リーダーの技量が問われる危機対応スピーチ その②ドイツのアンゲラ・メルケル首相

「信元夏代のスピーチ術」編集長 信元です。

現在、かつてないパンデミックが世界中を脅かし、各国、各都市、各業界でのリーダーたちは、刻一刻と状況が変化する中、大胆かつ的確な判断を下す必要がある厳しい局面に立たされています。前回から、そんなリーダーたちが行った、お手本となる危機対応スピーチを取り上げ、解説しています。

ご紹介する5つのスピーチのうち、今回は2つ目です。

ワンビッグメッセージで伝えた、ドイツのアンゲラ・メルケル首相

メルケル首相は、予防接種を施した医師がコロナ陽性と判明したため、14日間の自宅隔離を行い、検査で陰性となり、戻ってきました。もうすぐイースターを迎え、みな外にでて祝いたいと思うであろうこのタイミングで、国民へ外出自粛を呼び掛けるメッセージを届けました。

なぜ外出を自粛しなければいけないのか、を説得するにあたり、「絶対に出てはいけません、見つけたら罰金です」と強制的に封じ込むこともできたでしょう。しかしメルケル首相のアプローチは違いました。

「とてもつらいですよね。分かります。」

「もう2週間も要請に従っている。あとどれだけ続くんだ?と思う人もいるでしょう。分かります。」

不安やフラストレーションが募る国民の気持ちにまず寄り添います。

その上で、

「私がいま解除日を端的に申し上げ、今後の感染率を鑑みてもし約束を果たすことができなかったら、とても無責任なことになってしまいます。約束をもし私が台なしにしてしまうことがあれば、医療も、経済も、社会もどんどん悪い状況になるでしょう。」

と述べ、憶測や希望などに基づいたあいまいな回答や約束でさらに混乱を招く、それを避けるために、理解を求めている、という立ち位置を端的に伝えています。

しかしここでメルケル首相は、国民に約束をします。

「私がみなさんにお約束できるのは、連邦政府を頼ってくださいということです。私も昼夜問わず、どうすればみなさんの健康を守りながら、元の生活を戻すことができるかを考えています。」

あいまいな約束はしない、と述べた直後のたった一つの約束。これは強力です。

できる約束とできない約束を明確に線引きし、さらにできる約束を1つに絞り込むことで、つまりブレイクスルーメソッドでいうところの「ワンビッグメッセージ」に絞り込むことで、メッセージを強化し、受け入れられやすくしています。

つい、あれもこれも盛り込みたくなりますが、どんなスピーチでも、さらには危機対応時にはさらに大切なポイントの一つは、たった一つの一番大切なメッセージに絞り込んで、それを明確に伝えること、です。不必要な憶測や解釈は省かれ、メッセージがそのまま額面通りに受け取られ、伝わりやすくなり、そうすることで、説得力が格段に上がってくるのです。

 

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