英語には必要。でも日本語にはないもの
日本人にはその文法の性質上、論理的に考えられない場合がある。「日本人を知らないアメリカ人。アメリカ人を知らない日本人」の著者の一人であるマイケル・バーガー氏によれば、例えば、簡単な例で、「桜は生物だ(生きている)」と言いたい場合、三段論法では、
1、桜は、植物である
2、植物は、生物(生きている)である
3、だから桜は生物(生きている)である。
のように言う。この三段論法が英語的な表現であり、よりストレートな思考だ。
ところが、この2番の部分を欠く傾向が見られるのが日本人だ、というのがバーガー氏の指摘だ。なぜなら、日本語では、わかりきったものは省略するという文法上の決まりがある。話し手と聞き手が共に了解している「トピック」は、省略された方がくどくなくて、自然な流れだと日本人は感じるからだ。つまり、共通認識事項は省略されやすい、ということ。(詳しくは関連記事を参照)
日本人同士が会話する場合、上記の例だと、2番は共通認識事項だと理解され、その方が自然の会話の流れだと感じられ、省略されても誤解されることはほとんどない。逆に2番をわざわざ言うと「くどい」と感じる人もあるだろう。
ストレートに論旨を運べば、外国人には分かりやすくなる
ところが、この2番の省略を、ほかの違った状況にも当てはめて、すぐに結論に飛んでしまう癖がある人がいる。ブレークスルーセミナーの受講生が英語でスピーチをする場合、そのような間違いをする人がたまにある。
具体例を挙げると、こんなケース。アメリカと比べたとき、日本人の方がコロナで亡くなった人の数は、統計上は少ない。「だから日本人の方が健康である」と、結論づけてしまうことである。
日本人同士なら「気持ちは分かるが、ちょっと苦しいね」という反応もあると思う。日本人の場合、多少論理が飛躍していても、途中に何が省略されているかが分かる能力が普段の会話から鍛えられているのだ。
しかし、外国人からすると、この結論は
「まったく論理が飛躍していて、何を言いたいのかさっぱりわからない」、
極端な人になると
「この人は気が狂ったか」
という反応が返ってくるだろう。かつての私もそんなことを言われたことがある。特に、欧米人に対しては通じない。他の地域の人たちにも、もし彼らが英語を話すなら、通じにくくなる。
そもそも、アメリカの方が人口が多いし、検体の数、統計の取り方が同じではないので、この数字だけでは比較ができない。
そこで、結論を少し変えて、
「日本人の方がコロナで亡くなった人が少ない。だから、日本人の方がコロナにかかりにくい傾向にある」
とするとしよう。これは、まだ前後のつながりがあるので、異論はあるだろうが、言いたいことは理解されると思う。
仮に、もっと強引に、どうしても、日本人の方が健康だ、と言いたいとする。その場合はどのように論旨を進めるか。
A: 日米比較で、コロナで亡くなった人は、日本人の方が少ない
B: どうも、日本人は、コロナにかかりにくいようだ。
C: コロナにかかりにくい人は健康だ。
D: だから日本人は健康だ。
このようになる。かなり強引だが、これなら外国人にも言いたいことは理解されるだろう。もちろんそれぞれに根拠を示すことで説得力を増さないといけない。この例は、あくまでもストレートに考えるとはどういうことかを示す例で、こういうこじつけがましい意見は言わない方がベターだろう。しかし、ディベートなどで、訳のわからない意見をこのように順序立てて言われてしまうと、妙に納得してしまうのも事実だ。
だが、前述のように、特に英語で、いきなりAからDに飛んでしまうと、これは根拠がどうのこうの、という段階を超えて、何を言っているか意味不明となり、英語がわかりにくくなる。このように、日本人の思考には、この途中のB, C 部分が抜けている場合が多くあり、これが日本人の英語苦手意識に結びついてしまっている。
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しかし、これは英語以前の問題なので、日本語で論理展開の思考訓練をすれば、改善される問題だ。このように三段論法的に、ストレートに思考できるようになることで、英語表現をたくさん覚えなくても、いまの英語力だけで、あなたの英語は格段と上達する。
スピーチにおいては、なおさらだ。分かりにくいスピーチの中には、話が飛躍してしまって、聞き手が理解できない場合がある。このようなストレートな論理展開を練習することで、あなたのスピーチはより分かりやすくなるのだ。ちなみに、ブレイクスルー基礎コースでは、このような練習も行っている。
最近は、日本語を話す外国人が増えている。日本語を話すからと言って、彼らが日本人のように思考するとは限らない。日本語を話していても、ロジカルに、ストレートに考えるくせは変わらない。特に欧米人はそうだ。
だから、あなたが日本語でスピーチをする場合でも、相手が外国人なら、特に、この省略されている部分はないかどうか、を常に意識しながら、それを言語化し、構成を考えることが大切となってくる。確かに、自分的にはくどいと感じるかもしれない。でも、あえてそうすることで、あなたのスピーチはより多くの文化圏の人に理解され、親しみやすいものに変わるだろう。
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