外国人とのコミュニケーションで誤解された経験ありますか?
「誤解があるな」と感じても、なかなかそれに気づかないことがある。不思議な感じでいっぱいなのだが、後で文化の違いが原因だと分かると「えー?!そんなことで!」と驚くと共に、溜飲が下がる。。。そんなご経験がおありだろうか。
今回は、文化の差による誤解の大きな原因について解説し、それを解決に導く3つのステップを提示したいと思う。
解決策としての3つのステップを実施するには、まず異文化間の誤解にはどんな種類があり、何故それが起こるのか(原因)をよく理解することがポイントなので、最後のステップだけ読まず、1章ずつ読みすすめてほしい。
異文化間で生じる誤解は2種類
- 言葉による誤解
- しぐさ・行為に対する解釈の違いから生じる誤解
文化の違いによる誤解は、主に直接的に発する言葉、間接的なしぐさや行為の2種類ある。
実際どんな誤解があるか、誤解が生じやすい日本人とアメリカ人との間でよくある誤解を例に紹介する。
1.言葉による誤解
まずは言葉による誤解。日本人⇒アメリカ人、アメリカ人⇒日本人、でよくある誤解を2つ紹介しよう。
【日本人⇒アメリカ人】”It is difficult.(それは難しいですね)”
まず、アメリカ人に誤解されてしまう代表的な言い回しが、遠回しにできないことを伝える”It is difficult.(それは難しいですね)”という表現だ。
日本人は、「できません」とは言わずに「難しいですね」と言って断るのが普通だ。だから、これを英語に直訳して、”It is difficult.” と言ってしまいがち。
しかしこう言うと相手は諦めるどころか、しつこくさらに突っ込んでくるだろう。なぜなら、「難しいなら、障害となっているものを取り除けば可能になるだろう」と考えるからだ。アメリカ人にとって”It is difficult.” は、決して “NO”の代わりではない。
ところが日本語の「難しい」は、はっきりとした「ノー」なのだ。日本語を学習する外国人には、きちんと教えたほうがいい。
■外国人への断り方については以下の記事が参考になる
文化の違いを認識し、それを深く理解し、状況に応じて臨機応変に対応することで、異文化間における誤解が避けられる。まずはどんな違いがあるのかを学習しよう。
【アメリカ人⇒日本人】”It’s none of your business.(あなたには関係ないことです)”
一方、アメリカ人から言われて日本人が誤解してしまうのが、「”It’s none of your business.(あなたには関係ないことです)” 」だ。
アメリカでは、”It’s none of your business.(あなたには関係ないことです)” と言っても、別に相手は傷つかないが、日本人側の人たちは「なんてぶっきらぼうで礼儀知らずだ」と、気分を害するに違いない。
だから、ベテランの通訳者は、これを直訳せず「ご心配には及びません」と訳す。
文化の違いを認識し、それを深く理解し、状況に応じて臨機応変に対応することで、異文化間における誤解が避けられる。まずはどんな違いがあるのかを学習しよう。
2.しぐさ・行為に対する解釈の違いから生じる誤解
2つ目は、しぐさや行為の解釈の違いで生じる誤解。ミーティング中の相槌を例として紹介する。
日本とアメリカで異なるミーティング中の「うなずく(相槌)」の解釈
例えば、うなずく(相槌)、と言う表面的な行為について考えてみよう。
アメリカ人がプレゼンをし、聴衆の半分以上は日本人という状況下。よく見られる典型的なシーンは、日本人はミーティング中は発言しないで、うなずくのみ。一方で、アメリカ人は意見を多発する。あなたはこんな場面見たことあるだろうか。
さて、この場合、発表者のアメリカ人は、どう解釈するのか?
- アメリカ人
⇒自分の話にうなずいている=賛成してくれている、発案は承認された! - 日本人
⇒まずは話を聞いて、同意や質問・意見は後でしよう!
(うなずきながら聞くのは聞いている事の意思表示であって、賛成しているわけではない)
アメリカ人が考える「うなずく」と言う行為は、同意しているという意味に他ならない。そしてこの状況下で、アメリカ人が見る日本人の言動は、うなずき。特に反論も質問もない。だからこのアメリカ人発表者は、「すべて賛成してくれている、この案件は承認されたと同じこと」と勘違いしやすい。
一方で、日本人が考える「うなずく」という行為は、あなたの話を聞いている、というサインであり、同意しているわけではない。だから、「実は反対なのだが、大勢いる場では和を乱すべきではない。ここで反対意見を述べては、相手の面目を潰すかもしれない。ここは会議が終わってから個別にじっくり話をしたほうがいいだろう」と考える。
このように、同じ「うなずく」という行為だが、文化的な解釈が違うため、両者に誤解が生じてしまう。
■しぐさや表情による誤解とその解決策についてより詳しく解説した記事はこちら
文化の違いを認識し、それを深く理解し、状況に応じて臨機応変に対応することで、異文化間における誤解が避けられる。まずはどんな違いがあるのかを学習しよう。
異文化間で言葉やしぐさで誤解が起きる原因
世界には2つのコミュニケーションパターンがあるのは、ご存知だろうか。
アメリカの文化人類学者のエドワード・ホールによると、
- 低コンテキスト
- 高コンテキスト
の二つがあると言う。
実は、先ほど紹介した日本人とアメリカ人の間でよくある言葉やしぐさによる誤解は、この低コンテキストと高コンテキスト、という2つのコミュニケーションパターンの違いが原因だったのである。
低コンテクストと高コンテキストとは
- 低コンテキスト:言葉の文化
※該当する国:欧米諸国(スイス、ドイツ、米国、UKなど) - 高コンテキスト:察しの文化
※該当する国:日本、中国、メキシコ、ブラジル、ロシア
1つ目の低コンテキストとは、言語コミュニケーションに大きく依存し、言葉以外のものはあまり考慮しない「言葉の文化」のことだ。コンテキスト(文脈)への依存度が低いので「低コンテキスト」と呼ばれる。ホールの分類によれば、欧米諸国はこの低コンテキスト文化に属する(スイス、ドイツ、米国、UKなど)。
2つ目の高コンテキストとは、非言語コミュニケーションに大きく依存し、日本でお馴染みの「察しの文化」とも呼ばれるものだ。コンテキストへの依存度が高いので、「高コンテキスト」と呼ばれる。中国、メキシコ、ブラジル、ロシアの人たちは、高コンテキスト文化圏だ。日本は、この高コンテキスト文化圏に属し、一番その度合いが強い。
日本人と欧米諸国の人々との間で誤解が生まれやすいのはこのためだ。
低コンテキストと高コンテキストの特徴※比較図
低コンテキストと高コンテキストの特徴を列記してみよう。
低コンテキストでは、直接的・明示的メッセージが好まれるが、高コンテキスト文化圏では、直接的表現を避ける表現が好まれる。
この様な違いから、自国の表現を英語やその他外国語に直訳したり、日本人にするのと同じようにうなずいたりすると、思わぬ誤解が生まれてしまうのだ。
このようなコミュニケーションパターンの異なる異文化間で誤解を避けるには、誤解を避ける方法を知ることだ。
文化の違いを認識し、それを深く理解し、状況に応じて臨機応変に対応することで、異文化間における誤解が避けられる。まずはどんな違いがあるのかを学習しよう。
異文化間で誤解を避ける3つのステップ
異文化間で誤解を避ける3つのステップは以下。
- 文化の差があることを認識すること。
- 相手と自分がコンテキスト(文脈)に対してどのような依存度か(低コンテキストなのか、高コンテキストなのか)を分析する
- 相手が低コンテキストであれば、言わない非言語部分のメッセージを言語化する努力を試みる。
相手が高コンテキストであれば、相手の表情を見ながら適切な対応をする。つまり、非言語を言語化したメッセージは用意しておき、必要であれば伝える。
この3つのステップを使って、先ほどの「難しい」と「うなずく」を対処してみよう。
「難しい」の対処法
- 認知:アメリカ人と日本人との間には文化の差がある。
- 分析:「難しい」の意味の違いを学習・認識する。
アメリカ人は低コンテキストなので、難しい=難しい。断る時にノー以外のあいまいな表現は通じない。 - 実践:アメリカ人には「難しい」とは言わず、はっきり「ノー」と伝える。
もしくは、日本語のニュアンスが正しく伝わる英語表現(I wish I could)を使ってできないことを伝える。
例えば、「難しい」の場合なら、まずはその違いを学習・認識する。そして、もし相手がアメリカ人のような低コンテキスト側の人なら、曖昧な態度はやめて「ノー」と言うべきだ。この場合のあなたの非言語メッセージは、「本当はできないのだけど、直接的な言い方をして相手を傷つけたくない」ということ。ここで大事なのは「相手を傷つけたくない」という思いやりの部分。ここが隠れている。いわゆる「言わなくてもわかるでしょ?」の部分だ。これこそ言語化した方がいい。ここが言語化されないことで、多くの日本人はグローバルな舞台ですごく損をしている。
だから「ノー」とだけ言ってしまうとかなり不十分で、すべてを言い切ったことにはならない。実は、アメリカでも、もう少し柔らかな、しかし毅然とした態度を表す表現 “I wish I could” などの言い方があるので、それを学ぶとよいだろう。
■I wish I couldについては、以下の記事が参考になる。
文化の違いを認識し、それを深く理解し、状況に応じて臨機応変に対応することで、異文化間における誤解が避けられる。まずはどんな違いがあるのかを学習しよう。
「うなずく」の対処法
- 認知:アメリカ人と日本人との間には文化の差がある。
- 分析:アメリカ人の解釈は、うなずく=同意。日本人がうなずくと同意を得たと誤解を生む可能性が高い。
- 実践:まず会議の前に双方のうなずくの意味の違いを説明し互いの認識を合わせる。
会議中、日本人はなるべくうなずかないように(発表者がアメリカ人の場合は特に)。
アメリカ人は日本人が意見しやすいよう「反対意見・質問があれば、この場で遠慮なく言ってください。終わった後も必要なら個別の時間を取りましょう」と冒頭で、さらに途中でも伝える。途中で「質問ありますか?」と頻繁に尋ねる。
「うなずき」の場合なら、まずは、「うなずく」という行為の意味合いが違うことを双方認識しないと始まらないので、会議の前などに伝えておくとよい。他にも誤解のタネになっているが、気づかないこともあるかもしれないので、「文化が違うと誤解は生じるものだ。でも、それは誰のせいでもない。ただ互いに理解・歩み寄らないといけない」旨を伝えておけばよいだろう。
そして、日本人側は、なるべくうなずかないように心がけたり、その場で質問をするように心がける。もし、内容が複雑であれば、会議を一時中断し、誰かに日本語で解説をお願いしてもよい。その際には、日本語が分からない人のためにその旨を説明してから中断する。
アメリカ人側は、日本人が意見しやすいよう「反対意見・質問があれば、この場で遠慮なく言ってください。終わった後も必要なら個別の時間を取りましょう」などと言えば良いだろう。これは、冒頭でも、途中でも伝え、さらに、途中で「質問ありますか?」と頻繁に尋ねる。このように何度も言わないと日本人の遠慮が解けないこともあらかじめ説明した方がいいだろう。
文化の違いを認識し、それを深く理解し、状況に応じて臨機応変に対応することで、異文化間における誤解が避けられる。まずはどんな違いがあるのかを学習しよう。
まとめ
- 文化の違いによる(異文化間の)誤解はコミュニケーションパターンの違いにより生じる
- 世界のコミュニケーションパターンには「低コンテクスト」と「高コンテクスト」の2つに分かれる
- 低コンテクストとは「言葉による文化」。直接的な表現を好みスイス、ドイツ、米国、UKなど欧米諸国が該当する。
高コンテクストとは「察しの文化」。直接的な表現より間接的な表現を好み、日本、中国、メキシコ、ブラジル、ロシアが該当する。 - 日本人は高コンテクスト(察しの文化)、アメリカ人は低コンテクスト(言葉の文化)、これにより発言やしぐさで誤解が生じてしまう。
- 「誤解を避ける3ステップ」を実施する事で、異文化間での誤解を避けることができる。
- 「誤解を避ける3ステップ」
①自分と相手は違う事を認識
②相手が低コンテクストか高コンテクストか分析
③相手が低コンテキストであれば、言わない非言語部分のメッセージを言語化する努力を試みる。相手が高コンテキストであれば、相手の表情を見ながら適切な対応をする。
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コミュニケーションで一番まずいのは、自分の文化背景のみで、相手の言動を判断してしまう事だ。日本人は単一民族(厳密には違うが)で日本で暮らす分には誤解が生じにくい上に、高コンテキスト文化で相手に直接伝えるのが苦手なので、外国人との間で誤解が生じた場合、相手に聞いたら失礼かな?などと考えてしまい一人で悩んでしまう。特に察する能力の高い人ほど、察しない文化圏の人とのコミュニケーションで悩んでしまうケースが多い。
非言語コミュニケーションによる誤解は、言語・非言語、文化、など様々な要因が絡み合って問題が発生するが、それらは、実は、今回ご紹介したように、学術的にパターン化され、解決の為のフレームワークがある。欧米の文化圏で誤解が生じやすく、一人で悩みやすい日本人こそ、こうしたフレームワークを習得しておくのがおすすめだ。(実際、異文化とは自分と自分以外の人のことを指す為、日本人同士のコミュニケーションにも役立つスキルだが)
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