朝礼でのスピーチが憂うつだ、そう感じたことはないだろうか。
急に順番が回ってきて、何を話せばいいかわからない。緊張して頭が真っ白になる。あるいは、スピーチの意味自体に疑問を感じる。。。そんな経験があるかもしれない。だが、安心してほしい。朝礼スピーチが苦手なのは、あなただけではない。むしろ、多くの人が同じような悩みを抱えているのである。
この記事では、朝礼スピーチに対する苦手意識を克服するために、まずは「なぜスピーチが苦手と感じる人が多いのか」について解き明かす。さらに、会社が朝礼スピーチを行う本当の理由と目的、そして、初心者でも実践できるスピーチの基本的な型(PREP法)について、わかりやすく解説していく。さらに、後編では、スピーチのネタ10選と、具体的な事例、さらに、コツや注意点も述べている。
この記事を読むことで、朝礼スピーチが「怖いもの」から「自分を高めるチャンス」へと変わるだろう。スピーチへの苦手意識を克服し、自信を持って話せるようになるきっかけを、ぜひここからつかんでほしい。
1. スピーチが苦手な人が多い、そのワケとは?
「次はあなたの番で、朝礼スピーチをお願いします」——そう言われた瞬間、どこか重たい気持ちになったことはないだろうか。「何を話せばいいか分からない」「人前で話すのが怖い」「そもそも朝からそんなテンションじゃない」——実は、そう感じている人は、あなただけではない。
スピーチが苦手な人が多いのには、れっきとした理由がある。それは、これまでその力を伸ばす機会がなかったからである。特に日本では、長い間「黙っていることが美徳」「目立たないことが正しい」という価値観が根付いてきた。学校の授業では「発表する側」よりも「静かに聞く側」が圧倒的に多く、「人前で堂々と話す」という経験が積みにくい環境だったのだ。
もちろん、最近では教育現場でもプレゼンテーションやディスカッションの機会が増えつつあるが、それでも大人になって社会に出てから、いきなり「はい、今日から皆の前でスピーチして」と言われれば、戸惑うのは当然である。
さらに、「スピーチのネタが思いつかない」「話す内容が仕事に関係ないようで気が進まない」「うまく話せなかったら恥ずかしい」など、不安や抵抗を感じる要素はたくさんある。特に、「出るくいは打たれる」という空気の中で育ってきた人にとっては、人前で自分の考えを述べることそのものがハードルに感じられるだろう。
だが、ここで一つ知っておいてほしい。スピーチが苦手なのは、あなたの能力の問題ではない。その多くは、「慣れていないだけ」「準備の仕方を知らないだけ」なのだ。だからこそ、コツさえつかめば、誰でも朝礼スピーチは上達できる。
このブログでは、「朝礼スピーチは苦手」と感じているあなたのために、準備の方法から、話しやすいネタの選び方、そして実際の例文まで、実用的な内容をわかりやすく紹介していく。
次のスピーチで、「ちょっと話してみようかな」と思えるようになる。その第一歩を、一緒に踏み出してみてほしい。
2. 会社の朝礼で短いスピーチを行う理由と目的
「仕事に直接関係があるわけでもないのに、なぜ朝からわざわざスピーチをしなければならないのか?」——そう疑問に思ったことはないだろうか。忙しい朝、準備もなく急に話を振られるのは気が重い…という気持ちも、よくわかる。しかし、実は朝礼でのスピーチには、ちゃんとした“理由”と“目的”があるのだ。
会社によって運用の仕方には違いがあるが、多くの場合、短いスピーチを取り入れることには、次の3つのねらいがある。
1) チームの雰囲気を整え、前向きな一日をスタートさせるため
一人のスピーチが、その日の職場の空気を左右する——といっても過言ではない。朝礼スピーチは、朝のけだるい空気を切り替え、チーム全体に活力をもたらすための“音頭取り”のような役割を果たす。特に、ポジティブな話題や共感を呼ぶ話が出ると、それだけでチーム全体の表情がやわらぎ、明るい一日のスタートを切ることができるのだ。
2) お互いを知り、信頼関係を育てるチャンスになる
同じ職場で顔を合わせていても、「その人が何を大切にしているのか」「どんな価値観を持っているのか」を知る機会は意外と少ない。朝礼スピーチは、そうした“人となり”が垣間見える貴重な時間である。
特に最近は、以前のような飲み会や雑談の時間が減り、社員同士が個人的な話をする機会が限られてきている。だからこそ、スピーチでちょっとした日常や感謝の気持ちを話すことが、チーム内の親近感や信頼を築くきっかけになる。上司が自分の失敗談や嬉しかった出来事を話すだけでも、部下は「ここでは安心して話していいんだ」と感じられるようになるのだ。
3.)「伝える力」「考える力」を伸ばす、絶好のトレーニングの場
ビジネスの現場では、「何を伝えるか」だけでなく、「どう伝えるか」がますます問われる時代である。朝礼の短いスピーチは、限られた時間で要点をまとめ、人前で話す訓練ができる貴重な機会だ。
上司への報告やクライアントへの提案、会議での発言など、あらゆる場面で必要となる「伝える力」は、こうした小さな実践の積み重ねによって磨かれていく。また、スピーチのネタを探すために新聞やニュースに目を通すことで、自然とアンテナの感度が高まり、仕事にも活かせる情報収集力が身についていく。
こうして見ると、朝礼スピーチは決して「意味のない儀式」ではない。むしろ、チームの空気を整え、信頼を築き、自分の成長につながる絶好のチャンスなのである。
苦手意識を持つのは当然だが、少し見方を変えるだけで、「これは意外といい機会かも」と感じられるようになるはずだ。
3. スピーチの基本の流れ
「スピーチをしてください」と言われて、一番困るのは「何からどう話していいのか分からない」ということではないだろうか。頭の中にいろいろなことが浮かんでは消え、結局まとまりのない話になってしまう。これでは、聞き手にとっても「何が言いたかったの?」とモヤモヤが残ってしまう。
実は、スピーチには“流れ=型”がある。
この型に沿って話を組み立てれば、内容が自然と整理され、聞き手にも伝わりやすくなる。スピーチの上手さは「センス」ではない。構成のコツを知っているかどうか、それだけで大きく差が出るのだ。
スピーチの型として「起承転結」はなぜ向かないのか?
学校でよく教えられる「起承転結」は、物語を語るときには効果的な構成である。しかし、短時間で結論を明確に伝える必要がある朝礼スピーチでは、この型はあまり向いていない。特に「転」の部分にこだわってしまうと、話が脱線したり、まとまりを欠いてしまったりすることが多い。
話に起伏をつけようとして「転」を盛り込みすぎると、聞き手は混乱し、「結論は何だったのか?」と感じてしまうのだ。
もし「起承転結」の構成に慣れている人であれば、オープニング(起)→ ボディ(承・転)→ クロージング(結)というように、シンプルに3つに分けて捉えるといいだろう。だが、特に初心者には、もっと分かりやすく、話す内容を明確に伝えられる「PREP法」がおすすめである。
その前に最重要:ワンビッグメッセージを決めよう
PREPの型に沿って話す前に、何よりも大切な準備がある。
それは、「このスピーチで、自分は何を一番伝えたいのか?」という核心メッセージをはっきりさせることだ。
ブレイクスルースピーキングでは、これをワンビッグメッセージと呼んでいる。
話す内容を考える前に、「自分が本当に言いたいことは何か?」を自問し、それを日本語なら20字以内にまとめてみてほしい。
たとえば——
「日々の感謝を忘れずにいたい」
「小さな挑戦の積み重ねが自信になる」
「頼ることは弱さではなく、チーム力だ」
このワンビッグメッセージが決まっていれば、話がぶれることがなくなり、構成もスムーズに作れる。つまり、スピーチの準備は、“何を話すか”ではなく、“何を一番伝えたいか”から始めるのが成功の秘訣なのである。
初心者でも使える!PREP法という構成
そして、次に活用したいのがPREP(プレップ)法である。
PREPは、短い時間でも話の流れが明確になり、聞き手に伝わりやすい構成として、初心者にも非常に使いやすい。
PREPをお勧めする、もう一つの大きな理由は、「自分にとって、ワンビッグメッセージとは何か?」を明確にするとてもいい手段・訓練だからだ。よく「あの人の話は何を言っているのかよくわからない」と言われる、その原因は、ワンビッグメッセージの欠如なのだ。
【PREPとは】
PREP法とは、短い時間で説得力あるスピーチをするための、シンプルで論理的な話の型である。
以下の4つの流れで構成されている:
P:Point(結論) → R:Reason(理由) → E:Example(具体例) → P:Point(もう一度結論)
この順番に従うことで、話が一本の筋として通るようになり、聞き手も内容を素直に受け取りやすくなる。
【PREPの4ステップと実践のコツ】
(1)Point(結論)
最初に、あなたのワンビッグメッセージをここに持ってきて、明確に主張を述べる。
たとえば、「今日は“人に感謝すること”の大切さについてお話しします」とテーマをはっきり打ち出そう。
いきなり結論から話すだけでも十分に伝わる。 慣れないうちは、いきなり結論からズバッと言ってしまっても良い。その方が斬新で新鮮な響きを持つ場合がある。慣れてきたら、「最近〇〇が話題になっていますが……」などの導入文をつけても良い。
(2)Reason(理由)
次に、そのメッセージに至った理由を簡潔に伝える。
「なぜなら、感謝の気持ちを意識するだけで、周囲との関係がより良くなるからです」など、短く、要点だけに絞るのがポイント。
(3)Example(具体例)
続いて、あなた自身の経験や身近な出来事を紹介しよう。
たとえば、「昨日、同僚が資料作りを手伝ってくれて、“ありがとう”と伝えたら、笑顔で“任せてください”と返してくれて、とても嬉しかったんです」など。
特に失敗談やちょっとした日常エピソードは、聞き手との距離を縮めやすい。
(4)Point(再度結論)
最後にもう一度、最初の結論を繰り返して締める。
「だからこそ、感謝の気持ちはその場でしっかり伝えることが大切だと、私は思います」などとまとめると、スピーチがすっきり終わる。
このポイントを最初と最後に言って、繰り返すというのが、実は、本当のミソなのだ。大事なことは何回も述べることで、相手の記憶に残る。しかも、最初と最後は、脳に対して特に印象に残りやすい。 こんな流れで、一度、話を作ってみて、リハーサルをしてみよう。
準備のコツ:構成は「簡単なメモ」で十分
スピーチを原稿丸ごと覚えようとすると、かえって緊張が高まり、頭が真っ白になることがある。
だからこそ、話す内容は「キーワードだけのメモ」にとどめるのがベストだ。
たとえば、
- Point:感謝の気持ちはその場で伝える
- Reason:関係性が良くなる
- Example:昨日の同僚とのやりとり
- Point(再):やはり感謝の言葉は大事
このようにメモを作っておけば、構成が頭に入りやすく、自然な言葉で話すことができる。
また、以下はスピーチ時間に合わせた文字数の目安である。
-
1分間スピーチ:約300文字
-
3分間スピーチ:約900文字
これを意識しながら練習すれば、時間オーバーの心配もなくなるだろう。
まずは、ワンビッグメッセージを決めて、PREPに当てはめてみること。それだけで、スピーチは驚くほど話しやすく、伝わりやすくなる。
前編は以上で、次の後編では、実際にどんな内容を話せばいいのか、初心者向けにおすすめのスピーチネタをご紹介したい。より具体的な事例が掲載されているので、引き続きお付き合い頂けたら幸いだ。