空気は読むな!外国人との円滑なコミュニケーションのコツ

直接ものを言わない日本人

”I love you” と愛する人にすんなり言える日本人は、何人いるだろうか。

「想っていても言葉に出さなきゃ伝わらないよ」などと、テレビドラマで女の主人公にアドバイスしている場面をよく見かける。最近でこそ、努力して言語化しようという傾向が見られるが、伝統的には、日本の女性は「好きだ」というような言葉を滅多に使ってはいけないとされていた。

金田一春彦氏によれば、明治時代から、公の席で女の人が男の人をさしおいてしゃべるということはよくない、と考えられてきたらしい。だから女性は、思っていることが口にできなかった。できないといいうより、しなかった。自分の意見はあっても、それは言葉にしないで目上の人に合わせるということが、最高の女性の徳と考えられていた。

だからこそ、逆に、男の人は、女の人の気持ちを考えて振る舞わなければいけなかった。それが粋な男とされていた。

例えば、一緒にレストランに入ったとする。男が「何をたべようか」と言う。女は「何でも」と答える。そうすると、男は、この女は何が好きだろうか、と考えて、女が好きそうなものを考えて注文する、それが望ましい男のやり方だったようだ。

これができない男は、自分本位で、野暮なやつ、として嫌われた。だから男は、必死になって、好きであればあるほど、相手の好きそうなものを普段から聞いたり、密かに観察したりしたのだそうだ。

そんな歴史的文化的な背景と、 “I love you” を表現する日本語が当時は存在しなかったこと(拙稿「なぜI Love You が訳せないのか? 外国人との円滑なコミュニケーションのコツ」参照)を考えると、多くの日本人が愛を直接表現するのが苦手な理由が分かってくる。

■さらに詳しく:日本文化を深く理解する記事

自分を戒める日本文化

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西洋では「コップが壊れました」と言うところを、日本人は「コップを壊しました」と言う傾向が強い。「壊した」と言うことで謝罪の意味を込めているのだ。こういう謝罪を尊ぶ姿勢がもう少し世界に広がってもよいのではないか。それには日本人自身がその違いをはっきりと認識し、言葉で表し、説明する必要がある。

こわれたコップ

「つまらないもの」と言ってお土産を渡すのはなぜか?

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日本人が贈り物を渡す時に言う「つまらないものですが」は、「これは取るに足らないものなので、お返しの心配はいらない」と言う意味だ。「恩知らず」にならないように心がける日本人は、ついお返しをしたくなるので、そんな相手を気遣う習慣から自然に生まれた言葉だ。何気ない日本語の裏側には、実は愛があふれている。

着物女性が贈り物をする

思っていることすべてを言いがちな外国人と話すには。。。

それが愛の表現の問題だけにとどまればいいが、現代のコミュニケーション全般において、こんな調子が続くと問題が生じやすくなる。特に、英語圏から来た外国人とのコミュニケーションに困ることになる。

それは、英語圏の文化は、すべてのものを言語化しようとする「低コンテキスト依存文化」に属し、日本は、言葉以外の顔の表情やニュアンス、音の高低、しぐさや、文脈から相手の真意を読み取ろうとする「高コンテキスト依存文化」に属するからだ。中でも日本語は、高コンテキスト文化圏の中でも一番強く非言語的なものに依存している。

一方で、アメリカ人は、かなり言語への依存度が強い。だから、常に “I love you” と言っている人が多いし、それが風習となったと考えてもおかしくない。

すべてを言語で表現し、言葉での説明を受けないと納得しない、いわば空気が読めない人と、言語以外の部分を大切にし、以心伝心をよしとして、あまり言葉を口にしない人との間には、なかなかコミュニケーションが成り立たない。

「空気が読めない」アメリカ人に対し、「空気を読め」と言っても無理な話だ。他人を変えるのは難しい。むしろ、これに気づいた人が自分を変える努力をした方が近道だろう。実際、私が通訳する時には、「彼の言う真意が分からない」とアメリカ人から指摘された場合、表面上の言葉を訳すのを改め、文化的な背景や言外の意味を補足すると、理解され、双方に喜ばれることが多い。

■さらに詳しく:低コンテキスト・高コンテキストについて深く理解する記事

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非言語コミュニケーションには多くの利点があると同時に、それが効果的に使われないと多くの誤解を生む温床にもなる。言語と非言語コミュニケーションの違いを理解し、うまく組み合わせることで、よりスムースな異文化間コミュニケーションが取れるようになる

空気を読んだら解説を?!

「こんなこと当たり前」と思って訳してなかった部分が意思伝達の妨げになっているのだ。これは「愛しているのが当たり前だから、愛しているといちいち言わなくてもいいだろう」と考えるのと似ている。日本人が外国人とコミュニケーションを円滑に行いたいと思ったら、こういう非言語的な部分を言語化する努力と、言語の習得という二つの側面が欠かせない。

最近は外国人でも日本語が堪能な人が増えてきた。そんな彼らと話す時に、「言わなくても分かるだろう」と考える部分や「日本では当たり前のこと」を意識して日本語で言語化してみたらどうだろう。さらには空気を読んで、それをわざわざこっそり教えてあげる努力をしたら、言葉の壁を乗り越えて、コミュニケーションが円滑になるのは意外と簡単かもしれない。日本語の非言語的な部分を言語化することに慣れておけば、あとは言語の習得に集中すればいいのだから。

(もっと詳しく学びたい方は、当Breakthrough Speakingの基礎講座(ウエビナー)まで)

外国人を含む社内のコミュニケーションを円滑にするコツ

■円滑な異文化間コミュニケーションのノウハウ記事5選

日本では、非言語的なコミュニケーション(ジェスチャー・顔の表情など)に依存する場面が多いのに、実は、多くの人がこのことを認識しないままでいる。これも当たり前すぎて、普段あまり意識することがないことの一つだ。非言語的であるが故に、これを言語化するのはかなり難しい作業だと言える。ぜひ、次の5つの記事を参考にされたい。

①誤解を避け外国人と円滑に話すためのコツ

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非言語コミュニケーションには多くの利点があると同時に、それが効果的に使われないと多くの誤解を生む温床にもなる。言語と非言語コミュニケーションの違いを理解し、うまく組み合わせることで、よりスムースな異文化間コミュニケーションが取れるようになる

②コミュニケーションギャップを解消するための詳細ステップを解説

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文化の違いを認識し、それを深く理解し、状況に応じて臨機応変に対応することで、異文化間における誤解が避けられる。まずはどんな違いがあるのかを学習しよう。

③日本人特有の「言わぬが花」

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言うべきか、言わざるべきかの選択は日米のコミュニケーション上では違いがある。日本は「言わない」という選択をし、アメリカでは「すべて言う」という選択をする。その文化的な違いを理解した上で対策を考え、意思疎通を図ることで誤解なくスムースな相互理解が得られることだろう

医療関係者男女二人が相談

④沈黙が誤解を生む温床に?!

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沈黙に対する価値の重さは日米比較すると、日本の方がはるかに大きい。その違いからくる誤解がある。アメリカ人からの質問に日本人が沈黙してしまうと侮辱ととられてしまう。何かしら言葉に出して、十分に説明する努力が必要だ。

沈黙:言ってはいけないのしぐさ

⑤あなたのちょっとした顔の表情にも意識を向けよう!

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日米の顔のしぐさ・表情による表現方法の差は大きく、お互いの理解の妨げになることがある。だから、お互いの文化の違いをよく理解して、リハーサルを十分にしてから、スピーチ・プレゼンをすることで誤解を避け、あなたの真意が相手に伝わるように努めたい。

笑顔の女性と考え悩む女性

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