない意味になってしまう。
Would をマスターすれば英語の達人
このようなwouldの使い方が、日常に溢れているそうだが、お気づきだろうか。ピーターセン氏曰く、映画「カサブランカ」の中でこのようなwouldが47回ほど登場し、そのうち、36回が If 節ぬき。might, could などの仮定法も含めたら120回にも及ぶそうである。
Would, Could が単なる Will, Can, の過去形だと理解している人がいるかもしれない。しかしそれだと、とんでもない損失や誤解につながってしまう。とにかく、慣れないうちは、Would, Couldが出てきたら「仮定法」で、If 節が隠れている、と疑った方がいい(もちろん違う使い方もあるが)。
私のアメリカ人の知り合いで、会話中やたらとwould, couldを使う人がいた。あとでその人の評判を聞いてみると、「彼は夢想家だよ」とのことだった。確かに、話のほとんどは仮定の話で、現実的な対応策がほとんど聞かれなかった。日頃から、このような助動詞の使い方には、気をつけたいものだ。逆に言うと、英語でも日本語のような微妙なニュアンスを表現したければ、助動詞をうまく使いこなせばいい、ということだ。
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ストレートに表現するだけが英語ではない。英語にも日本人的な言い回しがある。例えば、何か感じ良くソフトに断りたい時は、"I wish I could."(残念ながら…)を使ってみよう。柔らかく丁寧で、しかも断る意志がハッキリ伝わる、まさに日本人の心にぴったりくる断り表現だ。
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日本人の英語はストレートすぎて相手を不快にする場合がある。英語にも敬語表現があることを理解し、深く学習し、ビジネスシーンで活用することでより厚い信用が得られる。だからと言って、間違いを恐れて消極的になるのではなく、間違いこそが英語上達のコツだと理解したい。
⑤ スピーチ・プレゼンでは論理的に述べよ!
あなたの意図が伝わらないのは、日本人特有の「省略」が原因であり、その省略によって論旨がストレートに進まない。英語を学習する前に、日本語でいいから、ロジカルに、ストレートに論旨を運ぶ訓練をしよう。そうすればあなたの英語力も、外国人とのコミュニケーション能力も飛躍的に向上するだろう。




