「信元夏代のスピーチ術」編集長 信元です。
さて、前回で出した具体例に戻りましょう。
ポイント1は、「市場シェアが10%減少」、でした。
つまり、「市場シェアが10%減少」しているということが、「A社の買収が我が社の中長期計画実現に必要」な根拠のひとつ、ということなわけですが、「市場シェアが10%減少」だけでは深みのある根拠に聞こえるでしょうか?ちょっと足らないように思いませんか?
では「市場シェアが10%減少」をもっと深めてみましょう。なぜ売上が10%減少したのでしょうか?さらに、このポイント1の下部層に当たる根拠・理由をMECEに考えてみます。
すると、例えば、市場環境全体を、「売り手」、「買い手」、「競争」、「市場参入障壁」、「代替品の脅威」という5つの切り口でMECEにきってみましょう(実はここでも、コンサルタントが良く使うフレームワーク、”ポーターのファイブ・フォース”というフレームワークで、MECEになるように切っています)。
すると、次のような要因が洗い出されます:
- 競争の激化
- 新規プレイヤーが続々参入
- 消費者トレンドの変化
- 当社にはR&D部門がない
- 代替品が台頭しはじめている
このMECEと思われる5つの要素全てが、「市場シェア10%減少」を裏付ける根拠である可能性が大きい、ということになります。
下記に、言語化へのプロセスをまとめながら、言語化されたメッセージ例を示します。
One BIG Message:「A社の買収が我が社の中長期計画実現に必要(20字)」
↓
メインポイント1:「市場シェアが10%減少」
↓(ポイントを更にMECEに深める)
- 競争の激化
- 新規プレイヤーが続々参入
- 消費者トレンドの変化
- 当社にはR&D部門がない
- 代替品が台頭しはじめている
↓(これらのMECEな要素をメッセージとして言語化する)
言語化されたメインポイント1:「多角的な市場環境課題によるシェア減少に対し、攻めの対策が必要。」
So What Why Soで検証
さて、ここで安心してしまってはいけません。One Big Messageと、メインポイントがそれぞれロジカルにつながっているか、検証するプロセスを忘れないようにしましょう。
検証プロセス、といっても、簡単です。
「So what?」「Why so?」という二つの質問をするだけです。
「So What?(だから何なのか)」:メインポイントを見た時に、「だから何なのか?」と尋ねながらOne Big Messageを見てみます。
「(メインポイント1)です。だから、(One Big Message)なのです」。ロジックはあっていますか?
So What?の検証例
言語化されたメインポイント1:「多角的な市場環境課題によるシェア減少に対し、攻めの対策が必要。」
↓(So What?)
One BIG Message:「A社の買収が我が社の中長期計画実現に必要(20字)」
さらに、逆方向にも検証します。その際には、「Why so?(なぜそう言えるのか?)」という質問をします。
Why So?の検証例
One BIG Message:「A社の買収が我が社の中長期計画実現に必要(20字)」
↓(Why so?)
言語化されたメインポイント1:「多角的な市場環境課題によるシェア減少に対し、攻めの対策が必要。」
このプロセスを全てのポイントごとに行い、意義のあるメッセージを作り上げていくのです。
以降のシリーズでは、人を説得するために必要な3つの要素についてもお話しますので、お楽しみに。
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ワンビッグメッセージは英語なら10ワード以内、日本語なら20ワード前後を目標としましょう。聞き手はあなたの口から発せられる言葉を聴いていますから、これより長くなると、印象に残りにくくなってしまいます。具体例で説明します。