GPSシートとは何か? 実例で見る、伝わるプレゼンの設計図

“信元夏代のスピーチ術” 編集長、プロフェッショナルスピーカーの 信元です。

「GPSシートって、何ですか?」——ウェビナーや企業研修で、この質問をよくいただきます。GPSシートとは、私が開発したブレイクスルー・メソッド™の構成ノウハウを、たった一枚に集約したワークシートです。カーナビが現在地から目的地までのルートを示してくれるように、GPSシートも「なぜ伝えるのか」「何を伝えるのか」「どう伝えるのか」という3つのステップを通じて、聞き手を動かすゴールまでの道筋を示してくれます。今日は、拙著『20字に削ぎ落とせ』に掲載している実際の記入例とあわせて、GPSシートの使い方をご紹介します。

この記事でわかること

  • GPSシートとは何か、名前の由来
  • なぜ「話し方」より先に「整理」が必要なのか
  • STEP1 WHY?——聞き手と目的を定める
  • STEP2 WHAT?——ワンビッグメッセージに絞り込む
  • STEP3 HOW?——実例で見る、伝わる構成の組み立て方

GPSシートとは——「話す前に、整理する」ための一枚のシート

GPSシートの「GPS」は、私が指導している「グローバル・パブリックスピーキング」の頭文字です。同時に、カーナビの”GPS”という意味も兼ねています。多くの方が、プレゼンやスピーチの準備と聞くと、真っ先に「どう話すか」「スライドをどう作るか」を考え始めます。でも、それは順番が逆なんです。伝わるプレゼンの7〜8割は、話す前の「情報整理」で決まります。残りの2〜3割が、ようやく「伝え方」の出番です。GPSシートは、この情報整理のプロセスを、WHY・WHAT・HOWという3つのステップに分解し、一枚のシートに落とし込んだものです。ここでは、拙著、「20字に削ぎ落とせ」で紹介した、クラウドファンディング向けプレゼンの実例、旅行SNS「REALトラベル」(仮名)で見ていきましょう。REALトラベルの詳細なじ例については、「20字に削ぎ落とせ」をご参照ください。

STEP1 WHY?——なぜ伝えるのか、を聞き手起点で定める

STEP1では、次の4つを埋めます。

  • AUDIENCE(聞き手は誰か):聞き手は誰で、何を考え、何を求めているか
  • WHAT’S IN IT FOR THEM(どんな価値が得られるか):聞き手にとって、どんな価値があるのか
  • WHY YOU(なぜあなたなのか):数ある話し手の中で、なぜ「あなた」が話す必要があるのか
  • P.A.I.N.T.(このスピーチの目的は何か):聞き手に、どう動いてほしいのか

「REALトラベル」の例では、AUDIENCEに「一人旅をデザインしたいが、SNSでローカルの友人を探すのは大変で、警戒もされやすい人たち」、WHAT’S IN IT FOR THEMに「安心・信頼できる会員制サイトで、旅の予約から動画配信による副収入まで1か所で完結できること」、WHY YOUに「自分自身が一人旅で同じ苦労をし、方策を知り尽くしているからこそ作れるサイトであること」、が書き込まれています。

P.A.I.N.T.とは、スピーチ・プレゼン全体のそもそもの目的は何か、を明確化するもので、

Persuade:説得
Act:行動喚起
Inspire:鼓舞する
Notify:(情報を正確に)伝達する
Think:考えさせる(意識変容)

の頭文字をとったものです。
REALトラベルの例では、P.A.I.N.T.の欄には、「熱烈な賛同者を集め、クラウドファンディングで投資してもらうこと」が書き込まれています。聞き手が誰で、何に困っていて、なぜ自分がその解決策を語れるのか。ここが定まって初めて、次のSTEPに進めます。

STEP2 WHAT?——ワンビッグメッセージに絞り込む

聞き手が見えてきたら、次はONE BIG MESSAGE(伝えたいたった一つのメッセージ)を定め、それを支えるMAIN POINTSを3つ書き出します。

「REALトラベル」の例では、ONE BIG MESSAGEは「自分らしく広げる、広がる、REALな旅」(17字)。

それを支える3つのMAIN POINTSが、

  1. Connect(自分の興味と合う人たちと安心してつながり、世界にネットワークを広げる)
  2. Design(旅のすべてを1か所でデザインし、可能性を自ら広げる)
  3. Experience(リアルな体験を動画で伝え、つながりと収入を広げる)

です。

メインポイントそれぞれに「So What?(だから何?)」と問いかければワンビッグメッセージに行きつき、ワンビッグメッセージに「Why So?(なぜそう言えるのか?)」と問いかければ3つのメインポイントに行きつく。この往復で、論理の一貫性を確認します。

STEP3 HOW?——実例で見る、伝わる構成の組み立て方

STEP1とSTEP2で整理した内容を、聞き手の心に残る構成に組み立てます。

「REALトラベル」の例のオープニングは、Opening Bang(冒頭7秒のインパクト)に、驚きの事実という手法を使い、「一人旅人口は世界中で急増している」と切り出し、Big Promise(聞き手への約束)では、「自分らしい唯一無二の一人旅を簡単に実現できる」と約束し、Roadmap(道順)で「CDEの3つのステップで実現する」と予告します。

そして各メインポイントには、必ず具体的なストーリーがつきます。

たとえばConnectのポイントでは、台湾旅行を計画した際、ローカルガイドとFacebookでつながろうとして最初の8人からは返信がなく、9人目にはスパム報告までされ、ようやく10人目とつながれた、という実体験が語られます。この失敗から「信頼できる相手かどうかが分からない」という課題に気づき、バックグラウンドチェックの仕組みを思いついた、という流れです。抽象的な「安心・信頼」という言葉だけでは、聞き手の記憶には残りません。具体的なストーリーがあって初めて、聞き手はその価値を実感できるのです。各メインポイントの後には次のポイントへの移行、最後には振り返りとQ&A、そしてオープニングと呼応するクロージングが続きます。

GPSシートとは、「話す前に、なぜ・何を・どう伝えるかを一枚で整理し、視覚化する設計図」である

GPSシートは、話し方のテクニック集ではありません。聞き手を主語に、伝えたいことを一つに削ぎ落とし、筋の通った構成に組み立てるための、思考を視覚化した設計図です。次にプレゼンやスピーチの準備をするときは、スライド作りに手をつける前に、まずGPSシートのWHYの欄から、埋めてみてください。

よくある質問

Q. GPSシートは、誰でも使えますか?
A. はい。ビジネスプレゼン、スピーチ、営業トーク、面接など、聞き手に何かを伝えて動いてもらいたい場面であれば、業種や役職を問わず使っていただけます。

Q. GPSシートと『20字に削ぎ落とせ』は、どういう関係ですか?
A. 『20字に削ぎ落とせ』は、GPSシートの土台となる思考法——とくにワンビッグメッセージへの絞り込み方——を体系的に解説した書籍です。GPSシートは、その思考法を一枚のシートに落とし込んだ実践ツールです。

Q. ワンビッグメッセージとメインポイントは、どうつなげればいいですか?
A. 「So What?(だから何?)」「Why So?(なぜそう言えるのか?)」という2つの問いを、メインポイントとワンビッグメッセージの間で往復させてください。この往復が、論理の一貫性を作ります。

Q. STEP1〜3のどこから手をつければいいですか?
A. 必ずSTEP1のAUDIENCEから始めてください。聞き手が定まらないまま、ONE BIG MESSAGEや構成を考えても、独りよがりな内容になってしまいます。

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